文化・ライフ

 韓国、北朝鮮問題のコメンテーターとして馴染み深い、辺真一さんをお迎えしました。辺さんとは古くからの友人ですが、なぜジャーナリストという職業を選んだのか、どんな道を歩んできたのかは聞いたことがありませんでした。いつもは取材する立場の辺さんのお話から、新たな一面を発見することができました。

辺 真一

辺 真一(ぴょん・じんいる)
1947年東京都生まれ。明治学院大学卒業後、新聞記者を経てフリージャーナリスト。82年に有料会員向けの朝鮮半島問題専門誌「コリア・レポート」を創刊。86年からはテレビ、ラジオで評論活動を始める。海上保安庁政策アドバイザーなども務める。

正義感の強かった幼少時代を過ごした辺真一氏

佐藤 どのような幼少時代を過ごされたのでしょうか。

 私は東京の荒川区で生まれました。昔は韓国と北朝鮮に分かれておらず、みんな東京都立第一朝鮮学校に通っていました。先生のうち半分は日本人教諭でしたし、通信簿も日本の公立学校と同じものでした。しかし、私が小学4年生の時に朝鮮人学校は朝鮮人が経営するという制度が導入され、大きな変化を感じました。

 当時は、「きつい、汚い、危険な」日雇いの仕事をする両親を見て育ったので、将来の夢などありませんでした。そんなある日、国鉄スワローズのエースだった大投手、金田正一さんが学校を訪問する機会がありました。バットなどを学校に贈っていただき、「夢を持って頑張れ」と励まされたのです。私は圧倒され、「金田さんのように世間から評価される人になりたい」と思うようになりました。

佐藤 偉大な人物から影響を受け、その後ジャーナリストの道を選択した理由は?

 幼い頃に見た、月光仮面や明智小五郎といった正義が悪を懲らしめる映画の影響で、正義感が養われたことが大きいと思います。

 今は北朝鮮が軍事独裁政権で言論弾圧をしていますが、ちょうど私が大学を卒業する1970〜71年にかけては韓国が軍事独裁政権でした。私は正義感に駆られ、その体制を倒したいと思っていましたが、現地で活動することは難しいので、日本で韓国国民の声を伝えようとジャーナリストになる決意をしたのです。

佐藤 随分、思い切った選択をされましたね。

 実は、学生時代は演劇をやっていて演出家を志望していました。後輩には俳優の奥田瑛二さんがいて、私が演技指導したんですよ。ところが、彼は立派な俳優になり、指導した私はしがないジャーナリスト。どこで運命が分かれるか分からないものですね(笑)。

「誤報事件」が軌道に乗るきっかけとなった辺真一氏

対談の様子佐藤 演劇の道を志していたとは意外です。大学卒業後は、新聞記者を経て、有料会員情報誌「コリアレポート」を立ち上げられました。どんな苦労がありましたか。

 当初は有料会員情報誌がマイナーで、経営はうまく行きませんでした。青森で焼肉店を経営している両親からも、「跡を継げ」と言われて諦めようと思ったのが86年でした。ちょうどその時、「北朝鮮でクーデターが起き、金日成が射殺された」という第1報が入ったのです。そこで、あるテレビ局が私に見解を聞いてきました。私も証拠となる情報を持ち合わせていませんでしたが、今までの経験から分析すれば誤報と考え、解説しました。2日後に金日成の生存が分かり、言葉は悪いですが、予想が当たりました。87年には大韓航空機爆破事件、88年にソウルオリンピックと、これ以降は韓国、北朝鮮情報のニーズが増え、ここまで仕事を続けられています。

佐藤 劇的な展開ですね。

 奇遇にも、朝鮮半島で不幸な事件が相次ぎ、世界の注目が集まったことにより私は幸運にも仕事に恵まれました。すべて偶然です。

佐藤 でも、この世に偶然はなく、すべては必然の成り行きと言われます。辺さんの苦労が報われたのでしょう。

後編に続く

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