政治・経済

 「脱原発」「役員退陣」を掲げ橋下徹・大阪市長が、関西電力の株主総会に乗り込んだ。原発稼働ゼロ、3期連続赤字の中で節電の夏を迎えた同社。筆頭株主として「全株売却する」とまで迫った橋下氏。そこには、“背水の陣”で向かわなければならない統一地方選の事情がある。

橋下市長が総会で関電経営陣を追求

 「経営陣は失格だ。即刻、退陣願いたい。トップは将来を見通すもの。原発はいつ動くのか。廃棄物の最終処分地はどこか。民間会社が原発を運転するのは無理なことで、関電に明確な将来ビジョンはあるのか」

 橋下市長は、筆頭株主である大阪市の代表として神戸市中央区のワールド記念ホールで6月26日に開かれた関電の株主総会に2年ぶりに出席、マイクを片手に壇上の役員に迫った。

橋下徹

関電を痛烈批判した橋下徹・大阪市長

 議長役の森詳介会長は、持ち時間3分を条件に一般質問を受け付けたが、質問は延々10分近く続いた。森議長の「手短にお願いします」の声が何度も会場に響く。それでも演説調の〝橋下節〟は止まらない。

 八木誠社長は、「収支の安定化には全力で努めてきた。大飯、高浜原発の再稼働が遅れこの夏も厳しいが、他の電力会社から電気を購入するなど取り組んでいる。昨年春は料金値上げをしたが3期連続の赤字。責任を実感している」「小売自由化の時代を迎え、総合エネルギー会社として競争力のある会社に育てたい」と答えた。

 橋下市長らの出席を考慮して丁寧に議事進行したこともあるが、夏場の電力需給逼迫、3期連続赤字、遅れる原発の再稼働など緊張したテーマを抱え、総会は午前10時から4時間を超える長丁場となった。安倍政権の原発再稼働方針を受けて、関電側は「安全性に立った再稼働推進」を強調した。

森詳介

株主総会で議長を務めた森詳介・関電会長

 原発がすべて止まっている中で、電力各社が一番悩んでいるのが原料高による赤字経営だ。関電の場合も例外ではなく、2012年3月期と13年3月期の連結ベースでの最終赤字は2400億円を超えた。

 13年春には家庭向け9・75%、企業向けでは17・26%の電気料金値上げに踏み切ったが、円安と原料高によって14年3月期にも974億円の赤字を計上した。原発の再稼働ができない場合、15年3月期も赤字が懸念される。こうした状態が続くことで、債務超過の危険性を危惧する声も出ている。

 福井・大飯3、4号機と高浜3、4号機の再稼働の時期については、今なお不透明だ。早ければ今夏にも再稼働とされてきた大飯3、4号機については、5月に福井地裁で「再稼働は認めない」との判決が出た。関電は、名古屋高裁金沢支部で控訴手続きを進めている。

 原発比率が高い同社の場合、再稼働が難しいとなれば電気料金の再値上げを検討することになるが、どのタイミングで再値上げに踏み切るかが注目されるところ。こうした状況の中、いつまでも再稼働にこだわり続けて赤字を垂れ流す関電の姿勢を、橋下市長が痛烈に批判した格好だ。

関電の大株主として渡り合う橋下市長

 さて、関電が現実問題として懸念しているのは、橋下市長が言及した同社の株式売却についてである。

 大阪市が所有する関西電力の株式は、発行株式数(17億8405万株)の約9・37%、8374万株に上る。総会で橋下市長は、経営悪化による役員の責任を追及した上で退陣を要求しており、もしできなければ「大阪市が株主である必要はない。モノいう株主がチェックしなければだめだ。外資系ファンドなどに株式を全部売却する」と厳しく迫った。

 市が所有する関電株のうち7月10日の終値である1株988円で換算すると、時価は約827億円にもなる。

 もしこれが一挙に放出されることになれば、市場に混乱を起こし「大阪市の対応も波紋を呼ぶだろう」と、ある経済評論家は指摘する。

 大阪市の条例では、1億円以上の株式を売却するには市議会の承認が必要とされているため「市場への影響が大き過ぎて全株売却は難しいのでは」と話す幹部もいる。

 しかし、一部では、市長は既に売却の指示を出したとも言われている。

 橋下氏の言動の背景には、さまざまな状況への考慮が垣間見える。

 13年夏以来の維新の会の退潮ムード、同年秋の大阪都構想を強いられた政令都市・堺市長選挙の敗北、橋下市長のツルの一声で進められた不祥事続きの公募区長や公募校長制度の見直し、そして大阪都構想を作成する特別区設置協議会(法定協議会)のごたごたなどだ。

 これらの失点に対して、挽回の切り札を模索する橋下市長。最大の焦点は、維新の会が単独過半数を目指す来年春の統一地方選だ。

 関電の大株主として「脱原発」をめぐって今後どう渡り合うのか。その動きを大阪市民はどう判断するか、今後の動きが注目される。

(文=ジャーナリスト/宮城健一)

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