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小さなソロバンよりも大きなソロバンをはじく--中内 㓛・ダイエー会長インタビュー

ダイエー会長 中内 㓛氏

 流通業から初の経団連副会長に就任し、福岡にはツインドームの建設を予定するなど、1991年当時の中内氏は日本で最も多忙を極めた経済人のひとりだった。当時68歳の中内氏に弊誌主幹の佐藤が迫った。(『経済界』1991.7.23号)

 中内氏の行動を30年間じっとみていると、単なる商売人ではないのである。その本質はサムライなのであった。だから、武家の商法の一面もある。しかし、長く見ていると、いつしかこの人は、その志をものにしてしまう。

 小さなソロバンをはじくのはヘタクソだが、大きなソロバンをはじくのはうまい。天性のものとしかいいようがない。

 対談が終わって、「あなたは死ぬ瞬間まで、〝生涯現役〟で働くしか、しょうがないですね」と水を向けると「そうかもね」とニッコリ笑った。

「大衆は常に正しい」が中内㓛の哲学

-- あなたは普通の経営者と違って最初に志ありきなんです。それに向かって突っ込んでいくからちょっと誤解される。

中内 ええ。誤解されやすいです。しかし時間がたてば分かっていただけます。「流通革命」という話も、あの当時は何をやるんだと言われました。今では世の中の人たちも分かってくれていますし、米国から言われて日本側も流通に問題があると気付きました。われわれが始めて30年かかってやっと流通に問題があると認められました。またメーカーによる小売店の系列化も問題でしょう。

中内 㓛

中内 㓛(なかうち・いさお)
(1919〜2005)大阪府出身。ダイエーを創業し、社長、会長、グループCEOを務める。日本のスーパーマーケット黎明期から立ち上げ、業界の発展に寄与した。

-- 常に生活者、消費者の立場にたって価格を決める哲学がやっと浸透してきましたね。

中内 松下幸之助さんが「松下が値段を決めるのではなく、市場でお客さんが値段を決めるんだ」と言われたように、消費者自身が価格を決めるというところまで30年かかりました。

-- フィリピンの山の中で終戦を迎え裸一貫で帰ってきて、よくここまで会社を育てられましたね。

中内 「フォア・ザ・カスタマー」、お客さんのためにということです。日本の一人ひとりの消費者が豊かさを実感できるまでやろうと思っています。フィリピンで6カ月間、米一粒ない極限の生活をしてきましたから。

-- ダイエーがこれだけの企業集団になったのは日本の生活者が支持したからですね。

中内 私が会社をつくったのは昭和32年で、株式会社「主婦の店本店大阪」といっていました。ところが上場する時、この名前では上場できないと言われて、以前使っていた大栄薬局をカタカナに直したんです。神戸ではまだ主婦の店と言っていただけるお客さんもいますよ。

-- 大衆についてはどのように考えておいでですか。

中内 大衆は常に正しいです。日本で大衆というと安物と取られがちですが、ベストセラーであり、いちばんいいということです。

ダイエーは総合生活提案企業

-- 日本の大衆はレベルが高いと言うことですね。

中内 だから、われわれは生活消費大衆に対してどのような提案をするかだけであって、私は発信するのは大嫌いです。生活者から受信をしてそれを商品化するだけです。われわれがお客さんより上にあって発信するとか、東京から地方に発信するとかはちょっとおかしいのではないかと思います。

-- ダイエーは、受信はするけど発信はしないと。

中内 だから経団連でも広報でなく、広聴だといっています。よく聞こうということです。平岩(外四氏・当時の経団連会長)さんにお願いしてフリートーキングの会を開いて会社に対して何を要望するかを訊きました。すると日本の子どもが減ってきたのは会社が残業させるからだ、という声が上がりました。そこで、われわれも「金曜日は花とロウソクとワインの日」といって、金曜日は花を買って真っすぐに家に帰って奥さんとワインでも飲んでください、というキャンペーンをやっています。

-- これからのダイエー企業集団はどういう方向に行くのでしょうか。

中内 大きく4つに分けまして、まず小売り部門があります。次にサービス部門、ホテルやレストランをやっていますから。それからデベロッパー部門でショッピングセンターをつくっていこうとしています。最後はファイナンスです。これら4つの部門をしっかりやっていこうと考えています。

-- 企業集団ダイエーをひと言でいうと何ですか。

中内 総合生活提案企業でしょう。生活に密着したことをやろうとしていますから。「主婦の店本店大阪」がそのルーツです

-- 最後にひとつ、球団を持ってよかったことは。

中内 私の妻が野球に興味を持って勝ったとか負けたとか、門田がホームラン打ったとか(笑)、共通の話題ができたことです。

-- 生涯現役でやってもらいたいと思いますが、あと10年はやってください。

中内 (ホークスが)優勝するまで頑張ろうと思います(笑)。

(構成/本誌・古賀寛明)

 

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