テクノロジー

鉄筋コンクリート(RC)住宅の設計、施工を専業としている数少ない企業、JPホーム。来年創業10年を迎える同社は苦労の多かった草創期を経て、その道のパイオニアとしての地位を確立すべく気を吐いている。RC住宅の魅力と今後の展望について、JPホーム社長、髙松孝年氏に聞いた。

髙松孝年・JPホーム社長

髙松孝年・JPホーム社長

 阪神大震災で確信した「建物を供給する意義」

 JPホームは、グループ会社である髙松建設の住宅事業部が母体となり、2005年に独立した。RC住宅の最大の強みは耐久性にある。これには創業につながるルーツがある。1995年の阪神・淡路大震災の際に、髙松建設が施工した建物のほとんどに被害がなかった。同社では震災以前から耐震の研究を重ね、建築物は建築基準法を上回る独自の基準を設けていた。

 「震災に対する強さは、『上質な建物を供給したい』という髙松建設のポリシーが具現化されたもの。それまでは鉄筋コンクリートによる戸建住宅は多く供給されてこなかったのですが、より強く、長持ちする建物が必要とされる時代が来るのではないかと、早くから当社は着眼し、事業化に至りました」

 コンクリート特有の気密性の高さは遮蔽と耐火につながる。また6面体の構造と、現場で場所打ちされることから強風などにも強さを見せるという。

 「日本は世界でも有数の災害が多い国です。今後も大災害が起こり得ると考えられます。人命と財産を守り、豊かな人生を過ごしてもらうため『シェルター』の役割を果たすに見合う、RC住宅に特化し続けたいと思っています」

 同社の構造体の耐久年数は、日本建築学会が定める鉄筋コンクリート工事標準仕様書に基づいて算出すると100年以上になり、50年保証を用意する。また居室内を自由に構成、変更でき、住まいの永続性と自在性を両立できる。

 「この構造なら、ローンが終わったころには家の価値がなくなり、子の世代が建て替えるということはなく、親から子へ、子からその子へと受け継いでいけます。リフォームが必要になっても、建て直すコストほどにはなりません。その分の労力を、ほかに利用する余力ができ、日本経済や社会に貢献できると考えています」

 髙松建設から独立後も、このポリシーを守るべく奮闘する同社だが、ここに至るまでは決して平坦な道のりではなかった。集まったスタッフは戸建住宅を専門に携わった者が少なく、協力業者も木造や鉄骨造の経験者ばかりで、鉄筋コンクリート造は未経験者があった。また、コンクリートは砕石場や施工時の天候によって仕上がりが左右される場合も多かった。この難関を突破できずに撤退した業者も多いという。同社は創業以来、この苦難に耐え、一途に取り組んだ。縦割りの組織を改革して情報共有を図った。また、技術革新と経営の合理化を進めた。

 「われわれに似た企業は極めて少ない。社内ではスタッフに対して『われわれは、携わる仕事においての草分けであり、われわれが問題を発見して解決し、道を切り開いていかなければならない』と常々言っています」

 デザイン性が優れることから富裕層向けのブランディングを行い、先行投資も行った。ようやく軌道に乗りかけたが、リーマンショックがあり赤字化。一時は営業エリアも絞り込み、大型高級物件に特化した形で乗り切る。12年に髙松氏が社長に就任した後は普及型の物件の設計、施工に乗り出し状況は好転、昨年度は受注ベースで目標の120%を達成した。

 「安定飛行に入った今後はさらなる次のステップを見据えて市場を拡大させたいと思います。これは規模を追うという目的ではなく、より多くを供給することで値段を下げ、より多くの方の手が届くような商品展開をできるようにするためです」

 この好調は建設業全体の良い流れも影響している。しかし今後も良い流れが続くとは限らないと髙松氏は気を引き締める。

 「アベノミクスや五輪招致というような他力本願的な、神風が吹き続けるとは思いません。今は基盤固めを行い、次のステージに向けた準備をすべき時期だと思っています」

ページ:

1

2

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

電力業界のイノベーション

[連載] エネルギーフォーカス

10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

[連載] エネルギーフォーカス

日本は再生エネルギーで世界トップとなる決断を

テクノロジー潮流

一覧へ

アジア大会とノーベル賞

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

水素社会へのステップ

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

 昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

201712EVEREDIA_CATCH

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年1月号
[特集]
敗者復活戦

  • ・負けから何を学び、糧にしていくか
  • ・存亡の危機を乗り越えた「熱海」の逆転ストーリー
  • ・あの名門ブランドが、帰って来た(アイワ、ビクター)
  • ・「なるほど家電」を牽引する大手家電メーカーの早期退職組(アイリスオーヤマ)
  • ・関ケ原で敗れた立花宗茂はなぜ、返り咲くことができたのか
  • ・市江正彦(スカイマーク社長)
  • ・加藤智治(ゼビオ社長)

[Special Interview]

 三毛兼承(三菱東京UFJ銀行頭取)

 「旧来の商業銀行は構造不況業種 大変革で信頼と強さを持ち続ける」

[NEWS REPORT]

◆カードローン規制で稼ぎ頭を失う地方銀行の明日

◆12年ぶりのアイボ復活 名実ともにソニー再生は成るか

◆終身権力者も視野に入った習近平が恐れるクーデター

[特集]クルマが変わる、社会を変える

・これから始まる全自動運転 OSを制するのは誰だ!?

・車載電池の性能が左右するEV時代の覇権戦争

・冷える鉄鋼、潤う化学 クルマが変える産業構造

・トヨタ・日産・ホンダ・マツダ 主要4社「わが社の戦略」

ページ上部へ戻る