マネジメント

30〜40歳代の管理職クラスを中心に、転職支援サービスを手掛けているクライス&カンパニー。コンサルタントにとって魅力的な人材を魅力ある企業に紹介することがモットーで、候補者が最も力を発揮できる企業とのマッチングをサポートしている。

丸山貴宏・クライス&カンパニー社長

丸山貴宏・クライス&カンパニー社長

企業のブランド力を上回る採用力

 人材ビジネスは同業他社との競合が非常に激しく、サービスの差別化が難しいとされる。1993年に丸山貴宏社長が設立したクライス&カンパニー(K&C)はそんな厳しい状況下で、着実に業績を伸ばしてきた。

 メーンのサービスは、大手の参入が少ない30〜40歳代の幹部人材の転職支援。この世代は配偶者の意向や子どもの学校、両親の介護といった問題に直面しており、自分だけの意思で転職を決めることが難しい。手間の掛かる領域だからこそ、時間をかけた丁寧なかかわりが実を結んだと言える。

 会社を成長させるには、まず従業員の能力アップが欠かせない。そのためK&Cでは、従業員にキャリアコンサルタント資格「GCDF」の取得を義務付けている。120時間のトレーニングプログラム受講を通じて、幅広い知識とスキルの習得を図る。また、毎月1回、社員向けに終日研修を実施。時には「監査」と称し、丸山社長がコンサルタントの面談に同席してフィードバックを行い、知識やノウハウをブラッシュアップしている。

 丸山社長は滋賀大学卒業後の86年、リクルートに入社。在籍中の7年間は、一貫して中途社員などの採用を担当していた。バブル崩壊で採用計画が大幅に縮小した矢先、同社を退職。独立した先輩からの誘いを受け、システムキッチンの販売会社に転職した。そこは結局水が合わずに、半年程度で退職したという。リクルート時代に在職中、世話になっていた先輩社員から出資を受け、自分が理想とする事業を行うために起業を決めた。

 「リクルートにいたこともあって、いつかは一国一城の主になりたいとぼんやりとは考えていました。自分の経験が生かせる人材事業での独立を希望していたため、転職でうまくいかなかった経験は掛け替えのないものになりましたね」

 独立後、有料職業紹介事業の許認可が下りるまで、前職の販売代理店としてシステムキッチンや家具の営業に奔走した。その後も昼は施工現場に立ち会い、夜にホテルで候補者の面談を行うなど、多忙な毎日を送った。現場からホテルに直行して候補者と落ち合った際、ふと足元を見ると靴が真っ白に汚れていたことがあったという。設立21年目を迎えた現在では、人材とシステムキッチン双方のビジネスを順調に拡大させてきた。昨年9月期における売上高は前年比10%増の4億8千億円に達している。

 丸山社長はK&Cの業績拡大の原動力を「当社にとって魅力的な人材を魅力的な企業に紹介してきたこと」だと説明する。つまり一緒に働きたいと思える人たちと働くことで、エネルギーが生まれるという発想だ。コンサルタントには業界担当を設けず、本人が面白いと感じた企業を手掛けるように勧めている。

 転職希望者は名の知れた企業を志望し、報酬を重視する傾向がある。しかし同社では、有名企業に内定が決まった候補者に中小企業への入社を提案するケースがある。「企業は自社のブランド力を超える採用はできない」と考えるのが丸山社長の持論だ。一方で、リクルーターが優秀で熱意がある場合は、「企業のブランド力を上回る採用力」を発揮することができるという。

 しかし、中小企業には専任のリクルーターを置いているケースはほとんどない。そこで必要とされるのが、K&Cのサポート力だ。コンサルタントが企業や候補者を本人以上に好きになり、情熱を込めてマッチングを行う。時々「なぜこんな企業(候補者)を紹介したのか」といった質問を受けることもあるが、コンサルタントが企業や候補者の気付かない魅力を伝えると納得するという。「企業力を上回る採用力」で事業拡大に成功したリクルートにいたからこそ、体得できた採用戦略の鉄則だ。

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