文化・ライフ

筆者プロフィール

(よねやま・きみひろ)作家、医師(医学博士)、神経内科医。聖マリアンナ大学医学部卒業。1998年2月に同大学第2内科助教授を退職し、著作活動を開始。東京都あきる野市にある米山医院で診察を続ける一方、これまでに260冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修も行っている。NPO日本サプリメント評議会代表理事、NPO日本プレインヘルス協会理事。

 

ジェネリックという言葉の認知は進めど……

 医者が使う医薬品は、製造元が保有していた特許が切れた段階で、他の医薬品メーカーでも作れるようになる。こうしてできる医薬品が「ジェネリック医薬品」(以下、ジェネリック)だ。この種の医薬品は以前から多く存在していたが、「ジェネリック」の呼称が使われ始めたのは比較的最近のこと。この種の製品を使うときに「一般名(generic name)」が処方箋に書かれていたことから、そう呼ばれるようになった。

 ジェネリックの利点は、もちろん価格(薬価)の安さだ。通常、1つの新薬を作るには10年以上の時がかかり、開発の投資額も数百億円レベルに達する。ゆえに、新薬の薬価はどうしても高くなる。対するジェネリックの場合、既にある技術・情報をベースに医薬品を製造するだけで済む。

 なので、薬価を低く抑えることができ、例えば、大元の薬(先発品)の薬価が1粒200円だとすれば、ジェネリック版の薬価は100円以下になる。だからこそ、医療費削減を迫られる日本政府は、ジェネリックの普及・使用率向上にやっきになって取り組んでいるのである。

 その努力やテレビCMの効果もあってか、ジェネリックの認知度は確実に高まっている。だが、肝心の使用率はそれほど上がっていない。例えば、ジェネリックの数量シェアは2011(平成23)年9月時点で22・8%。この普及率は、欧米の半分にも満たない低さなのである。

ジェネリックに対する不信感

 ジェネリックの普及がなかなか進まない理由はいくつかある。中でも大きな理由は、医者や薬剤師がジェネリックに全幅の信頼を置いていないことだ。

 今日では、先発薬と同等の薬効がなければ、ジェネリックの認可が下りない。そのため、信頼性に対する不安感はかなり払拭されたが、先発品とジェネリックの中身が本当にすべて同じかと言われると、そうとばかりは言い切れない。と言うのも、ジェネリックに使用される添加剤は、必ずしも先発品と同じではないからだ。

 またその違いが薬の効き方の微妙な差となって現れる場合もある。となれば、添加剤についても先発品と全く同じジェネリックを使いたいところとなるが、それがどれかの情報は今のところ提供されていない。

 また、ジェネリックについては、原料の産地や製造過程に関する情報もなければ、その明記を義務付ける規制もない。ジェネリックに対する信頼感を増したければ、この辺りの情報不足は改善されて然るべきだろう。

「徹底さ」に欠ける国の施策

 既に保険薬局(医者の処方箋を持って行くと薬が出せる薬局)に対しては、「後発医薬品調剤体制加算」の制度が適用されており、ジェネリックの処方が増えれば増えるほど薬局が儲かる仕組みが出来上がっている。また、医療サイドでも、ジェネリックの採用品目数の割合が30%以上の場合は、診療報酬上の評価(後発医薬品使用体制加算)が行われるようになった。

 とはいえ海外では、「ジェネリックが存在する場合は、先発品からジェネリックに自動的に切り替える」という徹底した規制をかけている。それと比すれば、日本のやり方はまだ手ぬるいと言えるのかもしれない。

医者がジェネリックを使わない本当の理由

 先に「医者がジェネリックに全幅の信頼を置いていない」と述べたが、医者がジェネリックの使用を避ける理由はほかにもある。

 例えば、現在、医薬品メーカー各社は医者に対する接待を全面的に禁じており、結果、MR(製薬会社の営業マン)と医者との蜜月関係も過去の話と化している。それでも昔からの人間関係を重視し、ジェネリックに切り替えることなく、先発品を使い続ける医者もいる。またそれが「うちはいい薬を使っている」といった意識にもつながっているようだ。

 加えて言えば、薬局が院外に置かれている開業医の場合、ジェネリックを使おうが、先発品を使おうが、得られるメリットに一切の変化はない。となれば、使い慣れた薬を使おうとするのが医者の性質であり、よほどのことがない限り、ジェネリックに手を出そうとはしないのである。

 先発品からジェネリックへの切り替えで、確かに医療費は下がる。ただし、それを加速させるには、欧米流の徹底した規制が必要だろうし、ジェネリック採用時の医者たちの報酬を一層上げる工夫を凝らすべきだろう。さらに、本気で薬代を下げたいのなら、「無駄な投薬」を阻止するための施策も打つべきだ。とりわけ、高齢者に対し10種類もの薬を処方しているような現実は即刻打破すべきである。

 ジェネリックは医療費の抑制に効果的だが、それはあくまでも一手段にすぎないのだ。

 

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