政治・経済

 動き出した芦原義重・関西経済連合会。日本経済は「昭和40年不況」を克服し、景況は上向き。大阪万博(EXPO‘70)も間近に迫り、関西のみならず、日本列島全体がいわゆる「万博景気」への期待感で沸き立っていた。

 そして、昭和45年3月15日、世紀の祭典が幕を開けた。183日間にわたる会期の冒頭に関西電力が会場に送り込んだ「原子の灯」は、豪華な開幕セレモニーを盛り上げた。

 この日、筆者と対談した万博会長の石坂泰三は、関係者の意欲を高く評価し、「細工は流々、仕上げをご覧じろ、というところだな」と終始上機嫌。芦原の資質についても、「立派な指導者」と太鼓判を押していた。

 そうした御大のお墨付きに加えて、時の政界指導者、岸信介、田中角栄、佐藤栄作らの側近筋とも太いパイプを持っていた芦原は、その後も関西財界と中央とのつながりをより強固にしていった。

 芦原は四国生まれ。高松中学-六高-京大(工学部電気工学科/のちに工学博士)の学歴で、就職希望地は東京だったらしい。ただし、郷里の父親の勧めに従い、親戚筋に当たる元慶応義塾大学総長で、外務次官経験者でもある林毅陸に相談を持ち掛けたところ、即座に手渡されたのが、阪急電鉄社長・小林一三への紹介状だった。これが、芦原の言う「小林さんとの運命的な出会い」につながった。

 紹介状を手に阪急電鉄を訪れた芦原は、社長室に通され、小林と対面。小林から、採用の意向を伝えられた。

 「紹介状は読んだ。来年度は新入社員を採りたいと思っていた。即刻、来るように」

 このとき、小林は既に「技術担当の上田専務と井上技師長を呼べ」との指示を秘書に出していた。上田とのやり取りの中で、芦原は上田の温情にも触れている。上田から、「手紙をやるから、仕事を始めるのはそれからでいい」と伝えられたのだ。これは、芦原の結婚式が4月2日に予定されていたことへの配慮だった。

 そして入社2年後の大正15年、芦原は太田垣士郎と出会う。芦原・西宮変電所主任と太田垣・西宮調度課倉庫係主任。大学同窓の2人は太い絆で結ばれていく。そこに、「人の徳を食う」芦原の生涯の起源があったのかもしれない。

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