
数十年は続くであろうエネルギー革命が始まった。化石エネ依存からの脱却の戦いである。
既に欧州では、電力の5割以上を水力を含む再生可能エネで賄う国が6カ国、2割以上が8カ国に達した。さらに昨年になって、中国、米国が大変化を遂げ、絶対量で欧州を抜いて最大の風力、太陽光設備を導入する国になった。世界全体の導入量の伸びは毎年倍々ゲームの激しさだ。日本は昨年からレースに本格参入、第5位に入った。
欧州大陸諸国は「福島事故が自国で起きていたら、国は終わっていた。日本のように長細い形をしていない、海に近くない。観光客がこない国は考えられない」と脱原発に走ったように見える。欧州は2000年以降、値段の高いうちから太陽電池の大量買い付けを始めていた。そのために数%に達した現在、電気料が高くなり、国民や産業界から不満の声が上がっている。ドイツのメルケル首相は「あれも嫌、これも嫌と言っていることは許されない」と国民をたしなめている。高い電気料を払うのも国民だが、そのお金を受け取るのも結局投資した国民である。自分で払って、自分が受け取る。仕掛けをうまく作ることが肝要だ。
一方、事故以来、原発は実質的なゼロ状態が日本で続いている。再生可能エネはまだ日本では蓄積量が少ないため、省エネをしても化石エネ輸入減とはならなかった。このため、国際値段の高騰と円安で、3兆円近くも原発稼働停止による輸入代金増加が生じている。
当初、経団連から「再稼働しないと日本経済がダメになる」と警告が発せられた。しかし3・11以降、3年以上も好景気が続き、失業率は1%以上改善されて4%を切る好調ぶりだ。輸入が多いために輸出産業への応援団の声が大きくなり、自動車、電機、化学など製造業が好調なためだ。輸出がさらに増え、経常収支も黒字になり始めている。
ドイツは現在経済最優等生と言われ、困っているはずの日本も好景気である。30%程度の発電規模は、現在の先進国の経済規模から見るとマイナーなものでしかない。電気料を2〜3割高く払っても、国民が純国産のクリーンエネを買い増そうとする動きがまだ続きそうだ。新エネ技術関連産業が電気・機械工業を元気にしている効果が大きい。
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