[人材争奪戦に勝つ]
マネジメント1つで3Kの評価も変えられる――矢部輝夫(JR東日本テクノハートTESSEIおもてなし創造部顧問)
2014年7月31日

求人数が増えると3Kと評されるような職種から労働力が流出してしまう傾向にある。新幹線の清掃業という、世間でいう「3K」の業種ではあるものの、そこに「生きがい」「誇り」を植え付けることに成功した企業がJR東日本テクノハートTESSEIだ。同社は今、ハーバードビジネススクールに教材として取り上げられ、海外メディアからも注目される存在となった。このような社風はいかにして作られたのか。改革の先導役であった矢部輝夫氏に聞いた。

矢部輝夫(やべ・てるお)
1966年、日本国有鉄道入社。安全対策部課長代理、運輸車両部輸送課長、立川駅長、運輸部長、運輸車両部指令部長などを歴任。2005年鉄道整備(12年にJR東日本テクノハートTESSEIに社名変更)取締役経営企画部長に就任。11年に専務取締役。13年に退任後嘱託としておもてなし創造部部長、14年に同部顧問。著書に『奇跡の職場 新幹線清掃チームの“働く誇り”』(あさ出版)
職場を「新幹線劇場」に
同社は1952年、鉄道整備株式会社の社名で設立。JR東日本に11ある清掃関連子会社の1つで、新幹線車両および東京駅などの新幹線駅構内を請け負う。中でも新幹線車両内清掃は時間勝負の仕事だ。新幹線の折り返し停車時間は12分、乗客の乗降時間を差し引いた7分間で1人当たり100席を担当する。同社のスタッフが清掃する座席、テーブル数は1日に約12万席ある。年間約5千万席に上るが、クレームは年間5件程度だという。
矢部氏は2005年に同社の取締役経営企画部長に就任した。当時のTESSEIは事故やクレームも多い、グループ内で「評判の悪い」企業だった。従業員のパート率58%。その半数は入社して1年未満と入れ替わりが多く、仕事のノウハウを伝え、サービスの質を保つことも難しかった。この状況を打破するべく、矢部氏は改革に乗り出した。
当時、同社で講じられていた対策は徹底した「管理」だった。ただでさえ人が好まない仕事に携わる現場の従業員を抑圧し、徹底したルールと規律を求める手法を繰り返していた。そこでまず、真の意味で従業員を大切にすることから始めた。
「よく『お客さま満足度を向上させよう』と言いますが、それを生み出すのは現場です。当社では清掃活動を『新幹線劇場』と呼んでいます。これはお客さまが主役で、私たち従業員が脇役となって、一緒にこの場所で素晴らしい思い出を作ろうという意味合いです。お客さまの満足感は従業員に満足感がなければ生み出せません」
好評連載
年収1億円の流儀
一覧へ起業して得られる経験・ノウハウ・人脈は何ものにも代え難い。
[連載]年収1億円の流儀

[連載]年収1億円の流儀
なぜ両親との縁を切り、破天荒ともいうべき人材採用をしたのか。
[連載]年収1億円の流儀
人をうまく使うには、相手の立場に立つことだと16歳の身で悟った。
[連載]年収1億円の流儀
人生の成否はDNAで決まっている。要はDNAの使い方だ。
[年収1億円の流儀]
儲かるからではなく、「楽しいから」やる、と言い切れるか。
銀行交渉術の裏ワザ
一覧へ金利固定化の方法を知る
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)
定期的に銀行と接触を持つ方法
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)
メーン銀行との付き合い方
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)
金利引き上げの口実とその対処法
[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)
融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける
元榮太一郎の企業法務教室
一覧へ社内メールの管理方法
[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)
タカタ事件に学ぶ 不祥事対応
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)
「ブラック企業」という評価の考察
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)
コミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性
[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)
女性の出産と雇用の問題
温故知新
一覧へ[連載] 温故知新
「もっと、利益の上がる業界にしていこう」
[連載] 温故知新
金持ちだけど下品な日本人――小山五郎×長岡實
[連載] 温故知新
忙しい時のほうが、諸事万端うまくいく――五島昇×升田幸三
[連載] 温故知新(第19回)
最大のほめ言葉は、期待をかけられたこと--中條高德
本郷孔洋の税務・会計心得帳
一覧へ税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」
[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)
グループ法人税制の勘どころ
[連載] 税務・会計心得帳(第17回)
自己信託のススメ
[連載] 税務・会計心得帳(第16回)
所得税の節税ポイント
[連載] 税務・会計心得帳(第15回)
固定資産税の取り戻し方
子育てに学ぶ人材育成
一覧へ意欲不足が気になる社員の指導法
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)
人を育てる「言葉」とは?
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)
女性社員を上手に育成するコツ
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)
部下の感情とどうつきあうか
[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)
“将来有望”な社員の育て方
ビジネストレンド新着記事
注目企業
一覧へワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)
昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

新社長登場
一覧へ「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡
創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

イノベーターズ
一覧へ老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治
フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

大学の挑戦
一覧へ専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長
2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

企業eye
一覧へ不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事
ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…
