政治・経済

「地域に雇用を創る」、首都圏から6千人参加いわき市のコットンプロジェクト

 東日本大震災から3年数カ月、被災した農地に有機木綿を栽培する東北のコットンプロジェクトが2014年、4年目の活動を繰り広げている。綿栽培で農地を再生し、地域を活性化しようと始めた事業だが、栽培面積は宮城県で3カ所約3ヘクタール、福島県いわき市で25カ所2.7ヘクタールに広がった。効果は徐々に現れているが、課題も多く、息の長い取り組みが求められる。

 東北の最南部、太平洋に面したいわき市は、大震災による津波と原発事故、その1カ月後に発生した余震で全市が揺さぶられ、地域社会は危機に陥った。苦しむ被災農家を何とか支援しようと、有機農法で綿を栽培する活動「いわきオーガニックコットンプロジェクト」を立ち上げたのがNPO法人の「ザ・ピープル」(吉田恵美子理事長)だ。

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いわきで、コットンのポット苗をつくる作業が進む(女性は吉田恵美子理事長)

 吉田理事長に呼応して同市遠野町の耕作放棄地で有機綿を栽培するのが折笠農園だ。14年4月中旬、東北各地の大学生40人が同農園を訪問し土づくりに加わった。トラック10台分のモミ2トンを、畑にすき込む作業である。

 1週間後の週末には首都圏からボランティア17人が1泊2日で同農園を訪れ、ポットに播いた綿の種をハウスで育苗する「ポット播き」作業に加わった。種まき作業は5月中旬まで続き、6月中旬の追肥・草取り、7月の摘芯、9月の支柱立てを経て9月下旬〜10月の収穫というのが綿栽培の作業工程だ。

 12年4月から延べ1・5ヘクタールの農地で始まった同市の綿栽培の輪は農家や農業資材会社、学校、NPOなど25カ所に広がり、14年度には延べ2.7ヘクタールに増えた。12年度の収穫量300キロが、13年度には860キロに増えた。

 収穫した綿花は綿繰り機にかけ、綿を紡績工場に送り、Tシャツやタオルなどオリジナル商品を開発している。「新商品の開発を通じて地域に雇用の場を創出し、ひいては新産業づくりに結び付ける」のが、吉田理事長らの目標だ。

 このプロジェクトに参加したボランティア、援農支援者は2年間で6千人を超す。絶え間なく続く交流人口の拡大が被災地を元気付ける効果も予想以上に大きいようだ。

農家・企業90団体で東北のコットンプロジェクトの推進、事業化へ望まれる創意

 被災地での綿花栽培は宮城県でも行われている。津波で被災した田畑に塩害に強い綿花を有機農法で栽培することで農地を再生する試みだ。11年夏に仙台市若林区舞浜の農地1・2ヘクタールで試験栽培を行った後、12年度から本格栽培に踏み切った。4年目の14年度は仙台・舞浜、東松島市、名取市の3カ所で3・3ヘクタールの栽培に乗り出した。

 いわき市と同様、宮城でも綿花栽培に多くのボランティアが参加している。事務局(クルック社)幹部によると、「収穫時に500人、年間では2千人前後のボランティアが駆け付け協力する」という。

 宮城では被災農地の復旧だけでなく、(1)収穫した綿は支援企業が全量買い取る(2)支援企業は綿から糸を紡ぎ衣料製品に仕上げて販売する(3)最終的には綿の産地化による新産業、雇用創出を目指す――なども目標に掲げる。これら一連の取り組みを農業団体やアパレル企業、商社などが協力し、東北コットンプロジェクトと称して活動している。

 プロジェクトは11年7月、農家や企業など19団体で発足したが、参加企業が年々増えて4年目の現在は90団体に拡大した。商社が綿の種子を確保し、紡績会社が糸を紡ぎ、そして無印良品やユナイテッドアローズ、リージャパンなどがTシャツやハンカチ、ニット製品、デニム、タオルと多様な商品を生み出し、各社の販路で売っている。

 問題は今なお課題が多く、プロジェクトを事業として定着できるか否かという点だ。栽培面積1つをとっても年により変動し、収量と品質にバラつきがあるのが難点である。

 仙台・荒浜地区を担当する農業生産法人「荒浜アグリパートナーズ」の渡辺静男社長は、「12年度は露地で7.6ヘクタール栽培したが、13年度は2.2ヘクタールに減り、14年度はハウスで0.3ヘクタールの栽培を計画している」と話す。収量は12年度の400キロが13年度はわずか30キロだった。東松島市で14年度に2ヘクタールの露地栽培を予定するイーストファーム宮城でも、収量は40キロの見込みで、アパレル企業の期待量を下回る。

 背景にあるのが綿花栽培の難しさだ。水はけのよい土壌、発芽に必要な気温20度の確保、人手のかかる草取りや害虫駆除――「栽培環境とコスト管理に苦労する」と、渡辺社長は打ち明ける。

 各界各層の支援を受けて進められたプロジェクトだが、大震災から既に4年目、そろそろ支援・復興の局面が終わる。新産業に育て自立させる新たな局面を迎えている。

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