マネジメント

宮坂 学

宮坂 学(みやさか・まなぶ)
1967年山口県生まれ。同志社大学を卒業後、出版社勤務を経て、97年、創業2年目のヤフーに入社。メディア事業部長、執行役員コンシューマ事業統括本部長を経て、12年より現職。

日本は今、少子高齢化や労働者不足をはじめ、さまざまな「社会課題」を抱えている。政府も本腰を入れつつあるが、課題の解決に向けて動き出した企業もある。その1つが、インターネットの雄、ヤフーである。同社の宮坂学社長に、アサヒビール、インテリジェンス、電通北海道、日本郵便と共に北海道美瑛町で実施している異業種コラボレーション研修について聞いた。

 

ヤフーが人材育成で異業種交流を重視する理由

 

-- 今回の研修に対してどのようにお考えですか。

宮坂 今回の5社参加のダイバーシティ研修はいい研修になると思っています。普通、研修といえば企業内で考えますよね。ところが、私も何度か審査員をしているソフトバンクアカデミアが典型的なんですが、社外の人が入ってくるとネットワークも広がりますし、研修も引き締まります。社内だけで行うよりも効果は高いんですね。

 また、出される課題があまりに自分の業務に近いと業務知識の差がそのまま出てしまうじゃないですか。だから今回の美瑛の社会課題のような大きなテーマのほうがいいですね。全員同じ前提条件で始められますし、「努力」と「地頭」と「発想力」の差が重要になるからです。

-- 美瑛町に研修センターをつくっていますが、これも地域の課題解決への取り組みのひとつですか。

宮坂 一義的には、研修センターとしてきちんと稼働させるのが大前提だと思っています。

 ヤフーの社員と株主にとって意義のあるパフォーマンスが出せないと続けられなくなりますから。これを大前提として、研修センターに社員がたくさん来て、学んで、社員の能力が上がって、結果として業績につながる。

 その前提があって初めて拠点と空港を行ったり来たりするだけでなく、地元の人たちにとって良いインターネットの環境は何か、というようなことまで考えられればいいなと思っているんですけどね。

 

宮坂 学・ヤフー社長が欲しい人材とは?

 

-- 宮坂社長が欲しい人材は。

宮坂 「いい人」という言い方しかできないんですけど、「あいつ、いい奴だな」という人と仕事したいですよね。チームで仕事をするので、どんなに優秀でも嫌な人とは仕事できませんから。その上でスキルを求めます。だからスキルはあるけど嫌な奴ならいらないということですよ。

-- かつては、世の中の風潮がスキル重視だった気がしますが。

宮坂 う〜ん、数値だけで評価していた頃はそうだったかもしれませんけど、数値は外部要因で変わってしまいますからね。ただチームに貢献する姿勢とか、誠実な態度に、景気は関係ないですし、いい人はずっといい人ですから。

 ヤフーでは、会社の定めるバリューをどれだけ周りの人に発揮できたか、という「バリュー評価」と「プロフィット評価」の2つを組み合わせて昇給・昇格を決めています。

-- ビジネスでも人間性を見る時代になったんですかね。

宮坂 そういう世の中にしたいというのもありますよね。こすっからい奴が偉くなるのは嫌ですからね(笑)。

-- 今後、求められる人材についてはどうお考えですか。

宮坂 この間、採用の合宿を行ってキーワードが2つほど挙がっていまして、ひとつが「貪欲に成長する人」ですね。自分自身で成長できる人材。

 もうひとつが、今からは「成長」では足りなくて「進化」できる人ですね。カメラで例えれば、一昔前ならアナログカメラの腕を磨く、これは成長ですね。アナログからデジタルは進化です。今後はカメラマンがムービーを撮るようになるかもしれません。これも新しい進化ですね。

 以前は、ひとつの技術を磨いていけばよかったかもしれませんが、残念ながら今後はそうはならない可能性が高いので、成長しかできない人なら困るなと。どこかで成長を止めて、違う生き物になるくらいの柔軟性がないと生きていけないのではないでしょうかね。

-- では、成長する人と進化する人の差は何ですか。

宮坂 その差が何なのか、明確につかんではないですが、「アンラーニング」、自己否定できるかどうかでしょうかね。今まで築き上げてきたものを捨てるのは勇気が要りますからね。

-- 宮坂社長の「進化」は。

宮坂 もともと、印刷関係の仕事をしていましたし、その後ホームページをつくったり、管理職になったりと毎回リセットして、その都度、「一から学ぶのか」と思っていました。でも、そんなもんだよなと思ってもいました。

 僕自身、やり切れているかは分かりませんが、これからも進化し続けていたいなとは思っています。福澤諭吉さんの言葉で「一身にして二生を経る」という言葉がありますけど、自分の中にふたつの人生、価値観を持てるのはいい経験ですね。

 僕の場合だと、インターネット以前と以後を生きて、今もモバイル以前、以後など、一生の中で2つも3つも違う生き方をさせてもらって、正直、すごく楽しいんですよ。

 いくつもの世界を生きていく。それを進化と呼べるのか分かりませんが、社長が人生の終わりというわけでもないので、この後もまた違う人生を歩んでみたいですね。

(聞き手=本誌・古賀寛明 写真=佐藤元樹)

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