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原発の安全性とは何か

 新聞報道によれば、長く「稼働ゼロ」の状態が続いていた日本の原子力発電所が再び動き始めるようだ。九州電力が再稼働を申請していた川内原発について、先頃、原子力規制委員会が新規制基準に適合していると判定したからである。ただし、規制委員会の田中俊一委員長は、記者会見の席上、「(川内原発が)規制基準に適合していると言っただけで、安全とは言っていない」といった趣旨の発言をしており、安全か否かの判断は政府の責任と言いたげだった。

 では、そもそも原発の安全性とは何なのか--。

 政府は「安全性の確保を大前提に原発を稼働する」との方針を掲げているが、この「安全性」に対する政府の解釈は、原子力規制委員会の安全審査にパスするかどうかによっている。

 要するに、規制委員会の新規制基準は世界最高の規制基準であり、それに適合すれば原発の安全性が担保されるというのが政府の考えなのである。

原発安全性の議論に欠落する住民保護の視点

 だが、たとえ新規制基準が世界で最も厳しいものだとしても、それで日本の原発の安全性が確保されるとは限らないし、そもそも地震大国日本の原発規制基準が世界最高であるのは当然と言える。

 問われているのは、新規制基準が世界の基準と比べてどうかではなく、福島原発(福島第二原子力発電所)のような事故を二度と引き起こさないかどうかなのであろう。新規制基準は、安全神話から脱却し、事故発生を前提にした基準になっているとされ、その点では一定の進展が見られる。だが、「住民の安全性」という視点が欠落しているのは大きな問題だ。

 福島原発の事故から学んだ教訓のひとつは、有事の避難が的確に行えなければ被害が拡大するという点だろう。

 実際、福島原発事故では、放射能汚染濃度が高い方向に住民が避難するという悲劇的な事態が見られた。事故は起きるとの想定に立てば、適切な避難計画を用意しておくことが必須だろう。しかし現状では、地域住民の避難計画の策定が、原発再稼働の要件にはなっていない。そのため、原発周辺(例えば、原発立地点から30㌔圏内)の自治体が、道路事情などで適切な避難計画が立てられない場合も、法的には原発稼働を止めることができない。

 原子力規制委員会は避難計画の策定を実質的に自治体に丸投げしている。政府も「自治体による避難計画策定を支援する」としているが、その対応は決して十分ではない。例えば、避難計画は、避難住民の受け入れ計画とセットとなることでリアリティーを持つが、内閣府--つまりは、避難計画策定支援の当事者ですら、避難計画は把握しているが、各自治体の受け入れ計画は把握していない。

 このように、規制委員会の新規制基準は事故発生時の住民の安全性を保障するものではない。

原発再稼働に対して厳しさを増す国民の目

 原発の再稼働は、国民世論から大きく乖離した動きと言える。言うまでもなく、福島原発の事故は、原発と原発政策に対する国民の「信頼」を根底から揺るがし、原発に対する考え方に大きな変化をもたらした。

 しかも興味深いことに、原発に対する国民の見方は、時間の経過とともに、よりシビアになっているのだ。

 例えば、「日本の原子力発電はどうあるべきか」という世論調査を見ると、福島原発事故直後の2011年6月では、「原子力発電は直ちにやめるべき」が13・3%で、「段階的に縮小すべき」が66・4%であった。それに対して、昨年8月では、「原子力発電は直ちにやめるべき」が31・4%、「段階的に縮小すべき」が51・9%になっている(参照:広瀬弘忠「福島第一原発災害を視る世論」『科学』第83巻第12号/2013年)。

原発再稼働の判断はリスクとコストを明確にした上で

 原発再稼働の要件は安全性の確保だけではない。放射性廃棄物の安全な最終処分手段の確立と、被曝労働問題の解決も再稼働の前提条件として加味すべきだ。仮にこれら2つの要件も(先に述べた要件に加えて)原発再稼働の前提条件に加えるならば、原発のランニングコストはかなりかさむはずだ。11年12月に公表されたコスト等検証委員会の報告書では、原発の発電コストは下限値が1キロワット当たり8・9円(現在は9・0円)で、他電源と比べて高くはない。だが、上限値は定められないとされている。理由は、事故リスク対応費用が確定できないからだ。

 事業にはリスクはつきものだが、事故発生時の損害規模やコストが明確に定められない事業は民間事業としては成り立たない。

 要するに、民間事業として運営するには原発のリスクは巨大過ぎるのだ。それでも再稼働に動きたいなら、あらためて電源ごとの発電コストを検証すべきだろう。また、既存原発は炉の型や立地条件がそれぞれ異なり、安全対策費と操業可能年数も違う。結果、稼働時の運転コストにも相当な開きが出るだろう。よって、それぞれの稼働リスクとコストを明確にした上で、再稼働の是非を判断すべきだ。

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