マネジメント

 「企業は人なり」。弊誌の掲げてきたテーマである。時代がどんなに変わろうとも、組織の在り方、人材の活用など、経営はリーダーの手腕で決まる。対談は、大脳生理学の研究者でもあった武田豊氏と、当時、まだ若手ながら抜群の感性を持つ小林陽太郎氏の2人で行われた。(1985.8.13号)

懐の深い包容力、説得力を

小林陽太郎

小林陽太郎(こばやし・ようたろう)
(1933〜)東京出身。富士フイルム入社後、富士ゼロックスに移る。社長、会長を務め、経済同友会代表幹事など財界でも活躍。国際派の経営者と知られる。現在は、国際大学理事長として活躍中。

小林 よく適材適所といいますでしょう。言葉でいうのは簡単ですが、ではどうやって人を見分けるのか。どちらかといえばこの男は、どこが不得手かなという具合に、長所よりも短所に目がいきやすい。リーダーとしては、やはり部下の長所を生かすことが大切だと思うんですが、その場合の態度、眼のつけどころというのは、非常に難しいですね。

武田 私も大脳生理学を勉強して26年になりますが、人間の問題というのは永遠で、クエスチョンマークばかりなんです。以前、時実利彦先生(東京大学名誉教授)とリーダーに欠くべからざる条件について話し合ったことがあったんです。

-- それはどういうものですか。

武田 順不同ですが、第一に健康体とした活力がないといけない。如何なる場合でも活力がなくてはダメですからね。次に強固な意志力がなくてはならない。ただ、これはちょっと説明が要るんです。

小林 といいますと……。

武田 一般的に、我慢とか忍耐だけが意志力と思われがちだが、それは一部にすぎないんです。いわゆる意欲、創造力、実行力などの〝陽の意志力〟と我慢強さ、忍耐、理性といった〝陰の意志力〟。この両方のバランスがとれてなくてはならない。

 それから責任感がないとまずい。というのも、人間はひとりで社会に生きているわけではない。次に知識力。これも単に記憶力がいいとかではない。それを土台にして、ある目標を設定し、クリエイションへともっていく知識力がないといけない。それから包容力。これも非常に重要な意味があるんです。

小林 どういったことでしょう。

武田 人間にはいろんな習性があり、特徴を持っている。その特徴を掛け算することにおいて、大きな発想の基がつくれるんです。例えば、A、B、Cといった全く違った要素を10組つくる。これを足し算すると55にしかならないが、あらゆる順列に掛け算すると300万組以上できる。だから漠然と人間の特徴を足し算するのではなく、思い切ったディスカッションをさせながらの掛け算的行動をさせるという、懐の深さがトップマネージャーには必要なんです。

 それから、人格に基づく説得力も大切です。「オヤジのいうことにはまいった。しょうがない」といったふうにね。

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