テクノロジー

 工学システムは、その時々の社会が求める最適な価値を提供するものであるが、高度化するにしたがい、その安全の確保が社会の重要な要求となってきた。

 まず、安全であるということは、どういうことであるかを考えてみる。ISOでは、安全を「受容できないリスクがないこと」(ISO/IECGuide51)と定義している。安全は客観的、安心は主観的問題と言われることが多いが、この定義を見ると安全か否かを議論するためには、受容する状況を社会として合意する必要があることが分かる。安全であるか否かということは、専門知見により自動的に決まるというわけではないのだ。

 また、安全というものは法規を守っていれば、必ず達成できるものではない。工学システムに関する規制は、社会・生産活動の多様性の中で必要条件として提示されてきた。そしてその性格上、被害の発生が明らかになったことに対して重点的に検討・作成されてきた。したがって、工学システムの開発・運用者は、未経験の事故を防止するためには、規制を順守する一方、新たな科学技術社会の創造にふさわしい安全目標を掲げ、工学システムの安全性を高めていくことが大切だ。

 さらに高度な科学技術社会では、工学システムの安全は、生命、心身の健康、財産、環境、に加え、情報、経済や社会的混乱等も対象とした上で、社会のその時々の価値観も踏まえその最適化を図る必要がある。そして、社会を守るための仕組みには、未然防止に頼り切ることなく、事故が発生した場合の防災の仕組みも必要となる。

 リスク対策は、必ずその対策によって別のリスクを生み出す。工学システムの稼働によるリスクが存在するのは当然だが、その不稼働によっても社会リスクが発生する。国(政治・行政)等は、先見性を持って国際的な動向と国民の価値観に配慮してガイドラインを作成し、稼働・不稼働を決定しなければならない。その判断を支援するために、事業者・専門家は、現状リスクを把握・報告する責務がある。そして、市民一人ひとりにも、科学技術のシステム・製品を安全活用し豊かな社会生活を行うに際して、理解すべき科学技術のリスクに関して関心を持ち、その受容の在り方に関して常に考えておくことが求められる。

 

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