国際

黒人妻を持つ白人市長は全米初

ビル・デブラシオ・ニューヨーク市長(写真:AFP=時事)

ビル・デブラシオ・ニューヨーク市長(写真:AFP=時事)

 米国では11月5日、ニュージャージー州、バージニア州の州知事やニューヨーク市長など地方の統一首長選挙が行われた。今年の各地の首長選挙は、来年の中間選挙を占う意味がある。また、幾つかの世相を反映する結果ともなった。

 ニューヨーク市長選は、民主党が推すニューヨーク市市政監督官ビル・デブラシオが、共和党のロタ候補を破って大勝。民主党候補を決める予備選挙では、現在のブルームバーグ市長の右腕でもあり、レズビアンでもある市議会議長クリスティン・クインが話題を集め、当初有力だったが、デブラシオが追い上げ、予備選挙で勝ち残った。

 デブラシオはまた、黒人妻を持つ白人市長としては、全米で初となる。白人の母親とアフリカ人の父親を持つオバマ大統領が2選を果たしている。しかしながら、白人市長の伴侶が黒人というのは、連邦最高裁が1967年、白人と黒人の人種間結婚を禁止する法律が違憲だと裁定してから、初めてという。黒人の女性首長に、白人の夫がいたことは、過去にあった。

 デブラシオは、黒人のシャーレーン・マクレーンと結婚。2人の間には、長男ダンテと長女キアラという2人の子どももおり、マクレーンと子どもが選挙戦にも頻繁に付き添っていたのは、好印象を与えた。

得票率73%という地滑り的勝利を支えたのは、白人だけでなく、幅広い人種の支援があったからだ。それは、デブラシオが富裕層の増税など徹底的にリベラルな公約をしたことに加え、彼の妻が黒人だったからだ。

 米世論調査会社ギャラップによると、異人種間結婚を認めている米国民は、58年にわずか4%だったが、2010年には87%に上昇し、過去最大の支持率となった。また、10年に行われた国勢調査の時点では、新婚の15%が異人種間だった。

 しかし、白人男性は白人女性と結婚する率が、黒人、ヒスパニック、アジア系よりも依然としてかなり高く、97%となっている。従って、デブラシオのケースはいまだに極めて珍しい。しかし、それをニューヨーク市民が評価した。

 黒人でミシガン州立大教授のタイヤ・マイルズは、デブラシオの勝利に感激したと、AP通信に語っている。マクレーンは、黒人女性のセレブである歌姫ビヨンセや女優ハル・ベリーのように、髪の毛をストレートにしたり、白人風の化粧をすることもなく、黒人特有の編み込みのアフロヘアのまま、選挙戦に登場し続けた。長男ダンテも、デブラシオが予備選に勝利した際のテレビ映像では、今では珍しくなった巨大なアフロヘアで、父とともに舞台に立った。

非白人層は確実に増え米人口の半分に迫りつつある

 一方で、ニュージャージー州の州知事選挙でも、マイノリティーなど非白人有権者が重要な役割を果たした。勝利したのは、2選を果たした共和党のクリス・クリスティーだ。イタリア系とアイルランド系の両親を持つが、ヒスパニックなどマイノリティーからの票を集め、当選した。彼は、16年大統領選挙の共和党候補としても有力視されている。

 彼の勝因は、保守派最右翼のティー・パーティーとは一線を画す中道派の路線だ。投票日直前も、州の裁判所が同性愛結婚は違憲だと判断したのに対し、クリスティー知事が控訴を断念したため、ニュージャージー州は全米で14番目に同性愛結婚が合法化する州となった。共和党強硬派が毛嫌いする同性愛結婚を認めるきっかけを、クリスティーが作ったと言える。

 また、州知事になってから、135㌔に達したという体重も、白人離れしている。「肥満は就職に不利」として、体重維持を異様に重視するのは、あくまでも所得が高い白人の価値観だ。それをくつがえして、クリスティーが巨漢を抱えながらも、政界の要人であることは、ほかの人種には好感を持って受け止められている。

 ヒスパニック、黒人、アジア人は、これまでマイノリティーとされてきたが、確実に増え、実は既に米人口の半分に迫りつつある。白人がマジョリティーという時代は将来必ず終焉する。その意味で、非白人層の有権者は今後重要性を増す。

 一方、保守派住民が多い南部バージニア州で、民主党の新しい州知事が誕生した。民主党のテリー・マコーリフ元民主党全国委員長が接戦の末、ティー・パーティーの強い支持を受ける共和党候補を下した。マコーリフは、クリントン元大統領と親しい中道派で、これも最右翼や最左翼ではない候補者が勝利した例だ。

 黒人初のオバマ大統領が誕生してから5年。依然として、人種差別、あるいは性、階級に絡む差別が残るのは事実だ。しかし、同性愛者どうしの結婚が認められる州が増え、黒人妻を持つデブラシオが当選するなど、「多様性」を米市民が以前に増して受け入れる土壌が育まれてきたのは確かだ。

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

2015年の中国リスクと新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第35回)

「3不社会」韓国の「3放世代」

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

 昨今、事業拡大や後継者対策などを目的とした企業同士のM&Aが増加している。同様にウェブサイトのM&Aが活発化している事実をご存知だろうか。サイトの売買で売り手にはまとまったキャッシュが、買い手にはサイトからの安定収益が入るなど、双方に大きなメリットがもたらされている。大手ITグループから個人事業主まで幅広い…

201712EVEREDIA_CATCH

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年1月号
[特集]
敗者復活戦

  • ・負けから何を学び、糧にしていくか
  • ・存亡の危機を乗り越えた「熱海」の逆転ストーリー
  • ・あの名門ブランドが、帰って来た(アイワ、ビクター)
  • ・「なるほど家電」を牽引する大手家電メーカーの早期退職組(アイリスオーヤマ)
  • ・関ケ原で敗れた立花宗茂はなぜ、返り咲くことができたのか
  • ・市江正彦(スカイマーク社長)
  • ・加藤智治(ゼビオ社長)

[Special Interview]

 三毛兼承(三菱東京UFJ銀行頭取)

 「旧来の商業銀行は構造不況業種 大変革で信頼と強さを持ち続ける」

[NEWS REPORT]

◆カードローン規制で稼ぎ頭を失う地方銀行の明日

◆12年ぶりのアイボ復活 名実ともにソニー再生は成るか

◆終身権力者も視野に入った習近平が恐れるクーデター

[特集]クルマが変わる、社会を変える

・これから始まる全自動運転 OSを制するのは誰だ!?

・車載電池の性能が左右するEV時代の覇権戦争

・冷える鉄鋼、潤う化学 クルマが変える産業構造

・トヨタ・日産・ホンダ・マツダ 主要4社「わが社の戦略」

ページ上部へ戻る