テクノロジー

40年廃炉で原発は大幅縮小へ

 九州電力川内原発の安全審査にめどが立ち、この秋以降、原発再稼働が始まりそうだ。

 しかし、原子力規制委員会は、活断層や基準地震動などの問題のみならず、40年原則廃炉を掲げており、震災前より大幅に原発は縮小すると見られている。電力システム改革が進展する中、供給力不足を見越した都市ガス・石油・鉄鋼などの新電力や、他地域進出を図る電力会社は、大規模火力の建設を検討している。

 前回、1990年代の欧州電力システム改革を契機に市場を席巻したドイツの電力メジャーが、ここ数年の再エネの拡大で苦境に陥り、事業モデルの転換を迫られている状況を紹介したが、今回は、日本における再エネ拡大と電力システム改革が大規模発電所投資に与える影響や新たな競争の機軸を論じる。

電力需給は2020年ごろには供給過剰に

全国メリットオーダー推計・時間別年平均市場価格 まず、どれだけの原発が再稼働するか検討する。高経年化炉は、より厳しい基準が課されるとともに、もともと難燃性ケーブルの使用など通常の基準でも不適合とされるため、ほとんどが廃炉となるだろう。また、再稼働には県知事の了承が必要となるが、少なくとも福島県での再稼働も難しいだろう。

 無論、重要施設直下の活断層や基準地震動など災害対策の問題もある。見通しは不透明だが、ここでは、規制委員会がクロ判定を出した原電敦賀2号機だけが再稼働しないものとする。

 以上の前提に、現在建設中の2基を加えると、再稼働する原発は36基3700万キロワットとなり、震災前54基4900万キロワットに比べ大きく減少する。そうした中、石炭火力やLNG火力などの新増設が、公表されている計画に老朽火力の廃棄も加味すると900万キロワットと想定される。

 他方、高い固定価格買取制度で太陽光発電は6600万キロワットが設備認定を受け、物議を醸している。

 これらすべてが建設されるとは考えにくいが、本年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画では、21%以上の再エネ導入が謳われており、20年ごろまでには、5千万キロワットぐらいが加わると考えられる。多くの電力会社等の業界関係者は容量(キロワット)と実際にどれだけの時間発電するか(キロワット時)の違いが身に染みており、稼働率が7〜9割となる原発や火力に対し1割少々しかない太陽光発電を軽視してきた。

 しかし、これは夜も含む平均の話であって、電力需要がピークとなる昼間帯の稼働率は4割以上である。ピーク時間だけを取れば、原発縮小分をはるかに上回る供給力が加わる。

原発廃炉、太陽光発電推進などで電力卸売市場の価格はどうなる?

 現在、さまざまな取り組みの1つとして電力卸売市場の活性化が進められている。電力は、卸売市場ではコモディティとして取り扱われ、取引量が増せば、ミクロ経済学における完全市場と同様の動きを見せる。メリットオーダーと呼ばれる各種発電所の変動費燃料費を安い順番に並べたものが供給カーブとなり、時間帯ごとのエネルギー需要がほぼ垂直の需要カーブとなり、その交点が卸売価格を決定する。

 A・T・カーニーでは、現状の原発全停止状態での卸売市場価格の理論値とともに、前述の20年の発電ミックスを前提とした理論値を試算した(図参照)。

 原発の一部再稼働と火力の新増設に加え、特に昼間帯においては太陽光が供給力を大きく拡大させる。太陽光発電は、全体のコストは高いが燃料費はゼロのため、供給カーブ上は左端に入り、全体の供給カーブを大きく右にシフトさせる。結果、昼間帯で逆に市場価格はへこむと試算された。

 また、供給カーブが右にシフトした結果、需要カーブとの交点はほとんどの時間帯でLNG火力となり、その燃料費が卸売価格を決定するようになる。18年以降、シェールガスなど非原油リンク化された安価なLNGが卸売価格の低下に拍車を掛ける。

 日本の卸売市場の活性化がどこまで進むかは分からないが、ドイツでは市場外での相対取引のほうが市場取引より大きかったが、相対取引でも市場価格が参照されるようになっていたため、太陽光の拡大で卸売価格と燃料費のスプレッドが取れなくなった電力会社は苦境に陥った。卸売価格の低下で新増設された石炭火力は減価償却期間では利益が得られず、LNG火力は固定費回収すら難しくなる可能性がある。

 他方、固定価格買取制度の元で積み上がるサーチャージは電力小売価格を上昇させる可能性がある。それらを踏まえた新たな競争の機軸については、次の機会に議論したい。

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