政治・経済

芦原義重氏の半生と関西財界

 先輩であり、人生の師でもあった太田垣士郎を失った芦原義重は、文字通り〝失意〟のどん底にありながら、経営者として、また財界人としては、まさに絶頂期にあったと言えるだろう。

 昭和39年2月6日、太田垣が関電病院に入院した時、電力担当として現場にいた筆者は長期間、つまり、翌3月16日の超大物の逝去に至るまでの1カ月強、昼夜を問わず太田垣の病状・動静を見守っていた。そんな筆者が関西電力広報から連絡を受けたのは3月16日の午前4時。早朝からの記者会見に臨んだ芦原は、記者クラブの面々に訃報を伝えながら、各記者の労をねぎらった。ほぼ40年も前のことながら、その時の芦原の悲痛な表情は今もって忘れられない。ただし、この時期から芦原の身辺は超多忙になる。関西財界の総理であるばかりではなく、中央政財界でも重要視された芦原の肩書は、200をはるかに超えていた。

 昭和51年3月、芦原は太田垣の13回忌を執り行い、太田垣士郎伝を刊行する。タイトルは『呼ぼうよ雲を〜太田垣士郎伝』。芦原は関電の社歌からとった表紙のタイトルを自ら揮毫し、巻頭に「企業家魂の神髄」の一文を寄せている。この間に芦原は関電初の原発・美浜1号機を着工。昭和45年に11年間務めた社長職から会長職に転じ、運転開始した美浜原発1号機から日本万国博覧会会場に〝原子の灯〟を送り込む。その2年後に田中角栄内閣が発足。以降の10年間に三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘内閣が誕生した。既に電力各社は政治家への企業献金廃止を宣言していたが、芦原は盆暮れの付け届けを継続させていた。だからこそ、政界に対する関電・関西財界の影響力は強く保たれ、関西新国際空港の具現化にも底力を発揮しえたのである。しかし芦原が代表取締役名誉会長、内藤千百里が副社長に就任した2年後、子飼いの小林庄一郎が、芦原の後継者として関西経済連合会会長に就いていた日向方斎の後押しを受けて「芦原と内藤を解任する挙」に出たのだ。

 筆者の手元には、元朝日新聞記者で関西経済同友会・事務局長などを務めた北村武の決別の文書がある。それは102歳で逝った芦原礼賛論でもあった。

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