政治・経済

市民発電所によって地域で必要なエネルギーをつくる試み

 

 太陽光や風力など自然エネルギーの開発を市民がお金を出し合って支援する市民発電所が、存在感をますます高めている。

 神奈川県小田原市や福島県喜多方市で2014年春、相次いでメガソーラー施設が着工したほか、北海道石狩市では大型風力発電が動き出す。

 共通するのは市民の出資で事業費を賄う点だ。地域で必要なエネルギーを、地域で作り地域で消費する取り組みが勢いを増してきた。

 JR小田原駅から車で12分、小田原市久野地区の山林で14年3月から建設中の市民発電所を見に行った。

 山林所有者から3カ所、合計1・8ヘクタールの土地を借り、4020枚のシャープ製太陽光パネルを設置する。立地場所は県の公共残土置き場だった所で、ここに強固なコンクリート板を取り付け、その上に出力245ワットのパネルを10度の傾斜でずらりと並べる。

ソーラー発電所を建設中

ほうとくエネルギーは小田原市西部の森林でソーラー発電所を建設中だ

 事業費は3・5億円で、14年10月から発電を始める。出力は984キロワットで、一般家庭309軒分の電力を生み出す。つくった電力は1キロワット時40円で東京電力に売電する。

 この事業を経営するのが「ほうとくエネルギー」(蓑宮武夫社長、資本金5800万円)である。地域主導で自然エネルギーを開発し、地域のエネルギーを自給自足できる体制を築こうと、干物店やかまぼこ屋、魚市場など地場企業38社が12年末、共同出資してつくった新会社だ。

 この会社がまず手掛けたのが、小田原市太陽光発電屋根貸事業だ。公共施設の屋根を活用して太陽光発電を行うもので、小田原市から集会所と小学校2校の屋根を借り、出力合計120キロワットのパネルを設置した。14年1月から発電を始めており、1キロワット時36円で全量、東電に売電中だ。

 それに続く事業が久野地区のメガソーラー事業で、これを運営するため100%出資による子会社「ほうとくソーラー1」を設立した。

 当面はメガソーラー事業の経営基盤を固めることに力を注ぐが、先行きは屋根貸事業をさらに拡充するとともに、小水力発電の事業化も検討するなど、自然エネルギーの開発に厚みを付けようと考えている。

 

市民発電所建設の資金調達に活用される市民ファンド

 

 ほうとくエネルギーは市民ファンドを活用して、屋根貸とメガソーラーの事業費の一部を調達している。1口10万円、目標利回り年2%で市民の出資を募るもの。14年1月末から募集を始めたところ、市民の関心は極めて高く、募集期限を待たずに目標額の1億円を集めてしまった。

 志澤昌彦副社長によると、出資者は179人に上り、小田原市民が全体の27%、続いて神奈川県民が同25%と県内住民が過半数を占めた。

 「地域の活性化に協力したい」、「地元での取り組みだから」と言って出資した人が33%もあったそうで、「市民の幅広い参加で事業展開できる点が強み」と志澤副社長は力説する。

 市民ファンドを活用して事業化する手法は喜多方市でも同じだ。「会津ソーラー市民ファンド2014」の名称で、14年3月末〜9月末の期間に1口20万円、目標利回り2%の条件で募集し、総額9980万円を調達する。この資金は会津地方の自然エネルギー開発事業に使われる。

 事業展開に備えて13年8月、会津地方の法人や個人を中心に「会津電力」(佐藤弥右衛門社長)を設立済みだ。具体的に太陽光発電事業を運営するのは、100%子会社の「アイパワーリセット」で、第1弾として喜多方市岩月地区に出力300キロワットの太陽光発電所を建設する。

 発電開始は14年8月で、つくった電力は全量、東北電力に売電する。この後、会津地方の20カ所に出力58キロワット程度の太陽光発電所を次々と設ける計画だ。21カ所の合計出力は1・45メガワットで、総事業費は4億6千万円に上る。

 これとは別に、会津電力は14年10月完成をめどに、喜多方市熊倉に出力1メガワットの雄国太陽光発電所も建設している。

 西向き斜面の山林2万1千平方メートルを借り、3740枚のパネルを設置するもので、事業費は3億7千万円。多雪地帯であるため、地上から高さ2・5〜4・6メートルの荷台に30度の傾斜でパネルを設けるなど、雪国ならではの工夫を凝らしている。敷地内には体験学習施設(120平方メートル)も併設、再生可能エネルギーなどの環境講座を開く計画だ。

 福島原発の事故から3年半、原発依存から脱し自然エネルギーを導入する動きが福島県下で広がっている。佐藤社長は水力や地熱も検討し、「エネルギーを自分たちの手に取り戻したい」と意気込む。

 市民ファンドは石狩市で建設中の4メガワット風力発電所でも活動している。市民が応援する発電所づくりがわが国でますます勢いを増してきた。

 

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