マネジメント

 「社長、今回の融資はOKとなりました! 金額3千万円は希望どおり、返済期間5年で、金利は2・8%です」

 私は銀行員時代、融資を申し込んできた企業に対し、こんなふうに審査が通った旨を伝えていました。

 実のところ、こうした銀行員の言葉には「ワナ」があります。それはもちろん金利の部分。実際は金利2・0%で稟議が通っているにもかかわらず、融資相手には、とりあえず2・8%と伝える。それで相手から何も言われなければ、その銀行員は上司から褒められるのです。

 企業の中には、金利についてあまり頓着しない向きがあり、銀行はそうした企業から金利を大きく取ろうとします。そのため、融資審査は極力低い金利で通しておき、金利交渉の幅を持たせ、先方にはできる限り高い金利を伝えるのです。結果、金利に無頓着な経営者は、高金利で融資を受ける「高金利社長」となり、金利に敏感な経営者は「低金利社長」になるというわけです。

 ですから、先の例のように「金利は2・8%です」と伝えられても、すんなり受け入れてはなりません。「それって金利が高過ぎないか」と反発することで、金利交渉が始まるのです。

融資を受ける際はまず金利をしっかり金額で把握する

 ここでぜひ、経営者の皆さんに取り入れていただきたい習慣があります。それは、金利を常に金額として把握することです。

 例えば、3千万円の融資を受け、金利2・5%、5年60回/月50万円を返済とするとして、完済までに支払わなければならない利息はいくらになるでしょうか。

 この利息総額を計算するには、返済期間までの平均融資残高を初めに計算すると分かりやすいはずです。

 当たり前の話ですが、5年後の融資残高は0円。ですから、この融資返済期間である今後5年間の平均融資残高は、次の計算式で割り出せます。

 

(3千万円+0円)÷2=1500万円

 

 そこから、5年間の支払利息を割り出す計算式は次のとおりです。

 

1500万円×金利2・5%×5年=187・5万円

 

 要するに、3千万円の融資を5年60回返済/金利2・5%で受けると、支払い利息は187・5万円になる、ということです。

 このように金利を金額に換算すると、融資を受けることは大きな買い物であると実感できるはずです。

 ここで金利交渉を行い、融資金利を1・5%に引き下げられたとすればどうでしょうか。先の計算式から、支払い利息総額が112・5万円になることが分かるはずです。つまり総額で75万円も「融資のためのコスト」を減らすことができるというわけです。

 また、融資を受けると、信用保証協会に対する保証料など利息以外の経費も発生します。その分も含めて、トータルで融資金利を検討する必要があるのです。

低金利で融資を受けるための3つの方法

 ならば、どうすれば、より低い金利で融資を受けることができるのでしょうか。ここでは、その方法を3つ、お伝えしておきます。

低金利で融資を受けるための3つの方法(1)都道府県・市区町村の制度融資を探す

 各自治体には、低金利で融資を受けることができる制度融資があります。それらを自ら探したり、銀行に提案してもらったりしてください。ただし、制度融資には信用保証協会の保証が付くのが通常です。したがって、そのための保証料も加味して損得を検討する必要があります。

低金利で融資を受けるための3つの方法(2)銀行同士を競争させる

 銀行が融資したい企業であれば、銀行同士を競争させることで、より低い金利を引き出すことが可能です。

 具体的には、銀行から融資の提案書をもらい、そこに金利も記させます。それを交渉の材料として用い、他の銀行から、より低い金利の融資提案をさせるのです。こうした作業を重ねていくことで、低金利で融資が受けられるようになっていくのです。

低金利で融資を受けるための3つの方法(3)銀行員のノルマを利用する

 銀行の支店には営業担当の得意先係があり、融資の量は彼らのノルマのひとつです。したがって、銀行があなたの会社に融資を勧めてきたならば、そのノルマ達成に向けて得意先係が必死に動いていることの現れです。そのときには、金利交渉を有利に進めることができるのです。

 そして、その交渉の結果、例えば、金利1%前後での融資を受けることができれば、それがあなたの会社に対する金利設定の基準となり、今後もその基準に基づく融資が受けられるようになるのです。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件に学ぶ 不祥事対応のプリンシプル

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

「ブラック企業」という評価の考察

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

コエンザイムQ10のCMで知名度向上、売上高1兆円を目指すカネカ--カネカ社長 角倉 護

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
65歳からのハローワーク

  • ・総論 働く上で「年齢」は意味を持たなくなる
  • ・50歳からの15年間の準備が豊かなセカンドライフを保証する
  • ・エグゼクティブのセカンドキャリア最前線
  • ・企業のシニア活用(富士通、ネスレ日本、鹿島)
  • ・副業のすすめ 現役時代の副業は定年以降のパスポート
  • ・島耕作に見るシニアの今後の生き方 弘兼憲史

[Special Interview]

 赤坂祐二(日本航空社長)

 「中長距離LCC事業には挑戦する価値がある」

[NEWS REPORT]

◆社員の3分の1を異動したWOWOWの危機感

◆迷走か、それとも覚醒か B2Cの奇策に出るJDI

◆外国人労働者受け入れ解禁で どうなる日本の労働市場

[特集2]

 開幕まで1年!

 ラグビーワールドカップ2019

ページ上部へ戻る