マネジメント

 「集団的自衛権」の解釈をめぐり、国内はもとより海外でも論争が続く。国を守る上で同盟国がいる場合、自分だけが安全な場所にいるわけにはいかない。しかし、日本には究極の理想である「平和憲法」もある。われわれが、まずやるべきことは議論を尽くすことではないだろうか。

祖国を愛する心--倉田主税

倉田主税

倉田主税(くらた・ちから)
(1886〜1969)。福岡県生まれ。学校を卒業後、久原鉱業所日立製作所に入社。戦後、公職追放により社長に就任。科学技術の振興に尽くした。(写真提供:共同通信社)

 自分が生まれ、育まれた家庭を愛する心は全く自然の感情であり、麗しい心である。また自分が生を享け、生活している郷土を愛し、国を愛するのは、これまた自然の心であり、理屈ではない。祖国を愛する心を持つ国民に満ちた国ほど将来の繁栄が約束されるものである。

 第2次大戦がわが国にもたらした弊害の中で私が最も残念に思うのは、国民一般に祖国愛をうとんずる風潮が出てきたことである。戦後の変革があまりにも大きかったためか、戦前にあったものがすべて悪いものだとする考え方が一部にあるようだが、これはあまりにも偏狭な見方だと言わなければならない。先人が遺した正しい道徳や人間の道を深く身に付け、さらに進んで新しい伝統を産み出していくことは、われわれに課せられた義務であろう。

 もとより、政治的な意図より出た、誤った愛国心の昂揚などは、避くべきものであることは、歴史の教えるところであるが、人間の本性に訴えた純粋な愛国心の昂揚は、忘れられるべきではない。人たる限り、自らを育んでくれた山河に接すれば、理屈を抜きにした限りない懐かしさと愛着の情を抱くであろう。この素朴な感情はまた祖国を愛する心にも通じるものである。

 戦後の教育においても、確かに教育技術は発達したが、半面祖国を愛するという基本的な考え方は若干欠如しているように感じられる。これでは全く「仏つくって魂入れず」という結果に終わるのではないかといささか心配である。

 私が企業の経営という仕事を通じて感ずることは、戦後の日本人が祖国愛という精神的バックボーンを喪失した結果、仕事の面においても自主性が欠如し、また一面、無意味な競争意識過剰に悩んでいることである。

 自主性の欠如は、生産技術、研究開発技術の面にもあらわれており、自分自身の力に自信を失い、安易な技術の導入ということに目がくらんで、一向に自分で開発しようという意欲がない。せっかく、わが国で開発した技術が、むしろ外国で発展するといった例さえ少なくない。これは自分の技術に真の自信を持たず、どこか劣っているのではないかという劣等感にとらわれているからではないかと思うのである。

 輸出市場においても、無謀な過当競争を行い、自分勝手な行動に出る者が多いこともよく体験するところである。このようなことは目先の利益、自己の立場のみにとらわれた結果で、日本人の心の中で祖国を愛するという気持ちが希薄になっている現れではないかと思うのである。

 私は、この麗しい日本が、今よりさらに豊かに、今よりさらに美しく、輝かしい繁栄を保っていくために、社会生活のあらゆる行動において、祖国を愛する心を忘れてはならないと、私自身、自覚を新たにしているのである。(1967年・2月号)

戦争の本質--荒木貞夫

荒木貞夫

荒木貞夫(あらき・さだお)
(1877〜1966)陸軍軍人。最終階級は陸軍大将。皇道派の中心であり、戦後A級戦犯として逮捕され、55年に仮出所した。その後は講演などを精力的にこなした。(写真提供:共同通信社)

 孫子に「兵は国の大事にして死生の地、存亡の道なり。察せざるべからざるなり」とある。

 確かに、根本において戦争はかりそめにすべきものではない。しかし、あらゆる生物が生きていくためには、そこに闘いがつきまとうのは世の常だ。平和は誰もが願うが、生物を生存させるためには争わねばならぬように造物主によって造られているので、戦いはどこにも存在している。ただ、人間には知恵というものが与えられてある。野獣のような爪や牙や毒は持たぬ故に、人間は野獣のようになってはならない。二度の大戦は、文明国の闘いと言いながら毒ガス、原子核兵器を用い人間の闘いから野獣の闘争に堕落したと言い得る。大いに反省すべきことである。

 孫子は「百戦百勝、善の善なるものに非ず、戦わずして相手を屈せさせる。これ善の善なるもの」と喝破し、多くの血を流した戦は下の下の戦争と決めつけている。遺憾なことであるが。敵を圧倒殲滅するという言葉が使われる現在、核兵器をもって互いに脅かし合っているさまは正に人間の戦争を野獣の闘争に堕落させしむるもので私は断じて与することができない。

 中国の兵書三略には「専ら柔専ら弱 其の国必ず削らる 専ら剛 専ら強 其の国必ず亡ぶ」とある。然らばどうしたらよいかといえば、「能く柔 能く剛其の国いよいよ光あり 柔は徳なり」と教えている。

 物量や原子核で脅かしているものや、無防備に平和念仏のみ唱えているものは大いに熟慮反省せねばなるまい。あくまで人間の戦争であって、野獣の闘争に堕落しないように心掛けることが肝要で、国を盛んに、国民の志気を健全にし、そして精神的に敵を圧倒し置くことである。この文明世界において、わが国は、惑わず、日本の本質に磨きをかけることである。(1966年・7月号)

(構成/本誌・古賀寛明)

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

【特集】2019年注目企業30

 2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。 原点回帰で、顧客第一…

「超サポ愉快カンパニー」としてワクワクするビジネスサイクルを回す―アシスト

ITと建設機械、グリーンエネルギーの3本柱で地球環境問題解決に貢献する―Abalance

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年4月号
[特集]
日本の「食」最前線

  • ・総論 日本の「食」から世界の「食」へ 成長産業となった農水・食品産業
  • ・「食」の輸出1兆円を支えるジェトロの役割
  • ・全国で進むブランド化「食」から始まる地方創生
  • ・上海で見た日本の「食」の未来
  • ・海外進出した外食チェーン「成功」と「失敗」の分かれ目
  • ・日本人が知らない中国の「日本食ブーム」の真実
  • ・消費税引き上げで始まる「外食VS中食」最終戦争

[Special Interview]

 星野晃司(小田急電鉄社長)

 「未来を見据えた挑戦で日本一暮らしやすい沿線をつくる」

[NEWS REPORT]

◆中国リスクが顕在化 電機業界に再び漂い始めた暗雲

◆持続可能な水産業へ 魚はいつまで食べられるのか

◆CES 2019現地レポート 家電からテクノロジーへの主役交代が鮮明に

◆相次ぐトラブルで業績悪化 SUBARUの見えない明日

[総力特集]

 2019年注目企業30

ページ上部へ戻る