文化・ライフ

南場智子

南場智子(なんば・ともこ)
新潟市生まれ。1986年、津田塾大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。90年、ハーバード・ビジネス・スクールにてMBAを取得。99年にマッキンゼーを退社してディー・エヌ・エーを設立、社長に就任。2011年、社長兼CEOを退任し、取締役となる(現任)。著書に『不格好経営―チームDeNAの挑戦』(日本経済新聞出版社刊)。

 前回に引き続き、ディー・エヌ・エーの創業者、南場智子さんにお話を伺います。同社では8月から遺伝子検査サービス「MYCODE」の提供が始まりました。指揮を執る南場さんは、この新規事業に懸ける強い思い入れがあると話します。ヘルスケア事業参入に至る経緯とは。事業創出に対する考え方も併せてお聞きました。

ディー・エヌ・エーは転換期、遺伝子検査サービスも開始

佐藤 ディー・エヌ・エーは今年で創業15年を迎えられました。

南場 わが社は今転換期で苦労もありますが、面白い時期です。主力のゲーム事業だけでなく、ヘルスケア事業やマンガ雑誌アプリ「マンガボックス」のようなコンテンツ事業に参入し、会社全体で挑戦しています。

佐藤 ヘルスケア事業については驚きました。遺伝子を解析するサービスなのですよね。

南場 MYCODEというサービスで、申し込みをいただくと専用のキットを送付しますので、唾液を採取して返送してもらえば解析できます。学術面は東京大学医科学研究所がサポートしています。自分の遺伝子を解析した「設計図」には、必ず気付きがあって、「この設計図だと雨漏りしやすいですよ」と言われると補強しますよね。検査結果に基づき、病気になる前に行動に移せることは重要です。

夫の病気が遺伝子検査サービスの原点

佐藤 なぜこの事業への参入を決めたのですか。

南場 2011年に夫ががんを発症し、2年間の闘病生活を見守りました。その生活が落ち着いた頃、「なぜ病気にしてしまったのか、発症前にできることはなかったのか」と考えました。私たち夫婦は外食ばかりで睡眠時間も3〜4時間、運動もしない生活で、不健康だと分かりつつ習慣を変えませんでした。それが突然、病気として返ってきてとても後悔したんです。その時の思いが事業参入の原点です。

対談の様子 また、国民医療費も膨れ上がっています。発症後に治療する仕組みではなく、病気になる前にケアできれば医療費を抑えられます。このような社会問題は行政や政府だけではなく、民間企業なども共に解決していくべきと思い、職場復帰と同時に事業を考えました。

佐藤 ご自身の体験を無駄になさらず社会貢献につなげるのは素晴らしいですね。

南場 私は事業として永続する仕組みを考えることが好きなのです。医療や教育など社会の課題は多いですが、解決するためには事業が絡まなければ勢いもつきません。かかわった人が得する形ならパワーを持って、自律して回っていきます。そういう意味で、社会善に事業を絡めることに関心があります。

佐藤 そのような南場さんの姿勢を手本とする若い経営者も多いと思います。

南場 私を先輩のように思っていただくことはありがたいですが、若い経営者は私たちとは見えている世界が違います。のびのびと、世代の違う人の言葉に惑わされず、ユーザーの審判を指針に進んでほしいです。


対談を終えて

対談を終えて「似ているわね!」と喜んでいただいた似顔絵と、渋谷の町並みを背景に素敵な写真が撮れました。復帰後、多忙なスケジュールをこなす南場さん。そのパワフルな姿は、同世代の女性経営者として刺激を受けました。創業15年のディー・エヌ・エー、そして南場さんのさまざまな挑戦に、これからも注目していきたいと思います。

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

コエンザイムQ10のCMで知名度向上、売上高1兆円を目指すカネカ--カネカ社長 角倉 護

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
65歳からのハローワーク

  • ・総論 働く上で「年齢」は意味を持たなくなる
  • ・50歳からの15年間の準備が豊かなセカンドライフを保証する
  • ・エグゼクティブのセカンドキャリア最前線
  • ・企業のシニア活用(富士通、ネスレ日本、鹿島)
  • ・副業のすすめ 現役時代の副業は定年以降のパスポート
  • ・島耕作に見るシニアの今後の生き方 弘兼憲史

[Special Interview]

 赤坂祐二(日本航空社長)

 「中長距離LCC事業には挑戦する価値がある」

[NEWS REPORT]

◆社員の3分の1を異動したWOWOWの危機感

◆迷走か、それとも覚醒か B2Cの奇策に出るJDI

◆外国人労働者受け入れ解禁で どうなる日本の労働市場

[特集2]

 開幕まで1年!

 ラグビーワールドカップ2019

ページ上部へ戻る