テクノロジー

 インターネットの川上から川下まで、幅広い領域でサービス拡大を目指すGMOインターネットグループ。その中で、あらゆるビジネスの起点となるのがドメインだ。このドメインの運営・管理を手掛けるGMOドメインレジストリの塚原廣哉社長に、事業の可能性について聞いた。

優良ドメイン取得への関心が高まる

塚原氏

「ドメインへの意識をどう変えてもらうかが重要」と話す塚原氏

 ウェブサイトやメールのアドレスなど、インターネットユーザーが普段何気なく使っているドメイン名。「.com」や「.jp」など最後尾の文字列はトップレベルドメイン(TLD)と呼ばれているが、今年4月から新たに「.tokyo」のTLDが使用できるようになった。この「.tokyo」の管理を手掛けるのが、GMOインターネットのグループ会社であるGMOドメインレジストリである。

 ネットで使用されるドメインは、米国の非営利団体であるICANN(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)が割当管理しており、ICANNの審査を通った申請希望者に対して、ドメインを管理運営する許可が下りる。1つのドメインに対して複数社からの申請があった場合は、オークションによって管理者(レジストリ)が決定。レジストリはレジストラと呼ばれるドメイン登録事業者や代理店などを通じてユーザーにドメインを販売することになる。製造業に例えて言うならば、レジストリは卸し、レジストラや代理店は小売りの関係ととらえれば分かりやすい。

 GMOドメインレジストリは、ソマリアの「.so」とインドネシアの「.id」という2つのドメインをそれぞれの政府に代わって運営するなどしてきたが、ICANNが2012年にドメイン名の使用に関して大幅な自由化に踏み切ったことを受け、14年2月から「.nagoya」の運営をスタートした。「.tokyo」の取得はこれに続くものだ。これらのほかにも、既に「.yokohama」の運営が開始されている。同社の塚原廣哉社長は「地域名のドメインは今後も伸びる。かなり規模が拡大すると見ている」と語る。

 ICANNへの申請にはTLD1件当たり18万5千㌦のコストが掛かっている上、レジストリからレジストラへの卸価格は1件当たり数百円程度となるため、いかにユーザー数を増やせるかがビジネス拡大の鍵。それでは、ユーザーにとって「.tokyo」を使用できるようになるメリットとは何か。塚原氏はこう説明する。

 「例えばTLDが『.tokyo』なら地域が一目瞭然。東京でビジネスするお客さまには非常に魅力的です。良い文字列は短くて分かりやすいもの。例えばタクシー会社が『taxi.tokyo』、ホテルが『hotel.tokyo』、カフェが『cafe.tokyo』といった誰でも分かる簡単な文字列をウェブサイトのアドレスに使うことによって、検索結果で目視されやすくなり、多くの利用者を呼び込むことができます」

 特に日本では、アドレスの直打ちではなくポータルサイトの検索からお目当てのサイトにたどり着くユーザーが多いため、文字列をカテゴリーで登録する、塚原氏の表現を借りれば「面を取る」ことが非常に重要だという。今年4月7日から6月6日までに行われた「.tokyo」の商標権者向け優先登録では、ぐるなび、東急電鉄、はとバス、日立製作所など数多くの有名企業が登録した。優良なドメインに対する企業の注目度が高まっていることがうかがえる。

日本におけるドメインビジネスの可能性

 GMOインターネットグループには、1990年代後半に開始したICANN公認レジストラの「お名前.com」をはじめ、いくつかのドメイン登録サービスがあるが、製造業でいう卸しがなかった。そこでEコマース市場の拡大を睨み、「.shop」のドメインを獲得する目的で09年にGMOドメインレジストリは設立された。

 ドメイン購入者はウェブサイトを持つためにレンタルサーバーを利用するほかショッピングサイトを開設したり、そこで決済手段が必要になったりと、さまざまなサービスがドメインを起点に広がっていくことになる。つまり、インターネットの領域において、レジストリはいわばエントリーポイント。同領域の川上から川下まで押さえる上で、非常に重要な役割を果たす。現在、同社では「.tokyo」のような地理的名称TLDのほかにも、「.shop」、「.mail」、「.inc」などをICANNに申請中だ。

 今後の課題について塚原氏はこう語る。

 「ドメイン登録数は、その国の人口と経済規模にある程度比例していて、例えばドイツで約1540万件、イギリスでは約1050万件、フランスでは約260万件もあります。一方、これらの国々をGDPで上回る日本では今のところわずか133万件程度しかありません。つまり、日本にはドメインビジネスに関してものすごいポテンシャルがあるということです。この潜在市場をどう呼び起こせるかが課題です」

 ドメインへの理解を広めるために、今後はPR活動にも力を入れていくという。

 「日本人のネット利用者は多いし、リテラシーも高い。下地は整っているので、あとは人々の意識をどう変えていくかだと思います。そのためにも『.tokyo』を1つのキッカケにできればと考えています」と、塚原氏は言う。

(文=本誌編集長/吉田 浩)

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義 村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

経済界が主催するベンチャー企業支援企画「金の卵発掘プロジェクト2018」でグランプリを受賞した草木茂雄・エムアールサポート社長。建設・土木というガテン系の領域でイノベーションを起こすための挑戦を追った。(吉田浩)草木茂雄・エムアールサポート社長プロフィール 測量とアートが結び付く「測量美術」とは何…

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る