政治・経済

 野党は再編はおろか共闘もままならない1強多弱で、自民党内にも敵なしと言われる安倍晋三首相。果たして、安倍政権はいつまで続くのか、アベノミクスをはじめとした政策は今後どうなるのか。改造人事発表前の8月下旬、永田町を取材しているジャーナリスト各氏に「その核心」を語り合ってもらった。その“危なすぎる内容”ゆえの匿名座談会。

覆面座談会出席者

A氏 元大手マスコミ政治部記者。30年以上、永田町を取材。自民党を中心に幅広い取材で定評がある。

B氏 元代議士秘書から政治ジャーナリストに転身。秘書ネットワークを駆使して与野党に食い込む。

C氏 週刊誌記者からフリーに。事件や芸能などの取材もこなす。約8年前から永田町取材にシフト。

 

安倍首相の長期政権を阻む健康問題という〝時限爆弾〟

 

-- 安倍政権は今後、どうなると見ますか。20年の東京五輪まで続くと、まことしやかに囁かれているようですが……。

A氏 石破茂幹事長を閣内に取り込み、ライバル封じの手を打ちました。加えて、ロシアのプーチン大統領はじめ欧米各国のトップの多くは長期政権です。「私が長期政権で何が悪い」と周囲に漏らす安倍首相は、2期6年どころか、20年の東京五輪までの〈超〉が付く長期政権の野望を抱いています。

B氏 決して安倍首相が飛び抜けていいという声はありません。しかし、〝ポスト安倍〟は誰かと考えたとき、今の自民党を見回しても見つからないのが現状です。だから、極めて消極的な選択肢ですが、安倍政権が長期化するというのは、間違っていないと思います。

A氏 絵に描いた餅に終わるような気がしますね。

C氏 菅義偉官房長官が内閣や官僚にも睨みを利かして安定しているように見えるが、やはり「健康問題」がアキレス腱か。

A氏 時限爆弾ですね。首相の持病・潰瘍性大腸炎は、炎症を抑えるためステロイドの併用も欠かせない。でも、ステロイドは体だけではなく精神面にまで副作用を引き起こします。しかも、安倍首相は長期間飲み続けていますからね。

C氏 腸の専門医の間では、難病患者の定点観測のサンプルとして、夜のニュースで安倍首相の映像チェックは欠かせないと言われていますね。

A氏 長期ステロイド服用の副作用は、頬が垂れるブルドック・フェイスとか、顔が丸くなるムーン・フェイスなど顔にも出ますからね。

-- 「兆候あり」ですかね。

A氏 大手新聞の首相動静欄を見ると、今年の2月26日から突然、安倍首相は歯医者通いを始めています。7、8月には計7回も通っています。とりわけ注目したのは、8月11日に衆院議員会館地下の歯医者に通ったものの、お国入りした翌12日に山口県下関市内の歯医者に飛び込んでいることです。取材すると、単なる虫歯治療ではなく、ステロイドの副作用との見方が強まっています。現実に首相側近は「最近の安倍首相の指示が緩くなっている」と明かしています。

 知り合いの医者は「歯茎が副作用の1つである感染症から歯周組織炎を起こして歯の土台がガタガタになっていることも考えられます」と、話していました。とすれば、集中力も欠けるようになり「指示が緩くなる」というのも、頷けますね。

B氏 側近も安倍首相の健康状態を完全に把握していない。

A氏 安倍首相本人も健康不安を払拭させたい、元気だとアピールしたいからでしょう。頻繁な外遊しかり、ゴルフしかり、です。しかし、一国の宰相のストレスは健康体だった福田赳夫元首相ですら「首相執務室に1人でいると天井が落ちてくるようなプレッシャーを感じる」と言うほど強いといいます。

C氏 ましてや安倍首相は完治不能の難病指定されている持病を抱えていますからね。

A氏 支持率が下落傾向に入り、売りのアベノミクスにも陰りがみえるなど炎症抑制剤をいくら飲んでもストレスから解放されるような状況はなく、ステロイド服用が安倍首相の体を蝕んでいるとみて的外れではない。つまり、安倍首相は時限爆弾を抱えているということになる。

 もう1つ、健康不安説を裏付ける話があります。昭恵夫人が最近、ある講演で「私は2度と公邸に入りたくない」と語ったのです。第1次安倍政権で退陣した際、病院通いのかたわら、公邸から慌ただしい引っ越しを余儀なくされた体験を思い出してのこと。夫の体調悪化で看病した揚げ句、荷作りの作業と精神的、肉体的な苦痛を嫌というほど味わったからでしょう。

B氏 健康不安は常に言われていたことですが、かなり悪いようですね。これからは私も要チェックで取材に当たります。

 

安倍首相の成果は外交、内政の双方で不満足

 

-- これまでの政権運営について、どう評価しますか。

A氏 外交ですが、安倍首相は12年12月に総理就任以降、なんと22回も外遊に出掛けています。しかし、安倍首相は外交そのものについて納得していない。隣国との関係がうまくいっていないからです。例えば、岸田文雄外相と中国の王毅外相がミャンマーの首都ネピドーで8月9日夜(日本時間8月10日未明)、初めて会談しました。岸田氏は「ゆっくりと長時間話した。今後の関係改善について意見交換した」と記者団に話しましたが、中身は全く違っているようです。

-- どういうことですか。

A氏 岸田・王会談の前の7月27日、親中派の福田康夫元首相が安倍首相のメッセージを持って訪中し、習近平主席と極秘会談をしました。中国側も日中の関係修復に動き出そうとした矢先、日本が離島の島名を発表しましたね。王氏はこのことに対する抗議を岸田氏にしたもようで、11月に北京で行われるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)での安倍首相と習主席の首脳会談実現は非常に難しくなったようです。

B氏 8月1日に政府が名称のない158の島に名前を付けたと公表したことですね。これは日本の領海を決める「基点」となる島で、沖縄県の尖閣諸島の5島も含まれていました。

C氏 せっかく、福田元首相が親書を持って関係改善に道筋をつけた矢先に、政府が水を差したということですね。

B氏 中国にしても韓国にしても、国内事情によって日本に対する強硬な姿勢がある。習主席は軍との対立や江沢民との勢力との確執など、共産党内部で自身の足場固めが急務。しかも、新疆ウイグル自治区やチベットなど民族紛争、湾岸都市部と内陸地方部との貧富格差など、問題を数多く抱えている。韓国の朴槿恵大統領に至っては、日本を叩けば支持率を維持できると思っているフシがある。

A氏 父親の晋太郎氏が外相時代の〝創造的外交〟は、シュルツ米国務長官と深い信頼関係を築いていながら、摩擦関係では強気で押したりしていたのと全く違う。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)1つ取ってみても、それは明らか。これは日米トップ同士の〝心の離反〟が見て取れて、双方が噛み合っていません。

B氏 私は昨年、米国に行く機会がありました。その際、保守系シンクタンクの関係者に取材しました。米国の政策に深くかかわっていた機関で、かつては日本研究も盛んでしたが、近年は日本を研究する研究員が激減していたのです。いわゆる〝日本パッシング〟で、米国が日本に対して関心がなくなってきていることを示しています。それを官邸が理解していないのが、とても問題だと感じています。

A氏 「強固」と言われてきた日米同盟関係も、変質しているからね。米国は没落して〝世界の警察官〟として振る舞えなくなり、日本も〝日出る国〟の勢いは最早、ありません。

-- しかし、日本のマーケットは米国に支えられています。

C氏 日経平均株価の終値が、官邸が一番気にするところとなっています。

A氏 ホント、安倍政権は支持率と株価ばかり気にしている。首相執務室に支持率と株価のグラフを置いて一喜一憂する首相なんて、私の長い記者歴でも初めてのことです(苦笑)。

 

アベノミクスとは何だったのか?

 

-- では、アベノミクスとは何だったのでしょうか。

A氏 株価ではなく実体経済を押し上げていく、しかも人口減少問題に真正面から取り組んだ新しい施策、政策転換があればまだしも、アベノミクスの成長戦略には目新しいものは皆無だ。

B氏 「第1の矢」は大胆な金融政策、「第2の矢」は機動的な財政政策。要は、日銀の金融緩和と大規模な公共事業。従来の高度成長期、人口増社会における政策と何も変わらないもので、「第3の矢」も成長戦略を掲げながら、中途半端な議論ばかりで何も進められていない。

A氏 ホワイトカラーエグゼンプション(残業代ゼロ政策)など、労働意欲が失せることばかり。1%の富裕層と財界がよければいいという施策にしか見えない。結局、砂上の楼閣で、このままでは行き詰まるでしょう。

B氏 4〜6月期のGDP(国内総生産)が年率換算で6・8%減でした。東日本大震災の11年1〜3月期に次ぐ落ち込みで、カンフル剤は見えない状態です。官邸は平静を装っていますが、相当ショックだったようです。

C氏 人口減少問題について言えば、安倍首相は頑張っているほうだ。野田聖子総務会長は「この問題に取り組んで20年。ようやく認められるようになってきた」と語っていた。主婦や子ども相手の政策は、これまでの自民党では受け入れられない政策だったからです。それを受け入れたのだから進歩でしょう。もう一歩踏み出すならば、野田氏の「民間に例えるならば、内閣府を人口減少ホールディングスにし、その下に各省庁を置く形に変える」というアイデアを活用すれば、アベノミクスは国内外から評価を得ると思います。

後編に続く)

(司会=本誌編集長・吉田浩)

 

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