政治・経済

サマータイムは「国民の健康」の視点から議論を

気候条件が変わる中、日本人の働き方はこのままでよいのかが問われる

気候条件が変わる中、日本人の働き方はこのままでよいのかが問われる

 日本の企業や学校の夏休みは、まだ夏場の気温が今より低かった頃を基準に設定されています。しかし、思い出してみてください。30年ほど前までは、気温が30℃を超える日というのは珍しかったのではないかと思います。

 今でも年間をとおした平均気温は当時とあまり変わらないかもしれませんが、夏場の暑さに関しては、間違いなく過酷になっています。軽井沢や八ヶ岳のような別荘地ですら、夏場は30℃超えが珍しくなくなってきました。これほどまでに以前と気候条件が変わってきたことを考慮すると、サマータイムの導入や休暇制度の変更は、当然検討されてしかるべきだと思うのです。

 サマータイムに関しては、以前からいわれているエネルギー効率うんぬんの話ではなく、「国民の健康を守る」という観点から議論を始めるべきです。

 夏バテを引き起こす1つの理由として、まず睡眠時間が短くなることが挙げられます。東京の場合は、6~8月は朝5時の段階で既に空は明るくなっていて、気温も暑いと感じるくらいまで上がることも多い。そんな時間に目覚めてしまうのは体に良いわけがありません。

 ですから、この期間ぐらいはサマータイムを導入して、せめて朝6時ぐらいに日が昇るように調整するべきではないでしょうか。国民の健康を守るためにも、多くの人が朝むだに早起きしてしまう状態を是正することが必要です。

 サマータイムを導入すると時間の切り替えが大変になるという意見もありますが、制度を導入したほとんどの先進国ではさまざまなメディアを通じてサマータイムとウインタータイムの開始日について周知することで、問題なくやっています。日本においてのみ、切り替えの労力が大きな社会的損失になるとも考えられません。

 高齢者を中心に混乱が起きるともいわれていますが、高齢者で働いている方々の割合はそう多くないと想定できますし、サマータイムで1時間程生活時間帯がずれたとしても、大きな影響はでないでしょう。

 日頃経済活動を行っている人々にとっても、切り替え日をきちんと意識していれば、さほどの労力は必要ありません。

サマータイム導入のメリット

 サマータイムに関連して、休暇制度の在り方についても述べたいと思います。

 現在は中学、高校、大学と、ほとんどの学校で7月の中旬から下旬にかけて期末試験が行われていますが、この最も暑い時期が試験勉強に適しているとは到底思えません。ですから、本気で9月入学というものを考えるべきではないでしょうか。

 9月入学を採用する理由として国際標準に合わせるという点もありますが、それ以上に夏の暑い時期に休めるというメリットのほうが大きいと思います。例えば米国の大学では5月下旬に卒業式が行われ、6~8月は休みになります。このように最も暑い期間を夏休みにしたほうが、生徒の健康上も学業の効率向上という点からも利にかなっています。

 熱中症対策がこれだけ叫ばれている中、学校の授業が7月下旬まで行われているのはもはや危険なことだという認識が必要です。とにかく肝心なのは、夏の暑さをいかに回避するかを、国として真剣に考えることなのです。

 企業もこれだけ暑ければ業務効率が落ちるので、大企業を中心に有給休暇の取得を厳しく義務付けるだけではなく、集中的に夏場に休みを取れるような制度を作っていくべきです。毎年7、8月には電力需要がピークに達しますが、この時期のオペレーションを各企業が見直すことで夏場の電力需要カットにつながります。

 夏に2~3週間休むのが普通のライフスタイルになれば、その分ほかの人々の雇用機会は広がるし、余暇が増えれば消費が増えることも予想されます。

 パリに行けば、レストランですら8月には休業するところがあるほどです。こうした欧州型の制度を日本でも導入することを検討するべきです。

 少子化の折、休みの取り方を工夫することは、ワークシェアリングの観点からも有効な方策となるでしょう。

 

夏野剛氏の記事はこちら

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る