政治・経済

 2015年中の日本郵政の株式上場に向け、主幹事証券会社選定が大詰めを迎えた。しかし、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の上場時期が棚上げされたままの見切り発車な上、国内主要証券の席が「1つ足りない」ことにも市場関係者は不透明感をつのらせている。

日本郵政上場に向けた主幹事の席をめぐる戦い

日本郵政

日本郵政の上場に際し多くの不安要素が指摘される

 日本郵政の2014年3月末時点の連結純資産は13兆3388億円。NTT(約11兆円)を上回り、トヨタ自動車(約15兆円)に迫る規模だ。政府保有株の売却としてはNTT以来の大型案件で、主幹事証券の数は10と過去最多となる。

 国は早ければ来年秋にも上場させる計画で、「(消費税10%引き上げが予定されている)来年10月に合わせ、景気のテコ入れをするのだろう」(外資系証券アナリスト)とみる。

 政府は22年までに4兆円の売却収入を見込む。売却収入は東日本大震災の復興財源の上積み枠に充てる。財務省の皮算用では00年のNTT株式の第6次売却収入の1・23兆円を根拠に、1回当たりの売却収入を1・3兆円とし、3年に1回放出して総額約4兆円という皮算用だ。

 問題は主幹事証券の選定。財務省は国内と外資系大手証券をそれぞれ4社で計8社、そしてインターネットや地方の中堅証券を2社選ぶとしている。大手証券は販売戦略など上場までの全体工程を統括し、国内と海外の需要を見ながら配分を決める「グローバルコーディネーター」と、計画どおり株式売却を達成するための引受団を運営するために投資家の需要などを調査する「ブックランナー」に分かれる。

 地方の中堅証券はグローバルコーディネーターが作成するエクイティ・ストーリーに沿って独自の販売網で新規顧客を開拓する「国内特定主幹事証券会社」となる。

 評定は財務省理財局次長と国有財産企画課長、政府出資室長の3人で行われるが、審査項目は日本郵政に関する調査や引受団の編成、売り出し日程の考え方のほか、株式の販売戦略、投資需要の見込み方、需要積み上げの方法など多岐にわたる。書類審査と口頭審査を合わせた総合評点で判断する。

 それぞれの主幹事に選定されれば上場に伴う巨額の手数料収入が期待できる。国内枠4つのうち、頭1つ出ているのが日本郵政の上場アドバイザーを務める野村証券、そして日本郵政従業員持株会の事務を受託する大和証券。残る2つの席をみずほ証券、SMBC日興証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の3社が争う構図だ。

 主幹事証券が決まった後、日本郵政は主幹事証券や監査法人の指導を受けながら上場申請の準備を進める。上場準備が整えば、主幹事証券が上場申請の2週間前までに上場日などを記載した上場申請エントリーシートを東京証券取引所に送信する。

 東証は事前に主幹事証券とすり合わせを行ってから受け付ける。これを受け、主幹事証券は上場ファイナンスと日程案を示し、これに合わせて東証は申請から上場承認まで約3カ月の審査スケジュール案を提示する。

 東証は「主幹事証券会社を決めるのは上場の入り口段階。その後、上場申請があってから承認までおおむね3カ月」という。順調に行けば、来年秋には上場できる。

日本郵政がNTTと似た構図とは

 ただ日本郵政の場合、従業員が非正規を含めると40万人に達し、郵便と全国約2万4千の郵便局、さらに超メガバンクと巨大生保を抱える「金融持ち株会社」という前例がない経営形態の上場という特異性を持つ。

 金融2社の株を全額保有する日本郵政は「金融持ち株会社」だ。両社の株を50%以上保有している間は金融持ち株会社として金融庁の規制を受け続ける。東証会長を務めた西室泰三社長は親子同時上場は断念したものの、「(金融2社の上場は)持ち株会社と時期を開けないでやりたい」と、ゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の早期上場の姿勢は変わっていない。

 ただ、郵便事業と郵便局を経営する日本郵便は郵便局が受け取る金融2社からの手数料収入でかろうじて黒字化している状況だ。金融2社が上場し、資本関係が薄れれば赤字転落は免れない。それだけではない。親会社の日本郵政自体が上場後に抜け殻化すれば郵政株への影響は避けられない。

 1985年に旧電電公社が民営化されNTTが発足。87年2月に東証1部に上場、4月に株価は史上最高値の318万円を付けた。しかし同年7月に225万円に暴落。乱高下を繰り返し、その後の放出計画は大きく狂った。

 当時の郵政省(現総務省)の政策では、NTTドコモとNTTデータはNTTと資本関係を完全に断つはずだった。が、今でもNTTが6割以上の株を保有する。稼ぎ頭の両社が離れれば経営が成り立たないからだ。日本郵政とゆうちょ銀、かんぽ生命の関係によく似ている。

 財務省は日本郵政の株価純資産倍率(PBR)を1倍として評価している。3分の2の株式をすべて売却すれば8兆6千億円規模の売却収入が国庫に入るとの試算もある。しかし、三菱UFJFGなどメガバンクの東京株式市場でのPBRは軒並み「1」を下回る。NTTも同様だ。

 日本郵政のPBR、OHRが示されないまま上場が認可されることはないが、いまだに示されていない。東京証券取引所会長だった西室氏がそのことを知らないはずはないのだが。

(文=ジャーナリスト/関谷 武)

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