文化・ライフ

坪田一男(つぼた・かずお)慶応義塾大学医学部教授。1955年東京都生まれ。慶応義塾大学医学部卒業後、日米の医師免許取得。米ハーバード大学にて角膜フェローシップ修了。角膜移植、ドライアイ、屈折矯正手術における世界的権威。再生角膜移植のほか、近視・乱視・遠視・老眼などの最先端の治療に取り組む。近年は研究領域を抗加齢医学=アンチエイジング医学に広げ精力的に活動。日本抗加齢医学会理事、日本再生医療学会理事など。著書に『老けるな!』(幻冬舎)、『長寿遺伝子を鍛える』(新潮社)、『ごきげんな人は10年長生きできる ポジティブ心理学入門』(文春新書)ほか多数。

 

ヨットの世界チャンプとマスターズ挑戦に向けトレーニング開始

手前が僕。日本で唯一、スナイプの世界チャンピオンを持つ、甲斐幸氏と共に

手前が僕。日本で唯一、スナイプの世界チャンピオンを持つ、甲斐幸氏と共に

 夏だ。夏と言えば、海である。

 僕は学生の頃、真冬のオフシーズン以外は毎日のように江ノ島に通ってヨットをやっていたこともあり、海を思い浮かべるだけでワクワクするほど海が大好きだ。とはいえ、ここ十数年はヨットに乗る機会もめっきり減っていた。ところが、そんな僕が、なんと2014年のマスターズのスナイプ級部門に出場することになった。しかも、1979年に日本人として初めてヨットの470級世界選手権大会で優勝し、今でも日本のヨット界を牽引するヨット界のスーパースター、甲斐幸さんとご一緒に、である。

 甲斐さんと言えば、僕が学生の頃から雲の上の存在だった。その甲斐さんに「坪田、一緒に闘わないか?」と声を掛けていただいたのだ。そんな日がくるとは夢にも思っていなかったし、世界チャンプと共にマスターズに挑戦するなどということが自分にできるのか、という不安や迷いがなかったわけではない。

 しかし、僕は出場を決めた。ブランクがあるとはいえ、若い頃に培った経験や技術を生かし、これまでの人生経験や、健康、医学の専門家としてのバックグラウンドを加えれば、「今だからこそできる」試合ができるのではないかと考えたからだ。その試合に憧れの甲斐さんと挑むことができるなんて、これほどありがたいことはないではないか。これはもう挑戦するしかないと、カラダの中からやる気と情熱が沸き上がってきた。

 今年4月には、さっそく江ノ島で新艇のお披露目と初練習も行った。その日は10㍍程度の風が吹いていて、練習中はかなり腹筋を使うことになり、本音を言えば結構大変だったのだが、久しぶりの海は本当に気持ちが良かった。毎日江ノ島の海でヨットをやっていた学生時代を思い出し、「やっぱり海はいいな」「ヨットはいいな」と素直に思った。

 そして、好きなヨットをこうしてやれていることの幸せを、しみじみと感じ、声を掛けてくださった甲斐さんをはじめ、支えてくれるみんなへの感謝の気持ちでいっぱいになった。

アンチエイジングにはチャレンジとトレーニング、幸せな仲間が大切だ

 近年、「幸せ」と健康や長寿の相関関係、因果関係を示す論文が次々に発表されている。11年には科学誌『Science』に「Happy PeopleLive Longer=幸せな人は長生きする」という総説が発表され、今や「幸せ」は運動や食事と同様、健康で長生きするための重要な要素として科学的に認められている。

 では、僕たちはどういう時に幸せを感じるのだろう。一般に年収が多いほうが幸せだと考えられがちだが、02年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマン博士が米国人45万人を対象に行った調査は意外なものだった。年収が多ければ多いほど「生活満足度」は上がるが、「幸福度」は年収7万5千㌦(日本円で約700万円)で頭打ちになるというのだ。

 また、日常生活の中で「幸せと感じられる時間」や「不機嫌な時間」がどれくらいあったかを調べた別の調査によれば、「幸せ」と最も大きな相関関係があったのは「睡眠」と「上司」だったそうだ。

 前述のカーネマン博士によれば、僕たち人間は他人との比較によって、たやすく「幸せ」を見誤る。そこで最近では、幸せを感じて健康で長生きするにはどうすればよいか、という科学的なアプローチも研究されている。その結果、朝起きた時に、楽しかったことや幸せだと感じる光景を思い浮かべたり、1日の終わりにその日あった「いいこと」を3つ書き留めるというのも、良い方法だということが分かってきた。

 さらに、「幸せは、友人の友人の友人」にまで感染するという研究報告もある。例えば、あなたが幸せなら、あなたの友達の友達、そのまた友達にも感染し、3人目の友人の幸福度は約6%もアップするのだそうだ。

 筋肉を鍛えるにはトレーニングが必要なように、幸せを感じるのにもトレーニングが大切だ。幸せな仲間と過ごすことや、新しいことに前向きにチャレンジすることも大切だろう。それが健康で長生きする確率を高めることにもつながるのだ。

 僕はこの夏、大好きな海で、幸せな仲間に囲まれて、ヨットの練習を始める。あなたもこの夏、心身のアンチエイジングを目指して、何かにチャレンジしてみてはいかがだろう。

★今月のテイクホームメッセージ★

 幸福度を高めるチャレンジやトレーニングを始めよう!

筆者の記事一覧はこちら

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

【特集】2019年注目企業30

 2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。 原点回帰で、顧客第一…

「超サポ愉快カンパニー」としてワクワクするビジネスサイクルを回す―アシスト

ITと建設機械、グリーンエネルギーの3本柱で地球環境問題解決に貢献する―Abalance

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年4月号
[特集]
日本の「食」最前線

  • ・総論 日本の「食」から世界の「食」へ 成長産業となった農水・食品産業
  • ・「食」の輸出1兆円を支えるジェトロの役割
  • ・全国で進むブランド化「食」から始まる地方創生
  • ・上海で見た日本の「食」の未来
  • ・海外進出した外食チェーン「成功」と「失敗」の分かれ目
  • ・日本人が知らない中国の「日本食ブーム」の真実
  • ・消費税引き上げで始まる「外食VS中食」最終戦争

[Special Interview]

 星野晃司(小田急電鉄社長)

 「未来を見据えた挑戦で日本一暮らしやすい沿線をつくる」

[NEWS REPORT]

◆中国リスクが顕在化 電機業界に再び漂い始めた暗雲

◆持続可能な水産業へ 魚はいつまで食べられるのか

◆CES 2019現地レポート 家電からテクノロジーへの主役交代が鮮明に

◆相次ぐトラブルで業績悪化 SUBARUの見えない明日

[総力特集]

 2019年注目企業30

ページ上部へ戻る