マネジメント

「丸亀製麺」トリドール社長とセルフうどん業態との出会い

 

 〝讃岐うどん専門〟をキャッチフレーズに今や、全国区の知名度を誇るまでに成長したのがトリドールの展開する「丸亀製麺」だ。

 同社の最大の強みは一番の来店動機につながる〝手作り出来立て〟にこだわっている点にある。セントラルキッチンを用いず各店舗で粉から製麺するという製造法は、景気低迷を背景に簡便化に特化しがちだった外食チェーンに一石を投じることとなり、外食の現状に不満を持っていた多くの顧客の取り込みに成功する。一方で、揚げ物等、顧客自らが好みで選べるトッピング商材が充実していることも購買意欲の喚起に一役買っている。

粟田貴也(あわた・たかや) 1961年神戸生まれ。神戸市立外国語大学中退後、学生時代のアルバイト経験から飲食の魅力に目覚め、85年、焼鳥店「トリドール3番館」創業。90年、トリドールコーポレーションを設立。95年、トリドールに組織変更。2000年、新業態「丸亀製麺加古川店」を開店し人気を博す。同業態は現在国内外で約900店を展開する。

粟田貴也(あわた・たかや)
1961年神戸生まれ。神戸市立外国語大学中退後、学生時代のアルバイト経験から飲食の魅力に目覚め、85年、焼鳥店「トリドール3番館」創業。90年、トリドールコーポレーションを設立。95年、トリドールに組織変更。2000年、新業態「丸亀製麺加古川店」を開店し人気を博す。同業態は現在国内外で約900店を展開する。

 「弊社は〝お客さまに喜んでいただきたい〟という思いを常に具現化してきた会社です。お客さまを捌くとか合理化を優先するのではなく、どうすれば、お客さまに来ていただけるかだけを考え続け形にしてきました。そういう意味では、手間暇かかることへのアレルギーはわれわれにはありません」とキッパリと述べるのは同社の粟田貴也社長。2000年の開業以来、「丸亀製麺」を短期間で急成長させた要因の一端を垣間見ることができる。

 セルフうどんチェーンとして台頭著しい同社だが、トリドールという社名からも分かるとおり、そもそもは「焼き鳥業態」を生業としてきた過去がある。

 粟田氏が、同社の前身であるトリドールコーポレーションを設立したのは1985年。焼き鳥居酒屋「とりどーる3番館」を兵庫県加古川に開業したのが同社のルーツだ。

 当時は焼き鳥業態も絶好調。粟田氏はこの業態を拡大していくことで上場を目論んでいたという。しかし、そこは起業家。その一方で、次代の成長エンジンとなる新業態の開発も常に念頭に置いていた。

 そんな粟田氏の脳裏を横切ったのが〝うどん〟。「なぜ香川のうどんだけが全国区の人気を誇っているのだろうか。そこに自分たちが参入すれば勝機があるのではないだろうか」という仮説を検証したいという思いに駆られ新業態に打って出た。

 主力商材は280円の自家製麺にこだわったうどんだが、ここに出来立てのトッピング商材を組み合わせることで、顧客満足度の向上と客単価の引き上げを同時に実現した。

 「うどんの単品単価を上げてしまうとお客さまのバリエーションの幅を狭めてしまうこととなり、同時に楽しみさえも奪ってしまうことになります」(粟田氏)

 焼き鳥業態からスタートした同社ではあるが、今や「丸亀製麺」が売り上げの9割を叩きだす。現在、国内店舗は約800店。国内1千店舗体制も視野に入る。

 「今後、出店立地として強化していかなければならないのは高い集客力が見込める商業施設になります。従来、弊社の新規出店はロードサイドを優先してきたこともあり、商業施設へのアプローチが十分できていませんでした。うどん1つとっても競合はたくさんいます。その中から弊社を選んでいただけるよう熱心に提案をしていきたい」(同)

 

「丸亀製麺」という有効資産の活用と次代の成長のカギ

 

 「丸亀製麺」の絶好調を背景に1千店舗体制に向け鼻息が荒かった粟田氏だが、ここへきて若干考え方にも変化が現れている。

 「これまでは、店舗の数を追い掛ける状況が続いていましたが、今後は『丸亀製麺』を中心に、並行して他業態も開発し2千店、3千店体制に向けた基盤作りに注力していきます」(同)

 海外展開も1つの選択肢。11年4月に出店したハワイ1号店は、常に行列のできる店として現地に根付いている。以降、タイ・ロシア・韓国・台湾等にも次々に出店、国内消費市場の減少が避けられない中で、新規マーケットの開拓にも熱心だ。

 とはいえ、粟田氏は「国内でも、まだまだ、ご来店いただいたことのないお客さまも多い」という現状認識も強い。そこで8月1日から同社初となるテレビCMの全国初展開に打って出た。

20140923_Tokushu_2_2 「これまでCMに注力してこなかったのは、弊社の醸し出してきた製麺所の風情感とタレントの起用はミスマッチになるとの考え方からです。とはいえ、潜在顧客の掘り起こしにはテレビCMがやはり強い」(同)

 イメージキャラクターにタレントの武井壮を起用した新メニュー「肉盛りうどん」のCM効果は上々で、当初の狙いは達成した模様だ。

 前述したが、粟田氏は新規業態の開発にも積極的にチャレンジしている。今年、初出店したハワイアンコナコーヒーとパンケーキの店舗は想定以上の人気を博している。

 「これからはグループ経営の時代です。『丸亀製麺』という会社の有効資産を活用して新業態を開発し次の成長につなげることが今後の課題です」(同)

 「丸亀製麺」にフォーカスしたことで、業容拡大のチャンスをつかんだトリドールの業態開発に注目していきたい。

 (文=本誌・大和賢治 写真=佐藤元樹)

 

【トリドール】関連記事一覧はこちら

【マネジメント】の記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年11月号
[特集] AIが知りたい!
  • ・IT未開の地に挑戦 産業構造をAIが変える!
  • ・AIは物理世界がまだ苦手 汎用ロボットの作り方
  • ・データ分析の起点は「何があれば経営に役立つか」
  • ・AI活用事例
  • ・ワトソン君は業務システムと連携する
  • ・米国で加熱する人工知能ブーム AIは21世紀最大のゲームチェンジャーか
[Special Interview]

 小川啓之(コマツ社長)

 「“経験知”に勝るものはない」コマツ新社長が語る未来

[NEWS REPORT]

◆SBIが島根銀行への出資の先に見据える「第4メガバンク構想」

◆家電同士がデータを共有 クックパッドが描くキッチンの未来

◆新薬の薬価がたった60万円! 日の丸創薬ベンチャーは意気消沈

◆1で久々の優勝を果たすもホンダの4輪部門は五里霧中

[総力特集]

 人材育成企業21

 SBIホールディングス/サイボウズ/メルカリ/ティーケーピー/シニアライフクリエイト/イセ食品/センチュリオン/タカミヤ/中央建設/アドバンテック/合格の天使/明泉学園/オカフーズ

ページ上部へ戻る