政治・経済

 ベンチャー企業の育成はアベノミクスの成長戦略の柱の1つであり、「開業率を5%から10%に」という目標と共に、「ベンチャー」という言葉が取り上げられることが多くなった。

 ところが、どんなベンチャーを育成拡大したいのかはあまり語られない。グーグルのようなグローバル・チャンピオンを目指すベンチャーもある一方で、街のちょっとしたラーメン屋もベンチャーである(労働者を1人でも雇用していれば、前述の開業率にはカウントされる)。ただ、成長戦略内で、併せて「イノベーション」や「世界に通用する」というフレーズが時折現れていることを考えると、やはりグーグルやアップル、クアルコムクラスのベンチャー、少なくとも時価総額1千億円超級のグローバル・メガ・ベンチャーの育成拡大を期待しているものと思われる。

 このクラスを狙うベンチャーは世界トップ級の技術力、企画力を基盤とし、教育レベルも世界トップ級の人材によって生み出されるケースがほとんどだ。だから日本でもそうした人材の起業数を増やしていく必要がある。

 しかし、残念ながら、今の日本ではそうした層の起業数は十分ではない。東大生にいたっては、2013年度文系学部卒業生の就職実績トップ3をメガバンクが占めているという絶望的な保守性である。グローバル・メガ・ベンチャーは、確率の産物であり、打率の差はあるにしても、数が出てこないと話にならない。米国には、世界チャンピオンになろうとトライする高学歴エリートの数が圧倒的に多いのである。米国と比較した資金調達額やM&Aの数を問題視する人もいるが、私たちの実体験では、良いものさえ出てくれば、今どき日本のベンチャーでも世界中から資金調達は可能だ。出てこないベンチャーをどうサポートするか考えてもあまり意味がない。

 こうした状況を打破するには、社会で共有される価値観を「大企業に頑張って入り、安定した人生を送る」よりも「自分の人生は、自ら切り拓いていく」に変えていく必要がある。そこで政府がすべきは、教育、特にエリート教育を根っこから変えていくことで、時間をかけてやっていくしかない。

 この手の世界を席巻する本格技術やビジネスコンセプトは、大学や研究機関とそれを取り巻く開かれた空間から生まれてくるケースがほとんどである。産官学の境を越えて人とアイデアが自由に行き来し、虎視眈々とビジネス化して世界制覇を狙う連中、それも自立したプロフェッショナルなマインドを持った超エリートたちによるオープンイノベーション空間を作ることが必須だ。

 しかし残念ながら日本の大学、研究機関、そして一流企業の多くは閉鎖型の組織システムであり、終身年功型のマインドセットで働く本籍「サラリーマン」が大半。この手の閉じた生態系を変えていくのも時間がかかるが、こうした組織体の基本OSに相当する部分の大改革なくして、メガ・ベンチャーが継続的に生まれる未来は絶対にやってこない。

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