マネジメント

経営の極意① 予算思考と投資思考

 前回の続きで、稼ぐ人たちのお金の使い方について考えてみたい。

 一般的なお金の使い方には、予算思考と投資思考があると私は考えている。

 予算思考とは、お金を使う際に、まず財布の中身=現金がどれくらいあるかを気にする思考であり、投資思考とは、財布の中身よりも「何にお金を使うか」に重点を置く思考である。

 財布の中身を絶えず気にしながらお金を使う予算思考は、堅実といっていい。財布の中身以上にはお金を使わないので使い過ぎはない。むしろ余らせて、貯まる思考である。

 逆に、投資思考では財布の中身を全く考慮に入れないから、ときとして使い過ぎになったり、すっからかんになる可能性もある。思い切ったお金の使い方である。

 どちらの思考が良い悪いというのではない。

 だが、行き過ぎた予算思考のように、何もかもみみっちく、ちまちまと財布の中身を心配しながらお金を使っていては、臆病になってかえってチャンスを逃すことにもなりかねないことは確かだ。私のクライアントのとてつもなく稼ぐ人々は、どちらかといえば投資思考の人、金遣いに関して積極的な人間が多い。

 稼ぐ人に共通する傾向として、もう1つある。「投資勘定」という考えだ。

経営の極意② お金の使い方にはメリハリが必要だ

 これはどういう行為かと言えば、1円たりともムダには使わない姿勢である。

 遊びでは豪快にお金を使う人たちなのだが、ことビジネスの関係するお金については、徹底的にムダを省く。コストカットできるところがあれば、どんな項目であれ、徹底してコストカットする。

 ビジネスで使うお金はすべて投資である。だから生きたお金でなくてはならない。コストカットできるものはすべてカットする。だが、ここにお金を掛けるべきだと判断すれば、思い切ってお金を投じていくのである。これが投資勘定だ。要はお金の使い方のメリハリである。

 私は広島市に事務所を出すとき、年収数億円のクライアントの1人から2つのアドバイスを受けた。1つは一等地に借りなさい、もう1つは接客スペースだけにお金を掛けなさいというものだった。

 一等地ならお客が出入りしやすいし、そのお客と会う部屋はお金をかける価値がある。私は素直な性質だから、その通りにした。そして、このアドバイスはまことに的確であったと、時間がたてばたつほど実感している。

経営の極意③ 論語は重要だが算盤も重要だ

 もう1つ、お金にならないモノは直ちにカットしなさいと言われた。社長室なんていらないよ、と。確かに社長室を設けて、豪華に飾ってみたところで、それによって1円だって稼げない。

 人間に対してもそうだし、経費のすべても、それが生きているかどうか、売り上げに結び付くかが問題なのだ。投資勘定では、そういうことが常に問われる。

 『論語と算盤』を著した渋沢栄一翁は日本資本主義の父と言われ、わが国の発展に大きく寄与した方だ。同書の論語=倫理であり、算盤=利益である。利益が出たらそれは独占せず社会で共有しようという考えだ。

 ただ、これを単純に受けて鵜呑みにしたら失敗する。

 あるカリスマと呼ばれた料理人が独立し、算盤勘定を無視して内装に金を掛けた。また、「人を大事にしたい」と社会保険に全部入り、福利厚生に金を掛けた。だが経営に才がなく、2年で倒産した。

 いくら立派な考えを持っていても、算盤勘定=投資勘定がなければうまくいかない。メリハリのないお金の使い方は破綻するのである。

[今号の流儀]

事業が失敗したらお金を生かせないし、社会貢献もできない。

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