国際

貯蓄好きは中国人も同じだが…

 日本人は貯蓄好きで有名であり、1人当たりの平均で1千万円以上の金融資産を保有しているといわれている。しかし、日本人はその貯蓄を効率よく運用することについてそれほど得意とはいえない。特に、多くの日本人は株式投資になぜか偏見を持っているようだ。

 例えば、サラリーマンは昼休みに同僚に「銀行に行ってくる」、「郵便局に行ってくる」と伝えることはあっても、「証券会社に行ってくる」とはいわない。標準的な日本人なら金が貯まった場合、ゼロ金利が続いていても銀行に預金する。

 では、中国人の貯蓄行動はどのようなものなのだろうか。恐らく貯蓄好きについては日本人と同じであろう。ただし、中国人は貯めたお金をできることならば、銀行に預金しない。なぜならば、中国では預金金利は往々にして物価上昇率を下回り実質金利がマイナスになったりするからである。

 まず、中国人は住宅の頭金ぐらいのお金が貯まった場合、間違いなく家を買う。そして、住宅の頭金ほど貯まっていないが、そこそこまとまったお金が貯まった場合、ゴールドや翡翠などの貴金属や宝石類に投資する。さらに、日本円で数万円から十数万円まで貯まった場合、金融機関が販売する「理財商品」と呼ばれる金融商品に投資する。「理財商品」とは投資信託の金融商品であり、銀行の定期預金より利回りは高い。2014年8月現在、「理財商品」の利回りの加重平均は5・2%といわれている。

日本人は収益性より安全性

 日本人が一生懸命貯めたお金を銀行に預金するというのは、金融資産の安全性を一番重視している表れである。それに対して、中国人は安全性や流動性よりも収益性を重視する傾向が強い。それは中国人の国民性に由来するものとまでは断言できないが、経済学的な解釈として社会保障制度の整備が遅れているため、人々は将来の生活を心配して当座の消費を抑え貯蓄を増やしている。しかし、将来の生活を担保するならば、安全性を無視して収益性を追求するというのはいささか理解しがたい解釈である。

 実は、中国の一般家庭は将来の生活よりも、目下のインフレーションからの影響をいつも心配している。インフレが再燃すれば、家計の金融資産はその分目減りする。政府が公表している13年のインフレ率(消費者物価指数)は2・6%だった。一方、商業銀行の1年ものの定期預金の金利は3・25〜3・3%である。こうしてみれば、金利はプラスであり、特に心配はいらないと思われる。

 しかし、一般家庭が感じている物価上昇率は、政府が公表しているインフレ率から大きく乖離している。中国の物価の中で食品関連の価格上昇は一番顕著であるが、政府が公表するインフレ率は食品関連価格のウエイトが低く抑えられているため、過小評価されている可能性がある。ちなみにインフレ率が過小評価されていることで実質GDP伸び率が過大評価されていると考えられる。

 総じていえば、公式統計が示すほど中国経済は成長しておらず、政府が公表している統計よりも一般家庭が感じているインフレ率のほうが高い。そこで一般家庭は限られた貯蓄で自己防衛策としてハイリスク・ハイリターンの投資を行っている。

中国人の派手な消費行動の背景

 中国は1人当たりGDPが7千ドル未満の中進国である。だが、中国人の派手な消費行動をみれば、まるで世界一豊かな国のようだ。中国の5千年の歴史のなかで孔子や孟子といった賢人は生活が倹約でなければならないとの教えをたくさん残してくれた。しかし、その子孫たちはまるで先祖の教えを無視して豪勢な生活を追い求める。中国では腹八分目が健康の秘訣とよくいわれるが、共産党幹部や企業経営者などの富裕層は毎日のように暴飲暴食する。その結果、糖尿や脂肪肝といった成人病の発症率が急騰しているといわれている。

 中国人は派手な買い物をする傾向が強いが、それは単なる見栄だけではない。中国人にとっては、自らの所持品を持ってそのステータスを誇示することが重要なのである。例えば、同じビジネスでも2つ星ホテルの喫茶コーナーではその商談がまとまらないかもしれないが、5つ星ホテルのラウンジに場所を変えれば、すぐさま商談が成立することがよくある。

 中国の諺には、「人不可貌象」(人は見た目によらず)という言い方があるが、同時に「人靠衣装、馬靠鞍」(美しい人に良い服装が必要、良い馬には良い鞍が不可欠)という言い方もある。競争の激しい中国社会では、実力だけでは不十分であり、そのステータスを示すモノが必要である。これこそ中国人の派手な消費行動をもたらす社会的背景である。

 むろん、いかなる社会でも、貯蓄と消費のバランスが重要である。収益性の追求に頼った貯蓄行動では、バブルの崩壊で社会不安が起きる恐れがある。一方、消費は家計の実力以内に抑える必要がある。今の中国社会では、貯蓄も消費もやや常軌を逸した感じが強い。

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

2015年の中国リスクと新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第35回)

「3不社会」韓国の「3放世代」

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポート――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年7月号
[特集]
社会課題で儲ける!

  • ・総論 グローバリズムとどう折り合いをつけるのか
  • ・なぜ、よしもとは社会課題と向き合うのか 大﨑 洋(吉本興業共同代表取締役CEO)
  • ・茶葉から茶殻までバリューチェーン全体で価値を創造する 笹谷秀光(伊藤園顧問)
  • ・持続可能な経営は、持続可能な地域が支えている キリンホールディングス
  • ・人生100年時代の健康問題に取り組む ファンケル
  • ・世の中に貢献する中で商売を広げていく ヤマト運輸
  • ・社会課題を解決する金融モデルは、懐かしい過去に学ぶべき 吉澤保幸 場所文化フォーラム名誉理事

[Special Interview]

 芳井敬一(大和ハウス工業社長)

 創業のDNAに立ち戻り、オーナーの教えを伝承・実践

[NEWS REPORT]

◆史上最高益でも原価低減 豊田章男の「原点回帰」

◆成長戦略再考を迫られた富士通の苦境

◆市場規模はバブル前に逆戻り 規模より知恵を問われるビール商戦

◆7兆円M&Aを仕掛けた武田薬品の野望とリスク

[特集2]

 オフィス革命 仕事場を変える、働き方が変わる

ページ上部へ戻る