マネジメント

小野文明

小野文明(おの・ふみあき)
1959年生まれ。長崎県出身。82年東洋大学法学部卒業、同年ロンシャン入社。その後教育研修会社に勤務。94年タイアップ入社。96年テクノブレーン入社。97年同社取締役。99年テスコ・テクノブレーン取締役。2002年日本マニュファクチャリングサービス(旧NMS)社長就任。04年NMSホールディングス社長就任、社長就任。07年10月ジャスダック上場(現大阪証券取引所)。現在は海外事業展開に積極的に自ら動く。

受託生産サービスで人材のサプライチェーンを構築

 製造アウトソーシングに特化して、着実に業績を伸ばし続けている日本マニュファクチャリングサービス(nms)。受託生産サービス(EMS)に機動性の高い人材サービスを組み合わせているのが特徴だ。

 日本国内に留まらず、中国、ASEANにも拠点を構え、グローバル展開する日本の製造業にとって最適な「モノづくり」の形を実現。現在は日本に人材ビジネス17拠点とEMS工場7拠点、中国に人材ビジネス6拠点とEMS工場2拠点、ベトナムに人材ビジネス2拠点、マレーシアにEMS工場3拠点を構えている。

 グローバル展開を支えているのは、同社が抱える質の高い人材だ。もともとは製造分野を中心とした請負事業からスタートしたが、社長の小野文明氏は、単純な請負や製造派遣が本当に顧客企業や労働者のためになるのか、疑問を抱くようになった。

 「いわゆる下請けの発想ではなく、人材のサプライチェーンを作ろうと思いました」と、同氏は語る。

 世界各地に工場を持ち、為替変動も考慮した上で、一番コストが低い地域で生産して儲けるのがEMSのビジネスモデルだ。日本企業の多くは製造コストの低減を目的にEMSを利用するが、現地の安い労働力を使うだけではいずれ人件費の高騰などで行き詰まってしまう。そこで小野氏が得たのが「モノだけでなく人も動かす」という発想である。

 「例えば、日本人が中国で工場を立ち上げて、そこで教育した優秀な人材が今度はASEANや欧州に行って工場の立ち上げや製造ラインの請負を手掛けていく。つまり、人のネットワークとEMSが連動すれば、人材が育つ上にお客さまも発注しやすくなると考えたのです。仮に人件費が上がっても、それ以上に生産性が高まるのでトータルコストは上がりません。われわれは今、人とモノが両輪で回るような『neo EMS』という業態を作ろうとしています」

質の高い人材育成が特徴

 こうした発想のキッカケとなったのは、2000年代初めに行った中国進出だ。当時、岩手県の自社工場で家庭用ゲーム機器の修理を請け負っていたが、顧客の要望に応えて業務範囲を拡大。だが、技術者を国内で確保しようとしたところ集まらず、中国の有名大学で機械工学や電子工学を学んだ新卒の技術者を正規のワーキングビザで呼びよせた。前例がないため手続きなどで手こずる場面もあったが、何とか扉をこじ開けることに成功する。

 「外国人の技術者派遣の道を最初に切り拓いたのはわれわれなんです」と、小野氏は言う。

 同じく外国人技術者派遣を行う競合も出てきたが、人手を稼ぐためにやみくもに質の低い労働力をかき集めるケースも多かったという。一方、nmsでは技術教育だけでなく、日本語や日本文化なども学ばせて、質の高い人材育成を行ったため、顧客からの評判も高かった。

 「一過性の利益を追い求めることはしません。しっかりした人材を長期にわたって育成、雇用することによって、何年かたてば大きな差が出るのです」と、小野氏は語る。日本国内での中国人技術派遣に続き、中国での人材派遣も開始。海外展開への足掛かりを築いていった。

優れた人材を加え、新たな受託生産サービスの完成形へ

 日本では一般的となった「構内製造請負サービス」だが、海外ではまだこうした業態が存在しない地域も多い。そんな中、nmsは2010年にベトナムにおいて初の事業ライセンスを取得。さらに労働コストが上昇している中国でも、労務派遣業界の基準や法律の検討を行う労務派遣専門委員会のメンバーに、nmsの子会社が日系企業として唯一選任されるなど、存在感を高めている。

 一方で、顧客企業の開発・設計、製造、修理までワンストップで供給する体制を構築するためにM&Aも進めている。家庭用ゲーム機器で培ってきたリペア技術に加え、10年には志摩電子を子会社化、11年にはTKRを子会社化して基板実装の技術を確保。さらに13年には日立MEから、14年にはパナソニックから電源事業を譲り受け、事業基盤の強化に取り組む。

 「設計開発段階から参加できるうえに、電源、基板、修理技術まですべてを保有しているEMS企業は他にありません。ここに優れた人材が加われば、大手が競合でも戦えるようになります。今はその準備を進めているところです」と、小野氏は意気込む。「neo EMS」の完成形に向けて、挑戦は続く。

(文=本誌編集長・吉田浩 写真=西畑孝則)

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年2月号
[第44回 経済界大賞]
大賞 北尾吉孝(SBIホールディングス社長)

  • ・[優秀経営者賞]貝沼由久(ミネベアミツミ会長兼社長)、星野晃司(小田急電鉄社長)、分林保弘(日本M&Aセンター会長)、河野貴輝(ティーケーピー社長)
  • ・[地方創生賞]笹原晶博(北海道銀行頭取)
  • ・[ベンチャー経営者賞]松下 剛(MTG社長)
  • ・[グローバルチャレンジ賞]猪塚 武(キリロム工科大学学長)

[Special Interview]

 北尾吉孝(SBIホールディングス社長)

 企業生態系を構築し20年で一大金融グループに

[NEWS REPORT]

◆上場前に大規模システムダウン ソフトバンクの明日はどうなる?

◆ゴーン逮捕から1カ月 起こりうる日産「最悪のシナリオ」

◆LINEとのアライアンスに託す 苦境に立つみずほFGの一手

[特集]せとうち復興

 被災地は観光でよみがえる

ページ上部へ戻る