マネジメント

宇野康秀・U‒NEXT社長プロフィール

宇野康秀

宇野康秀(うの・やすひで)1963年生まれ。大阪府出身。88年明治学院大学法学部卒業後、リクルートコスモス入社。89年にインテリジェンスを設立、同社を順調に成長させた後、98年に父親の跡を継ぎ大阪有線放送社(現USEN)社長に就任。ITブームに乗り事業を拡大させるも、2010年には業績不振によりグループ内の各事業を整理・売却。その後USENの代表取締役社長を辞任し、U−NEXT社長の職に就く。

 

宇野康秀氏が「一番つらかった」と振り返る時期

 

 2000年代初頭のITバブル全盛期には、「ITベンチャーの兄貴分」として、世間から注目を浴びていた宇野康秀氏。若くして人材サービス会社インテリジェンスを立ち上げて成功に導いた後、USEN社長として、無料動画配信サービス「Gyao(ギャオ)」、映画配給会社のギャガ、カラオケ通信、インターネット接続事業など、さまざまな領域を手掛けてきた。

 しかし、08年秋にリーマンショックが直撃。その後は財務状態が悪化し、グループ内の事業を整理せざるを得なくなり、宇野氏もUSEN社長の座から退くこととなった。特に事業をゼロから立ち上げ、USENの連結子会社にしていたインテリジェンスの売却を決断した時は「一番つらかった」と、同氏は振り返る。

 そんな中、将来的に大きなポテンシャルがあると信じていた有料動画配信「U-NEXT(ユーネクスト)」については、宇野氏が自ら引き継ぐことを決断。私財をも投じて、再出発を遂げることになった。

 現在は、有料コンテンツ配信と、低価格のモバイル接続サービス「U-mobile(ユーモバイル)」などを軸に展開している。U-NEXTの会員数はここに来て飛躍的な伸びを見せている。

 一度は表舞台から姿を消した宇野氏だが、U-NEXTの事業が軌道に乗り始めた今、再び存在感を高めつつある。現状を登山に例えて、「いったん下山して再び登頂を目指している」と語る同氏。その過程で何を考えてきたのか、これから何を目指すのか、本人を直撃した。

 

宇野康秀氏が描くU‒NEXTの方向性

 

インフラとコンテンツで成長の条件が整ったU-NEXT

mobile

「スマホにもLCCが誕生!」のキャッチコピーで低料金を打ち出したU‒mobile

-- U-NEXTの現状について教えてください。

宇野 立ち上げの頃から順調に伸びてはいましたが、昨年あたりから加速的に伸び始めました。

-- USEN時代にGyaOを手掛けていた頃と比べて、動画配信の市場環境はどう変わりましたか。

宇野 GyaOは基本的に無料配信で、広告収入を柱としたビジネスモデルでした。USENで手掛けていた頃は、動画広告というものが世の中にまだ広まっておらず、どういう売り方をしていくのか試行錯誤の段階でした。

 その過渡期のタイミングで、USENの財務改善で事業をすべて整理することになり、無料サービスはヤフーさんに譲渡して、途中で立ち上げた有料サービスをU-NEXTで引き継ぎました。

 今、Gyaoの事業はヤフーさんの下でうまくいっているようなので、あのままわれわれが手掛けていても、事業として成立していたのではないかと思います。

-- 参入が早過ぎたということでしょうか。

宇野 自分たちが市場を創っていかなくてはいけないという部分で、生みの苦しみはありました。

 ネットワークの環境そのものが当時は脆弱でしたし、モバイル回線も非常にスピードが遅かった。コンテンツをご提供いただく方々にも既存の事業が潰されるのではないかといった認識が強く、敵対視されるようなこともありました。

 そうした意識を徐々に変えていってもらうよう取り組み、今の状況になったのです。

 以前は10年落ちのコンテンツなどしか供給してもらえませんでしたが、今ではDVD発売より早く配信できるものも出てきました。

 もう1つ、成長が加速した要因はデバイスの進化です。テレビにセットトップボックスをつないでいて視聴していた時代から比べると、タブレットやスマートフォンの登場で大きく変わったと思います。

-- 会員数の目標は。

宇野 どこまでも伸ばしたいと思いますが、まずは100万人を目指していきます。

インフラとコンテンツをU-NEXTの両輪に

-- 競合との差別化をどう打ち出そうと考えていますか。

宇野 例えば、レンタルビデオでツタヤが圧倒的なシェアを取ったのは、やはり店舗の工夫や、ユーザーとのコミュニケーションなどを、きちんと行っていたからです。われわれもどんな作品をどう並べるか、料金の設定をどう工夫するか、ユーザーとの接点をどう広げていくか、解約をどうやって減らすかといった、細かい努力を積み重ねるしかないと思っています。

 今は有料動画配信のプレーヤーが増えている時期ですが、数年後には3社くらいに集約されるのではないでしょうか。

-- 最初からコンテンツビジネスを主軸にする考えだったのでしょうか。

宇野 2000年代初頭にブロードバンドが登場してインターネット網が高速化していく中で、さまざまなコンテンツの配信が可能な状況が生まれました。

 そういう意味で、インフラとコンテンツは両輪と考えていました。コンテンツとネットワークという2つのテーマを常に両にらみで追いかけながら、努力をしてきたつもりです。U-NEXTも通信ネットワーク事業とコンテンツ事業の両輪で展開していて、映像配信のユーザーを増やしながら、一方でインフラコストをどんどん安くしていきたいと考えています。

-- 既存の通信キャリアと対抗していくスタンスなのでしょうか。

宇野 われわれがU-mobileで掲げている「スマホにもLCCが誕生」というキャッチコピーのような立ち位置と思っていただければ良いかと思います。飛行機で言えば、大手航空会社が飛ばない路線を飛んだり、過剰なサービスを減らして料金を安くしたりといったリクエストに応えていくイメージです。つまり、大手キャリアとガチンコで張り合うのではなく、ユーザーの選択肢を増やすということです。

 

復活した宇野康秀氏が目指す先は?

 

退路を断ち、危機感を持って再出発

-- 10年にUSENの事業を整理して再出発したわけですが、当時を振り返って。

宇野 USENグループとしてかなり大きな組織を手掛けていた頃からすると、いったん登頂を断念して、もう1回登りなおすぞという気持ちです。登りなおすための十分な体力は付いたし、今は充実感があります。下山をしていくプロセスでは正直つらいこともありましたが、自分の中で糧になったと思っています。

 結果的にはそれぞれの事業が良い嫁ぎ先を見つけて、皆幸せそうにやっているので良かったかなと。ただ、やはり事業を整理していく中で、社員にもつらい思いをさせなければならなかったことが一番きつかったですね。

-- インテリジェンスを創業した時と、下山してから再び登るのでは気持ちの面でも違うところがあるのではないですか。

宇野 まぁ、歳も違いますからね(笑)。インテリジェンス創業は25歳の時でしたから。

-- U-NEXTには私財をかなり投じて自ら事業を継続したわけですが、経営から身を引く選択肢もあったかと思います。あらためて、今の道を選んだ動機は何だったのでしょう。

宇野 その時は自分が経営者を続けるかどうかということより、どの事業をどう残してどう整理すべきかだけを考えていました。

 各事業の売却などを進めましたが、U-NEXTでやっていた事業については解決策がなく、銀行からも撤退するようと言われたのですが、これは世の中に対して新しい進化をもたらす事業だという信念を持っていたし、社員たちもそういう想いでかかわってきてくれていたので、潰すという考えはありませんでした。

 退路を断って危機感を持って再出発したことが、現在順調にいっている1つの要因かなとも思います。

-- 今後の仕掛けとして考えていることは。

宇野 映像配信サービスについては認知が広がっているので、普通に頑張っていけばユーザーは増えていくと思っています。

 その一方で、例えばイオンシネマさんと協力して、われわれのポイントを映画館の割引クーポンとして使えるようにするなど、他企業とのアライアンスにも力を入れています。

 さらに、コンテンツのジャンル拡大にも取り組んでいて、USENと連携して「スマホでUSEN」という音楽ラジオ放送700チャンネルを聞き放題にするサービスや、電子書籍の取り扱いなども始めました。映像以外にもコンテンツの領域を広げて、デジタルコンテンツのプラットフォームのような立ち位置を取りたいと考えています。

ベンチャーに成功の法則はない

宇野康秀-- IPOについてはどう考えていますか。

宇野 なるべく近いうちにIPOしたいとは考えています。

-- アベノミクスで景気は回復していますが、ITブームの時と比べて今の市場環境をどうとらえていますか。

宇野 波の起こり方は似ているかもしれませんが、当時の波の高さはおかしいくらい高かったので、熱気は比べものにならないですね。

-- ITブームを経て生き残った企業は非常に少ないと思いますが、生き残るための秘訣があるとすればどんなことでしょうか。

宇野 う〜ん、そうですね。何を持って生き残ったとするかもあると思いますが、私も見る人によっては生き残っていないことになっているかもしれないですし(笑)。結局は何を大事にして、何を残すかを決めることではないでしょうか。

-- これから起業する人たちへのアドバイスを。

宇野 自分も今はベンチャーをやっている立場なので、偉そうなことは言えない気もしますが、自分の後輩たちがうまくいったり失敗したりするのを数々見てきた中で、あまり成功の法則というのはないのかなと思います。

 自分のスタイルでやればいいし、それが新たな経営スタイルになったほうが面白い気がします。こんな会社が世の中に出てきたんだと、われわれがびっくりするような経営スタイルが生まれてきてほしいという期待はありますね。

動画配信で工夫するのは「作品との出会い方」

 
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