政治・経済

 安倍晋三首相の健康問題を鋭く追及した前回の勢いそのまま、北朝鮮の拉致問題の真相、そして今秋注目の首長選挙の行方を各氏に占ってもらった。そこから見えてくる政局模様は、高支持率を維持していた安倍政権の姿からは考えられない驚くべきものだ。一方、1強多弱と呼ばれる野党にも容赦ない。果たして、この国の行方はどうなるのか。“危な過ぎる匿名座談会”がここで完結する。

覆面座談会出席者

A氏 元大手マスコミ政治部記者。30年以上、永田町を取材。自民党を中心に幅広い取材で定評がある。

B氏 元代議士秘書から政治ジャーナリストに転身。秘書ネットワークを駆使して与野党に食い込む。

C氏 週刊誌記者からフリーに。事件や芸能などの取材もこなす。約8年前から永田町取材にシフト。

延期された首相の〝電撃訪朝〟

-- 安倍政権の今後を占う上で、欠かせないのは北朝鮮の拉致問題です。

A氏 官邸筋からの情報では、菅義偉官房長官は会議の度に「拉致は必ず1年で結果を出せ」と檄を飛ばしているという。最初は皆、来年の総裁選のためだと勝手に考えていたようです。ところが、安倍首相の様子を見るにつけ、体調が1年持たないのではないか、と思うようになったといいます。つまり、安倍首相が体調悪化で退陣をも想定、せめて拉致問題の解決を退陣の手土産にするためだと、周囲は密かに感じ始めているというのです。

B氏 政府は8月14日、北朝鮮による拉致被害者に支給している給付金について、帰国が実現していない認定拉致被害者12人分の予算を計上する方針を固め、15年度予算概算要求に関連経費を盛り込みました。12人が戻ってくるかどうか現時点で分かりませんが、予算をつけたのです。その他、拉致被害者以外、例えば日本人妻などが帰ってきたときの年金の手当とか、非常に細かく手厚く予算の手当てをしています。安倍政権は本当に真剣に進展させる気構えを見せていると感じる一方、何か性急に事を構えているような違和感を持っていましたが、そのような話なら合点がいきます。

A氏 解決に向けて期待していますが、私の取材によると、安倍首相も菅官房長官も真っ青状態だそうです。リストの作成は進んでいるようですが、その中身は期待を大きく下回るものだと聞いています。本来、官邸は早ければ8月末に電撃訪朝を狙っていました。次世代の党のアントニオ猪木参院議員が企画し、30、31日に平壌で開催の「インターナショナル・プロレスリング・フェスティバルin平壌」に時を合わせて、電撃訪朝、金正恩総書記との会談計画が水面下で練られていたのです。電撃会談の後に、安倍首相と金正恩総書記が並んでプロレス観戦をするのはどうか、という提案までも北朝鮮側からあったようです。しかし、安倍首相が意気込んでいた早期訪朝のめどは、消えたともっぱらです。

C氏 リストは7月半ば、極秘裏に官邸に届けられたそうですね。しかし、約380人のリストの中に特定失踪者の名前は入っていなかった、と。それで再調査を要求したという話もあります。

地方選連敗なら自民崩壊も

-- これまで順風満帆だと見られていた安倍政権ですが、今後はかなり厳しいものとなりそうですね。

B氏 7月13日の滋賀県知事選で、自公推薦の元経産官僚の小鑓隆史氏が、元民主党衆院議員の三日月大造氏に1万3076票差で敗れました。いわゆる〝滋賀ショック〟です。今後、10月9日告示、26日投開票の福島県知事選、10月30日告示、11月16日に投開票の沖縄県知事選も自民党にとって相当厳しいものとなりそうです。

A氏 これからは、文字通り〈茨の道〉になります。

C氏 福島は、元岩手県宮古市長の熊坂義裕氏が無所属で立候補すると表明。その後、日銀元福島支店長の鉢村健氏も立候補を発表。自民党福島県連が鉢村氏を推していますが、実は自民党内部で足並みが揃っていません。というのも、福島の自民党県議は28人で最大会派を形勢していますが、内部は15対13で分裂状態です。なかなかまとまらない中、元会津若松市長で福島第4支部長の菅家一郎衆院議員が主導し、鉢村氏を推したと聞いています。しかし、党本部側は、考え方が違っています。民主、社民推薦の佐藤雄平知事が出馬した前回、相乗りして敗北を回避しました。そのことを踏まえ、相乗りも視野に入れて候補者を探すべきというスタンスなのです。

A氏 そこまで党本部と県連の歩調が揃っていないと、自民党にとって福島県知事選はかなり厳しいものになるね。

C氏 早くも鉢村氏では勝てないとの見方が強まっています。今回、佐藤知事は不出馬を表明し、内堀雅雄副知事の動向が注目されています。自民党は新執行部体制の下、党本部主導で進める予定ですが、難しいでしょう。一方、脱原発の立場を鮮明にした熊坂氏に野党勢力が結集すれば勝機は十分あると見られ、そうなれば国政に大きな影響があると見ています。

B氏 滋賀県知事選に続いて、脱原発知事の誕生となれば、国政への影響力は大きいですね。

A氏 さらに、沖縄県知事選も自民党にとっては苦戦は必至だ。

B氏 自民党本部が正式に再選出馬を表明した仲井真弘多知事の推薦を決定しました。米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の辺野古移設に反対する立場で出馬する翁長雄志那覇市長との戦いですが、仲井真氏にとって情勢は厳しいですね。

A氏 原発反対、辺野古移設反対となれば、安倍政権にとって衝撃は計り知れない。

C氏 自民党は、辺野古移転を承認した仲井真氏を「日本国最大の功労者」と位置付けています。だから、どんな逆風で負けがはっきりしていたとしても、推薦する立場だと聞いています。もちろん、このまま黙って負け戦に突入するとは思えませんが、今の沖縄の県民感情を見ると、翁長氏がかなり優位に立っていますね。

A氏 しかも、7月25日には元郵政民営化・防災担当相の下地幹郎前衆院議員も出馬を表明したね。下地氏が当選するとは思えないが、出てきた背景は何かあるのだろうか。

C氏 自民党サイドからは、翁長票切り崩しのための〝ウラ共闘〟だとの話が漏れ伝わっています。辺野古移設反対派も一枚岩ではない。そこにつけ込む隙がある、との戦略のようです。

B氏 ところで、下地氏のメリットって何? 勝てる要素がないのに、今さら自民党と組む意味が分かりにくい。

C氏 それ、聞きます?(笑)。 ウラが取れていないのではっきりは言えないけど、言わずもがな、という感じでしょうか。急に石破茂幹事長(当時)と接近したのは、そのためだと囁かれています。

A氏 仮に、自民党が首長選で連敗したら来年の統一地方選は大変なことになりかねない。凪状態が続く永田町にとって代わって地方から自民党崩壊の波が押し寄せる事態になりますね。

B氏 今年立て続けに起きている地方議員の不祥事などの多くは自民党系議員で、有権者は白けています。自民党はかなりの苦戦が予想されますね。

橋下・小沢のタッグが実現か?

-- しかし、そこで問題なのが、野党です。民主党政権崩壊後、野党再編が急務と言われていますが、その兆しがなかなか見えてきません。

A氏 自民党と対峙するには、旗色を鮮明にして「どちらがいいのか」と国民に二択を迫る構図を作らなければ、小選挙区制では戦えない。突き詰めれば、集団的自衛権や安全保障問題に行き着くのだが、悲しいことに民主党そのものが崩壊に近づくことになる。

C氏 野党結集、野党再編を考えると、結局私は、生活の党の小沢一郎代表の手腕に頼らざるを得なくなるのではないかと思っています。

B氏 しかし、民主党には、8割以上が〝嫌・小沢〟、〝小沢アレルギー〟が強い。海江田万里代表が、党内をまとめ切れるとは到底思えないし、なかなか難しい状況にあるのではないでしょうか。

C氏 もちろん、年内とか来年前半とかでドラスティックに変化を期待するのは無理だろうけど、結局彼の剛腕が必要になるのではないか。

A氏 本当に、誰もいない。今の日本維新の会と結いの党との合併に向けた話も、あれだけ〝小規模連合〟であるにもかかわらず、右往左往している。見ていて悲しくなりますね。そう考えると、剛腕頼みになるしかないでしょう。その点、橋下徹・大阪市長と小沢氏が結び付く可能性はあります。根底では仲が悪いわけではありませんからね。その意味では、小沢氏が野党再編のキーマンと言えるのではないでしょうか。

C氏 結構、小沢氏は精力的に動いています。民主党ラインでは、海江田代表や輿石東参院副議長らと連絡を取り合い、維新では橋下氏や幹部にとどまらず、若手たちとも会食して意見交換などしています。

A氏 とはいえ、民主党が変わらないと大きな野党再編に行き着かない。党内のリベラル勢力と、右派の〝戦犯6人衆(野田佳彦前首相、岡田克也元副総理、玄葉光一郎元外相、前原誠司元外相、枝野幸男元官房長官、安住淳元財務相)〟らがすっきり分裂しなければ始まらない。ところが、民主党には今なお、約200億円の資金が貯め込まれている。これがある限り、なかなか分裂はしない。

B氏 カネがあることが不幸って、日本の政治史をめくっても例がない(苦笑)。

C氏 まだまだ時間がかかりそうですが、野党は打倒自民党に向け目覚めてほしいですね。

-- ありがとうございました。

(司会=本誌編集長・吉田浩)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

リーマンショック後の2010年にスタートした柳前社長時代は大幅な合理化や新興国戦略を推進。経営改革に道をつけ、17年度は過去最高益を更新した。日髙新社長は、事業企画・経営企画や2輪事業の経験と豊富な海外経験を買われてバトンを受けた。売上高の約9割を海外が占めるヤマハ発動機のトップとして、改革路線を継続しつつ成…

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年11月号
[特集]
大丈夫? 御社の危機管理

  • ・サイバーセキュリティ後進国日本の個人情報流出事件簿
  • ・「リアル」「バーチャル」双方で企業を守るセコムとアルソック
  • ・南海トラフ地震、首都直下型地震は、今そこにある危機
  • ・「いつ来るか分からない」では済まされない──中小企業の事業継続計画
  • ・黒部市に本社機能の一部を移転したBCPともう一つの狙い(YKKグループ)
  • ・高まる危機管理広報の重要性 平時の対応がカギを握る

[Special Interview]

 大谷裕明(YKK社長)

 「企業の姿勢や行動が危機対策以上の備えになる」

[NEWS REPORT]

◆胆振東部地震で分かった観光立国ニッポンの課題

◆M&Aでさらなる成長を期すルネサスの勢いは本物か

◆トヨタは2割増、スズキは撤退 中国自動車市場の明暗

◆このままでは2月に資金ショート 崖っぷち大塚家具「再生のシナリオ」

[特集2]

 利益を伸ばす健康経営

ページ上部へ戻る