マネジメント

稲盛和夫

稲盛和夫(いなもり・かずお)
1932年生まれ。鹿児島県出身。55年鹿児島大学工学部を卒業後、京都の碍子メーカーである松風工業に就職。59年資本金300万円で京都セラミック株式会社(現京セラ)を設立し、社長、会長を経て、97年から名誉会長。84年、第二電電企画株式会社を設立し会長に就任。2000年DDI(第二電電)、KDD、IDOの合併によりKDDI株式会社を設立、名誉会長に就任。01年6月より最高顧問。10年より、日本航空(JAL)会長に就任。代表取締役会長を経て、13年より名誉会長となる。

 京セラを世界に冠たる一流企業に育て上げ、第二電電(現KDDI)の設立、経営難に陥った日本航空(JAL)の再生など、さまざまな偉業を成し遂げてきた稲盛和夫氏。言わずと知れた日本を代表するカリスマ経営者である。

 稲盛氏が若き日から一貫して唱え続けてきたことが、「志の高さ」「善き行いをすること」「慈悲の心」といった、人間としての生きざまや心の在り方の重要性だ。JAL再建に成功した後、稲盛氏は本誌のインタビューでこう語った。

 「私は単純に、リーダーが組織を引っ張っていく上での物事の判断基準は、人間として何が正しいかという一点だと考えています。打算を捨て、自分に都合がいいとか悪いとかではなく、時にはそれが自分自身や会社に不利益をもたらしたとしても、正しいことを貫いていくことが、立派なリーダーになるためには必要なのです」(本誌2013年1月22日号)。

 稲盛氏は京セラ時代、サイバネット工業、ヤシカ、三田工業といった、経営不振に陥った企業の再生に成功したことでも知られている。ビジネスの観点からの冷徹な計算があったのは確かだが、決断の基軸となったのは「利他の心」。善の循環を生み出すことが経営の王道だという信念だ。

 後述するヤシカの救済合併の時も、JALの再建を引き受けた時も、最初は勝算が何もない状態で臨んだという稲盛氏。困難な道に挑み、結果を残した同氏が残してきた言葉を振り返ってみよう。

「本当の親切とは、後に引けない状態にこちらを追いこんでやってあげること」(1983年6月28日号より)

 京セラ社長時代にも、経営難に陥った企業の再生を手掛けてきた稲盛氏。その根底には、単なる合理主義ではなく、「慈悲の心」があることを以前から言及していた。1983年、中堅カメラメーカーのヤシカを救済合併した際のインタビューに、その哲学を垣間見ることができる。(聞き手は本誌主幹の故・佐藤正忠)

稲盛和夫-- 京セラは今度、ヤシカというちょっと〝不美人〟だけど、いい嫁さんをもらいましたね。この合併のキッカケは何だったんですか。

稲盛 最初はヤシカの遠藤良三社長が訪ねて来られて、1つご支援願えないかということだったんです。日商岩井が筆頭株主ですが、貸している金もたくさんあって、日商自身も少し持て余していたようです。それで日商岩井の株を肩代わりしてほしいという話でした。頼まれた以上、何とかしなければいかんのかな、と思いましたが、しかし全くの異業種ですからね。取りあえず、信州にある岡谷の工場と東京本社を見せてもらったんです。

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