テクノロジー

地方を苦しめるエネルギーの高騰

 

 日本経済と一口に言っても、その様相は決して「一色」ではなく、業種・業態、さらには地域によって「まだら模様」を成している。

 円安の恩恵を受けた業種がある一方で、円安に苦しむ業種もある。また、地方経済は概して少子高齢化・人口減少が進み、極めて厳しい状況に追い込まれている。先の内閣改造で地方創生担当大臣が生まれたのも、事態の深刻さの裏返しと見ることができるだろう。

 しかも現在、アベノミクスの円安誘導でエネルギー価格が高騰し、地方に暮らす人たちや経済を圧迫している。

 そもそも、地方に暮らす世帯では、生活費に占めるエネルギー代の比率が大都市の世帯に比べてかなり大きい。理由のひとつは、地方における平均所得の水準が大都市よりも低いことだが、地方の場合、日々の移動手段として自動車への依存度が高い。それも世帯ごとのエネルギー消費を押し上げる大きな要因となっている。

 さらに、地方の経済を支える農業・水産業にしても、エネルギー代の高騰は痛手でしかない。要するに、アベノミクスは今のところ、地方の暮らしや経済を利するどころか、むしろ悪化させており、このままでは地方と大都市の経済格差は拡大するばかりと言えるのだ。

 しかも、日本の大都市での出生率--とりわけ、東京の出生率は非常に低く、かつ、仕事を求め、地方から東京へと流れる若年労働力の動きに歯止めがかけられていない。

 結果、日本の少子化・人口減少がさらに進むという、負のスパイラルが回り続けている。

 

再生可能エネルギーがなぜ地域の活性化につながるのか

 

 このような負のスパイラルを一気に断ち切る起死回生の一手を見いだすのは難しく、そのような「魔法の杖」は存在しないかもしれない。

 ただし、「再生可能エネルギーによる地域活性化」は、少なくとも現状打開の一助にはなるはずだ。

 実際、再生可能エネルギーの資源は、地方における自然資源そのものでもあり、再生可能エネルギー利用の進展は、地域における自然資源開発にも連なっていく。

 したがって、地方において再生可能エネルギーの事業化を進めれば、新たな雇用・所得の創出や、地方の持続可能性の向上につながると言えるのである。

 例えば、日本各地の住民が支払っているエネルギー代--つまりは、電気代・ガス代・ガソリン代など--を合計するとかなり大きな額になる。実際、福島県の総計だけでも、年間約2千億円に上り、これは、同県における第1次産業の(東日本大震災前の)総売上高に匹敵する。

 そうした巨費の支払い先は、直接的には日本の電力会社やガス会社、石油会社だが、化石燃料はほぼ100%海外に依存している。つまり、「化石燃料で日本のエネルギー需要を賄う」という方式を取り続ける限り、日本国民が支払ったエネルギー代の大半は、最終的には海外に流出することになるわけだ。

 これに対し、地域の自然資源でエネルギー需要を賄うとすればどうだろうか。これにより、日本国民が支払った巨額のエネルギー代が海外に流出することはなく、大半が日本に残り、自然資源からエネルギーを創出した各地域に還元される。また、その資金は地域の再生可能エネルギー事業のさらなる発展にも振り向けられるのである。

 この経済循環の分かりやすい例として、「木質バイオマス事業」が挙げられる。これは、バイオマス発電の燃料として、これまで使われずに放置されてきた山林の木材を活用するというものだ。この事業により、木材資源の有効活用が進み、その過程で新たな雇用や所得が生まれる。ひいては、林業・山林の再生にも寄与することになるのである。

 

再生可能エネルギー利用の本当の意義とは?

 

 以上に述べたとおり、地方で再生可能エネルギー事業を推進することは、海外に流出していた日本のエネルギー代を、地域経済循環のための投資へと転換することにつながる。

 またそれは、国が定める「再生可能エネルギー特措法」の趣旨そのものでもある。

 同法の第1条には、その趣旨が次のように明記されている。

 「この法律は、エネルギー源としての再生可能エネルギー源を利用することが、内外の経済的社会的環境に応じたエネルギーの安定的かつ適切な供給の確保及びエネルギーの供給に係る環境への負荷の低減を図る上で重要となっていることに鑑み、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関し、その価格、期間等について特別の措置を講ずることにより、電気についてエネルギー源としての再生可能エネルギー源の利用を促進し、もってわが国の国際競争力の強化及びわが国産業の振興、地域の活性化その他国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」

 この目的に照らせば、再生可能エネルギーで発電したり、自動車を走らせたり、CO2の削減を果たしたりすれば、それでいいというわけではない。

 産業の振興や地域の活性化につなげてこそ、再生可能エネルギー利用を推進する本来的な意義が生まれると言えるのである。

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

電力業界のイノベーション

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

[連載] エネルギーフォーカス

日本は再生エネルギーで世界トップとなる決断を

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年1月号
[特集]
平成の事件簿

  • ・[イトマン事件]闇勢力に銀行が食い荒らされた戦後最大の経済事件
  • ・[ダイエー、産業再生機構入り]一代で栄枯盛衰を体現した日本の流通王・中内 功の信念
  • ・[ライブドアショック]一大社会現象を起こしたホリエモンの功罪
  • ・[日本航空経営破綻]親方日の丸航空会社の破綻と再生の物語

[Special Interview]

 高橋和夫(東京急行電鉄社長)

 「100周年に向けて、オンリーワン企業の強みを磨き続ける」

[NEWS REPORT]

◆かつてのライバル対決 明暗分けたパナとソニー

◆経営陣に強い危機感 富士通が異例の構造改革断行

◆売上高1兆円が見えた ミネベアミツミがユーシンを統合

◆前門の貿易戦争、後門の技術革新 好決算でも喜べない自動車各社

[特集2]経営に生かすAI

 「人工知能は『お弟子さん』
日常生活が作品になるということ」
落合陽一(筑波大学准教授)

ページ上部へ戻る