マネジメント

2025年に働き方はどう変わるか

 『ワーク・シフト』(リンダ・グラットン著/プレジデント社)が面白い。著者のリンダ・グラットンさんは、英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりだが、本書で伝えていることは、「2025年に働き方がどう変わるか」「ワーク・シフトするか」という「働き方の未来図」だ。

 本書を書くきっかけは、ある日の息子の言葉にある。当時17歳の長男が、「ぼくは、ジャーナリストになりたい」と、また2歳年下の次男も「ぼくは、医者になろうかな」と言ったのだ。だがその時、「働き方」というテーマに詳しいはずの彼女が、未来の職業に関しては、息子たちにアドバイスできることはほとんどないことに気付いたのである。

 同じ頃、未来の仕事の形態に関して意見を求められることが多くなった。ビジネススクールで1、2を争う優秀な男子学生は、こう尋ねた。

 「家庭で父親として過ごす時間をもっと増やすには、どうすればいいのでしょうか?」

 ほかにも、次のような問いを投げ掛ける学生が多かった。

 「どこで働けば、いちばん稼げるのか?」

 「未来に備えて、どういった能力を磨けばいいのか?」

 「どのようなキャリアの道筋を描けばいいのか?」

 本書は、こうした難問への女史からの渾身の回答である。

求められるのはゼネラリストではなく「価値を生むスペシャリスト」

 大きく分けて3つ、働き方をシフトしないと、生きていけないと、リンダ女史は言う。

 第1のシフトは、「『ゼネラリスト』から『連続スペシャリスト』へ」

 第2は、「『孤独な競争』から『協力して起こすイノベーション』へ」

 第3は、「『大量消費』から『情熱を傾けられる経験』へ」

 第1のシフトの意味は、これからは広く浅い知識を持つゼネラリストは要らないということだ。専門のスペシャリストにならないと、仕事がない、という時代になるのだ。

 それも、価値を生み出すことができ、希少性があり、真似されにくい分野でないと、今後は勝てないという。

 第2の「協力して起こすイノベーションの時代」とは、ひとりだけで挑戦して勝つよりも、志を同じくする同志を作って協力して勝つということだ。ITの発達で優秀な仲間を見つけ、人と協力して革命を起こす、というような働き方ができる時代になるということである。

 この本の中で私が特に興味を持ったのは、第3のシフトの「情熱を傾けられる経験へ」という部分だ。

スペシャリストとして満足のいく経験を

 これが実は一番難しいと、リンダさんは言う。

 つまり、自分が社会人、あるいはビジネスマンをしてきた中で、仕事に情熱を傾けられ、満足をした経験がない人は、今後、どんな仕事をすればいいか、選択に迷ってしまうというのである。

 だから、やりたいことを職業にしたほうが良いというのだが、やりたいことを職業にしろと言われて、それを選択できる人が何人いるだろうか。

 この本の中に1つヒントがあった。仕事に対する愛情の核、ベースになるものというのは、1つはやりがい、プラス満足のいく経験をして初めて、仕事への愛情が持てるようになる。つまり、やりたい仕事を見つけようと思ったら、満足のいく経験がないとならない、ということである。

 では、どんな経験をすればそれができるのか。

 弊社のスタッフのF君が良いことを言っていた。「満足のいく経験」とは、お客さまが涙して喜んでくださったとか、そういう経験ではないか、と。これが正解かもしれない。ともあれ、皆さんの未来の働き方やライフプランに、本書を生かしてほしいと思う。

 [今号の流儀]

あなたにとって【満足のいく経験】とは何ですか?

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

「PCのかかりつけ医」として100年企業への基盤構築を進める―黒木英隆(メディエイター社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

南谷真鈴

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年1月号
[特集] 新しい街は懐かしい
  • ・「街の記憶」で未来をリノベーション
  • ・日本橋が「空を取り戻す」水辺と路地がつながる街へ
  • ・水辺はエンタメの宝庫だ 大阪が目指す観光客1300万人
  • ・街の誇りを取り戻せ 名古屋・堀川復活プロジェクト
  • ・なぜ水辺に都市が栄えるのか
  • ・2020以降は海と川がさらに面白くなる
  • ・「住む」と「働く」両方できるが求められている(たまプラーザ)
  • ・「土徳」が育む一流の田舎(南砺市)
  • ・音楽ファンが集う街づくり
[Special Interview]

 辻 慎吾(森ビル社長)

 東京が世界で勝ち抜くために必要なこと

[NEWS REPORT]

◆飛びたくても飛べないスペースジェットの未来

◆エンタメが街を彩る 地方創生に挑むポニーキャニオン

◆問題噴出のコンビニをドラッグストアが抜き去る日

◆始まった自動車世界再編 日本メーカーはどう動く?

[特集2]

 経済界福岡支局開設35周年記念企画

 拓く!九州 財界トップが語る2030年のかたち

ページ上部へ戻る