政治・経済

茨城県での県内ロケ最多の566点興行収入10億円が4つも

 映画やテレビドラマなどのロケ隊を誘致し、撮影活動を支援する取り組みが茨城県で再び、活況を呈している。県下の自治体が支援した作品数が2013年度で566点と過去最多を記録、14年度に入っても高水準を維持している。官民がロケ隊を積極的に受け入れ、作品づくりを強力に支援する態勢が全県的に整っている点が最大の理由だ。過去12年間の経済波及効果は54・3億円に達した。

坂野家住宅(常総市)

時代劇のロケ・スポットとしてよく登場する坂野家住宅(常総市)

 茨城県観光物産課によると、13年度に県内でロケがあった作品566点は映画が69、テレビドラマが120で、残りはCMやプロモーションビデオ。前年度より170点も増え、44%増となった。

 ロケに使われた日数は延べ1085日に及び、市民ボランティアがエキストラとして延べ1万5千人も出演、地域ぐるみで映画づくりに協力するケースが増えてきた。

 13年公開の邦画で興行収入10億円以上の作品が24あるが、「清州会議」、「図書館戦争」など4作品が県内で撮影された。大作を通じ茨城の豊かな自然や歴史的な建造物が露出され、茨城への好感度を高める効果は無視できない。

 映画やテレビドラマの撮影隊を積極的に誘致し、県のイメージアップや観光客の増加、地域の活性化につなげようと、県がロケ支援の窓口組織「いばらきフィルムコミッション(FC)推進室」を設けたのが02年10月。3年間で活動は軌道に乗り、県内撮影の作品数が05年度に300点を突破した。

 その後も順調に増え、09年度までの4年間の作品数が年平均で356点。全国一のロケ王国と言われるようになった。だが、その勢いも金融危機後の景気後退と東日本大震災、福島原発事故の影響で減退し、10年度と11年度に大きく下降してしまった。

 ロケ誘致活動が13年度になって一気に活気を取り戻したのは、(1)震災からの復興が進み、風評被害でロケ地を西日本に求めていた映像業界の関心が東日本に移ってきたこと(2)アベノミクスの進展で映像業界の製作意欲が高まってきたこと--などのほか、受け入れ地の支援態勢が充実してきた事情が挙げられる。

茨城県はワンストップでロケ支援「ロケの街・常総」が浸透

 同県には現在、25のFC団体がある。各団体は「茨城県フィルムコミッション等協議会」に加盟しており、情報交換を通じてロケ地情報の共有化を進めている。後藤久FC推進室長は「こうした全県レベルの支援態勢が誘致活動に威力を発揮する」と話す。

 ロケ地の相談や案内、撮影に伴う許認可手続きの協力、宿泊・飲食情報の提供、エキストラの手配、地元民への調整--これらがFCの具体的な仕事だが、「ワンストップサービスが茨城の一番の特色」と後藤室長は強調する。

 関係者がロケ支援活動で期待する点は大きく言って2つある。第1は経済効果だ。

 ロケ隊が支払う宿泊費や弁当代、機材レンタル料などが撮影地に落ちるが、県全体の投下額は13年度で3・7億円に上る。作品に誘われて訪れる観光客の2次消費を含めると、13年度の波及効果は5・5億円になるという。

 第2は地域興しである。

 映像製作者に愛され頻繁にロケ地として選ばれるのが県南部、千姫ゆかりの常総市だ。最近は「ロケの街・常総」の名が、とみに広がる。

 都心から1時間ちょっとと近い上に、映像製作者をひき付ける材料が豊富にある。電柱のない林道や杉並木が300メートルも続く参道、趣のある古民家、古い木造校舎、情緒ある河川敷︱︱どれもが絵になる。時代劇によく登場するのが、国指定の重要文化財である豪農屋敷「坂野家住宅」や古刹の安楽寺、弘経寺などだ。これらは隣のつくばみらい市の時代劇用スタジオ「ワープステーション江戸」と連動して使われる場合が多い。

 「当市で撮影される映像作品は年100点を優に超す」と話すのは、常総市FC推進室の土井義行室長。ロケの相談や問い合わせが1日に数件あり、撮影完了まで4人のFCスタッフがすべて応対する。

 同市を訪れる撮影隊は年間で延べ1万人以上に及び、宿泊や飲食、施設使用に3千万〜4千万円も落としていく。人口6万3千人の街にとって、ロケ隊が元気付ける地域活性化効果は予想以上に大きい。

 スクリーンツーリズムというのがある。映画の撮影地を巡る観光ツアーのことで、リピーター確保を狙いに自治体が熱を入れ出した。茨城県でも14年公開の映画「永遠の0(ゼロ)」を記念してロケ地ツアーを企画、4万人近い観光客を動員している。

 「ロケが増加しても観光客は増えない」と土井室長は言うが、努力次第で客は十分、増えるのではないか。

 

【地域が変えるニッポン】の記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

家族葬のファミーユは家族や親族など故人の近親者だけで施設を貸し切って行う「家族葬」のパイオニアだ。創業者・高見信光氏は異端児と言われながらも旧態依然とした業界を変えてきた。その思いに共感し、異業種のリクルートから転じて社長を引き継いだ中道康彰氏も業界の常識を打ち破るため奮闘している。文=榎本正義(『経済界』2…

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年10月号
[特集] 進撃のスタートアップ
  • ・スタートアップ・エコシステムの活性化
  • ・[スパイバー]2万5千円のTシャツは完売 実用化が迫った人工クモの糸
  • ・[Rhelixa]エピゲノム関連の研究・開発で人類の役に立つ
  • ・[チャレナジー]台風発電でエジソンになる ビジネス展開は「島」から
  • ・[エイシング]エッジで動く超軽量AIでリアルタイムに予測制御
  • ・[キャディ]製造業に調達革命! 町工場は赤字から脱出へ
  • ・[Clear]目指すは日本酒産業のリーディングカンパニー
  • ・[空]「値付け」の悩みを解決するホテル業界待望のサービス
  • ・宇宙ビジネスに民間の力 地球観測衛星やロボット開発
  • ・71歳で環境スタートアップを立ち上げた「プロ経営者」
[Special Interview]

 荻田敏宏(ホテルオークラ社長)

 「The Okura Tokyo」をショーケースに海外展開を進めていく

[NEWS REPORT]

◆戴正呉会長兼社長を直撃! なぜ、シャープは復活できたのか?

◆アスクル創業社長を退陣させた筆頭株主・ヤフーの焦り

◆サービス開始から3カ月で撤退 セブンペイ事件の背景にあるもの

◆絶滅危惧種ウナギの危機 イオンが挑むトレーサビリティ

[特集2]

 富裕層は知っている

・富裕層の最大の使い道は商品ではなく次代への投資

・シンガポールからケイマン諸島まで 資産フライトはここまで進化した

・年間授業料100万円超は当たり前 教育投資はローリスクハイリターン

・最先端の人間ドックは究極のリスクマネジメント

・家事代行サービスで家族との時間を有効活用

ページ上部へ戻る