マネジメント

 銀行はよく、関連会社や融資先の企業に銀行員を「出向」させます。言うまでもなく、銀行員の出向とは、籍を銀行に置いたまま、銀行員が他の企業で働くことを指し、業務上の指示命令権は出向先の企業に移管されますが、出向者の給与は籍のある銀行から支払われます。

銀行員の「出向・転籍」が多いワケ

 ではなぜ、銀行は銀行員を出向させるのでしょうか。

 第一の理由は、銀行員の働き場所の確保です。銀行には、関連会社が数多くありますが、その背後には、事業の多角化でグループ収益を増やすという目的のほかに、銀行員の働き場所を確保するというねらいもあります。ですから、銀行内での使いどころが乏しくなった40代のころから、銀行員は関連会社によく出向させられるのです。

銀行員の出向受け入れ時の留意点

 一方、銀行員が融資先の企業に出向するケースもあります。この場合、融資を受けた企業が、付き合いのある銀行の支店長から「出向を受け入れてもらえませんか」と打診され、それを受け入れる格好となります。このとき、銀行サイドが、出向先の具体的な部門・部署を特定せずに銀行員の受け入れを打診してきたならば、目的は銀行員の働き場所の確保にあると言えるでしょう。ただし、銀行から、財務部門長、あるいは経理部門長として銀行員を出向させたいと要請された場合には、銀行サイドの主眼は、「財務・経理の立場から、融資先の経営を立て直すこと」にあると考えるべきです。

 前述したとおり、銀行からの出向者の給与を支払うのは、あくまでも銀行です。したがって、出向者は銀行側の指示・意思を重視します。そのような人を、財務・経理部門のトップに据えた場合、会社の内部事情がすべて銀行側に筒抜けになることを覚悟しなければなりません。

 それでも、「銀行から派遣された財務部門長(あるいは、経理部門長)に社内のウミをすべて出してもらい、経営を立て直すきっかけにする」との覚悟が経営サイドにあるのなら、出向の受け入れも一策でしょう。ただし、その覚悟がないのであれば、出向受け入れの是非は慎重に判断すべきでしょう。

 なお、業績の良い会社など、銀行が関係を深めたい企業に対して銀行員を出向させるケースもまれにあります。そのような場合は、銀行からの出向者を受け入れてもよいでしょう。また、銀行からの出向を受け入れると、その銀行からしか融資が受けられなくなるようなこともありません。さまざまな銀行と満遍なく付き合うことの必要性を、どの銀行も理解しているからです。

銀行員の転籍打診とどう向き合うか

 ときには、銀行からの転籍の打診があったり、出向している銀行員を転籍させてほしいとの要請を受けたりする場合があるでしょう。

 言うまでもなく、転籍とは、籍の移転を意味し、転籍者の給与は、その人を雇用した企業が支払います。ですから、銀行とその元行員との関係は気にしなくてもいいことになります。ただし、その元行員が、あなたの会社に本当に貢献してくれるかどうかはすぐには判断できません。ですから、少なくとも、元銀行員で仕事ができそうだからと、初めから役付や役員として受け入れるのは避けたほうが無難と言えます。

 もし、あなたが何人もの人を採用してきた経営者であれば、採用面接時の印象と、実際に働かせてみた後の印象がガラリと変わった経験が少なからずあるはずです。過去の経歴・採用時の印象がすこぶる良かったにもかかわらず、実際に働かせてみるとあまり役に立たない--そんなケースは決して珍しくなく、それは当然、元銀行員にも当てはまります。したがって、元銀行員であっても、一般社員として入社させ、どこまで仕事ができるかを見定めるべきです。実際、企業経営のことをよく分かっていない銀行員は少なくありません。その意味でも、初めから過度の期待をかけるのは禁物なのです。

 また、元銀行員に資金繰りや銀行対応を任せようとする会社は多いはずです。確かに、元銀行員は、銀行が何を考えているかがよく分かるため、銀行への対応を任せるには適切な人材です。ですが、銀行員は決して経理事務のプロではありません。「元銀行員だから財務・経理はなんでも分かる」と単純に考えるのではなく、その人の得意分野を正確に見極めることが大切です。

 さらに、企業が銀行に対し、銀行対応や財務を任せられる人材を求めるケースもあります。ですが、銀行員を雇用する場合、給与水準がどうしても高くなります。よって、転籍ではなく出向扱いにしてもらい、銀行側にその出向者の給与の全額、もしくは一部を負担してもらうよう交渉するのが得策です。

 

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