政治・経済

江崎グリコ誕生の経緯

 

 産学共同--。現代では常識だが、大正時代にそれがどの程度まで実践されていたかは不明だ。

 ただし、江崎グリコの創始者・江崎利一は、雑誌の論文を通じて産学共同の知識を有していた。だから自前で作り上げた牡蠣の煮汁エキスを九州大学医学部に持ち込み、分析を依頼する。

 結果は、グリコーゲン含有量が36〜43%にも及び、ヘモグロビンの媒介になる銅分まで含まれているというもの。九大教授からは、「国民保健に必要な栄養剤普及に役立つ」との回答を得た。

 以降、江崎は、家業を続けながらグリコーゲンの事業化に没頭。試作・改良・思索のすえに、「飴らしきもの」を作り上げ、新会社の立ち上げを決意する。

 江崎の年齢は41歳。ときは大正10年4月。場所は大阪西区の堀江で、弟に任せた葡萄酒販売店のある千代崎橋とは目と鼻の距離だった。

 千代崎橋付近は、昔から庶民の集まる土地柄で、松下幸之助が妻「むめの」と見合いをした場所でもある。松下創業の地・大開町にもほど近く、その点でも江崎と松下には縁がある。

 

グリコの名称と商品形状はどう決まったのか?

 

 ところで、グリコーゲンの商品化に目鼻を付けた江崎は、商品の名称・形状にもかなりのこだわりを示した。

 友人・知人・専門家の多くが推す「グリコ・キャラメル」の名称を退け、「グリコ」というシンプルなネーミングで商品の独創性をより強く打ち出す道を選んだ。また、グリコの語呂が広告の原則にもかなうとの判断もあったようだ。

 形状もインパクトの強い「ハート型」に決定。この形状・名称ともに、当時の菓子製造の権威から否定されたが、それでも江崎は自らの主張を貫いた。

 次に江崎が決めたのは、グリコのパッケージ・デザインだ。その調査で菓子店を巡る中、江崎は、当時既にキャラメル大手に成長していた森永の黄色い箱がやたらと目立つことに気付く。

 そこで、視覚効果の実験を行い、結果、グリコの入れ物を赤箱に決定。資本金6万円の江崎グリコを創設し、同時に「一粒三百メートル」のランナーをメイン・キャラクターに採用した。

 こうして商品作りを終えた江崎は、販売戦略の策定に乗り出した。決めた戦略は、一流商店へのアタック。無謀にも、いきなり「三越」に照準を合わせたのである。

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