マネジメント

自信を持って能力を発揮させる〝適材適所〟

 これまで私は、たくさんの経営者の方々にお会いしてきましたが、印象として感じるのは、いわゆる「体育会系」タイプの方が圧倒的に多いということ。これは、大きな目標を持ち、その目標を達成するために限界までチャレンジすることを厭わない思考こそが、会社経営には必要だということなのかもしれません。

 そういう思考を私は独自に「限界欲求」と名づけているのですが、この欲求を誰もが持っているわけではないという事実を、典型的な経営者タイプの方にはぜひ知っていただきたいと思います。

 例えば、そもそも「限界欲求」が低い人というのは、売り上げ目標の達成といったことに、大きなモチベーションを持つことができません。「限界欲求」の高い人から見ると信じられないことかもしれませんが、そういう温度差は実際に存在します。

 子どもの世界でも、外で鬼ごっこをするのが大好きな子どももいれば、部屋の中で折り紙を折ったり、パズルをしたりすることに夢中になる子どももいます。その違いこそが、「欲求の種類」。そして、それぞれの欲求の種類にあった役割を与えてやると、自信たっぷりに、その役割を全うするようになります。

 大人の場合も「限界欲求」が低いからといって、「仕事に対してやる気がない」などと決めつけるのは早計です。温度が低いのは、あくまでも「限界欲求」に対してであって、何かを調査したり、何かを作り上げたりという別の欲求に対しては高いパフォーマンスを発揮する可能性は大いにあります。それぞれの欲求の種類を見極めた上で人材を配置すれば、つまり〝適材適所〟によってそれぞれが大いにやる気を持って職務を全うしてくれるはずです。

「人を育てる」とは「興味や関心を育てること」

 ただ、私は、誰もが得意なことだけをやればいい、という考え方にはあまり賛成できません。子どもの場合も「得意なこと、好きなことを伸ばすことが大事」という考え方にももちろん一理あるとは思うのですが、「別の欲求への興味や関心を育てること」こそが、人を育てるということではないかと思っています。

 自分の好きなことだけを追求していると、他人の欲求に無関心になりがちです。例えば、サッカーが好きな子がサッカーだけをやっていたら、折り紙が大好きな子どもと交わらなくなってしまいます。

 会社においても、それぞれが得意なことだけをやっていては、部署間のコミュニケーションが表面的なものになってしまう可能性があります。円滑なコミュニケーションのためには、まず、追求する欲求の質は人それぞれであることを学ぶことです。実際、サッカーが好きな子にも折り紙にチャレンジする機会を与えると、折り紙が好きな子の気持ちを理解するようになり、明らかに会話の質が変わります。

 人材育成という意味でも、主軸の欲求を理解したうえで、不得意なことにもチャレンジする機会を与えることはとても意味があります。若い20代の社員などは特に、自分には向かないと思っていたことでも、その環境が与えられたことで視野が広がり、新しい欲求が生まれる可能性は十分にあります。ひとつのことしかできない社員よりも、たくさんの選択肢を持った社員を育てるほうが、会社の可能性も広がっていくと思います。

 もちろん、だからといって、得意なことの対極にあることをいきなりやらせる、というのはリスクが高過ぎますから、例えば、営業の現場でバリバリやっていた人をいきなり経理にするなどという極端な配置転換は避けたほうがよいでしょう。

 例えばPRの仕事からマーケティングの仕事といった、得意分野との共通点がある仕事から段階的にシフトしていくことが、スムーズなジョブローテーションのコツだと言えます。

 冒頭で「経営者の方は〝限界欲求〟が高い人がほとんど」というお話しをしましたが、あなたがまさにそのタイプだという自覚をお持ちなら、別の欲求を理解する機会を積極的に持つことをお勧めします。

 コツコツと何かを作り上げる〝制作欲求〟や何かをとことん調べつくす〝解明欲求〟(いずれも私の命名です)などを体験してみてはいかがでしょうか。新しい趣味としてチャレンジするのも素晴らしいですね。そこにどんな喜びがあるかを自らの体験を通して知ることで、あなたのコミュニケーションの幅はさらに広がり、経営者としてのバランス感覚も大いに磨かれていくと思います。

会社の幅を広げるには「選択幅の広い社員」の育成を

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年1月号
[特集]
平成の事件簿

  • ・[イトマン事件]闇勢力に銀行が食い荒らされた戦後最大の経済事件
  • ・[ダイエー、産業再生機構入り]一代で栄枯盛衰を体現した日本の流通王・中内 功の信念
  • ・[ライブドアショック]一大社会現象を起こしたホリエモンの功罪
  • ・[日本航空経営破綻]親方日の丸航空会社の破綻と再生の物語

[Special Interview]

 高橋和夫(東京急行電鉄社長)

 「100周年に向けて、オンリーワン企業の強みを磨き続ける」

[NEWS REPORT]

◆かつてのライバル対決 明暗分けたパナとソニー

◆経営陣に強い危機感 富士通が異例の構造改革断行

◆売上高1兆円が見えた ミネベアミツミがユーシンを統合

◆前門の貿易戦争、後門の技術革新 好決算でも喜べない自動車各社

[特集2]経営に生かすAI

 「人工知能は『お弟子さん』
日常生活が作品になるということ」
落合陽一(筑波大学准教授)

ページ上部へ戻る