文化・ライフ

 ゴルバチョフ元ソ連大統領やジョージ・ブッシュ元米大統領、サッチャー元英首相など、世界有数の要人、著名人を描いて来られた肖像画家の小野日佐子さん。世界のリーダーたちに共通する魅力はどのようなものなのか、そして、彼らとかかわる中で気付いたアーティストの特権についてお話いただきました。

肖像画家 小野日佐子氏が今までで印象に残ったモデル「鉄の女」

小野さんが描いたマーガレット・サッチャー元英首相

小野さんが描いたマーガレット・サッチャー元英首相(1995年)

佐藤 誰もが知る著名人を描いて来られた小野さんですが、今までで印象に残ったモデルの方はいらっしゃいますか。

小野 それぞれがとても個性的で、思い出深いのですが、お会いする前と後でイメージに差があったのはサッチャーさんでしょうか。サッチャーさんは男勝りで他人に厳しい方と言われていましたから、お会いするまではとても緊張しました。

佐藤 鉄の女と呼ばれていましたからね。

小野 はい。でも、お会いするととても雰囲気が柔らかく、気遣いのある、優しい方でした。

佐藤 サッチャーさんとはどのようなお話をされたのですか。

小野 私が緊張していることに気付いてくださったようで、ファッションが素敵ね、きれいな絵描きさんね、などと言ってくださいました。仕上げた作品は女性らしく表現し、喜んでいただけたようです。

 ゴルバチョフさんは1995年、96年と2年連続でお会いし、優しくしていただきました。ライサ夫人とは「夫の出張に同行する機会が多いのですが、スーツケースに入れると服がすぐにしわになるの」と相談を受けたことがあります。イッセイミヤケの服はしわになりにくく、お風呂で洗っても翌日着られますよとお話ししました(笑)。

肖像画家 小野日佐子氏が気づいた特権とは

小野日佐子

小野日佐子(おの・ひさこ)
福岡県生まれ。肖像画家として各国の大統領や俳優ら手掛けた作品は、数百点にのぼる。1997年NY国連本部ギャラリーにて25人の環境に貢献した女性達の肖像画展を開催。2003年環境経営学会理事・事務局次長就任、09年世界芸術家連合より世界著名肖像芸術家賞受賞、中国国連文化総署委員・日本国執行委員長就任。11年より京都造形芸術大学キャラクターデザイン学科長・教授。

佐藤 とても気さくな方なのですね。世界のリーダーとして活躍した彼らの共通点のようなものはありましたか。

小野 今のエピソードにもありますが、皆さん優しく、何事にも動じない余裕がありました。重要な決断を何度も下してきただけあり、瞬発力を備え、自分の意見をしっかりと持っていらっしゃる方ばかりでした。それに、人の話を聞き逃しません。ささいなことでも後々まで覚えていらっしゃるので、しまったと思うこともあります。

佐藤 貴重な体験でしたね。

小野 はい。私はアーティストですから、どなたでも心のドアを開けてフレンドリーに接してくれていると感じています。

佐藤 警戒されないということは特権です。

小野 それが特権であるということに、肖像画家になってしばらくして気が付きました。だから、生きている間はたくさんの方を描きたいと思っています。

佐藤 同時に、大学の学科長として後進の育成指導にも力を入れていらっしゃいますね。

小野 私は彼らをサポートするような気持ちでいます。多くの学生が、自分に自信を持てず、すぐ自分には向いていないと言ってきます。だから好きなことに突き進み、自信を持てるように背中を押してあげたいと思っています。


対談を終えて対談を終えて

プロの肖像画家の小野さんに、僭越ながら似顔絵を描いてプレゼントしました。穴があったら入りたい気持ちでしたが、小野さんは「特徴をよくとらえていて、大好きな絵です」とありがたいお言葉を頂戴しました。さらに小野さんから私を描いてくださった絵をいただき、恐縮しきりでした。お互いに絵への思いを語り合い、幸せな時間を過ごすことができました。

[前編]
肖像画を描くには最初の5秒が肝心(前編)--小野日佐子氏(肖像画家、京都造形芸術大学芸術学部教授)

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