政治・経済

 安倍政権によって打ち出された成長戦略に対して失望が広がり、株価は下落し、メディアや有識者は批判を強めている。株価が暴落したのは、成長戦略を材料として利用しただけだが、メディアや有識者はどうも誤解しているようだ。

 彼らは2つの誤りを犯している。第一は、官僚が作った成長戦略では駄目だ、という批判であり、もう一つは、日本経済は成長戦略にかかっているという信念である。

 第一に、成長戦略は官僚しか作れないのである。成長戦略は、政権与党によって作られる。政権を握っているのだから、成長戦略は実行される。実行されるのであれば、実現可能なものでなければならない。実現可能なものであれば、政権を支えている企業や団体などの利害関係者は黙っていない。だから、彼らの意向を踏まえたものになる。政権あるいは首相の考えを反映し、利害関係者も承認する成長戦略を立案するのは、並大抵のことではない。数多くの制約条件の下で、首相の最適化問題を解かなくてはいけないのだ。それができるのは官僚しかいない。

 結果として出てくる成長戦略が退屈なのは、官僚のせいではない。官僚は優秀な頭脳で、難問を解いただけで、その難問を設定したのは、首相とそれを支える与党なのだ。権力を持っているのは内閣であり、それを支えるのは与党と与党を支える利害関係者なのだ。この構造を理解せずに、美しい成長戦略を描く、シンクタンクや学者は、阿呆というよりは世間知らずだ。彼らの作った成長戦略は絵に描いた餅だ。

 したがって、成長戦略では成長できない。するはずがない。既存の枠組みを強化する、効率化するだけで、経済にとってはプラスの可能性はある。部分的な改善で、中期的に多少生産性が上がるが、抜本的な変革が実現するはずがない。選挙で多数派として選ばれている以上、既存の企業構造を生かした政策以外ありえないからだ。

 既得権益打破を与党に期待するのは間違っている。世の中が既得権益と新興勢力に分かれるとすると、多数派は広い意味での既得権益者なのだ。だから、既得権益者である、現在成功している伝統的な大企業構造を破壊して、革新的な成長を期待するのであれば、それは政権、政策の外から独自に成長する企業に期待するしかないのであり、実際、これまでもそうやって実現してきたのだ。

 だから、成長戦略に失望することはない。成長戦略では成長できないが、それでも経済は成長できるのである。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

【特集】2019年注目企業30

 2018年の日本経済は、世界のマーケットを席巻してきた中国経済の成長鈍化が鮮明になり、併せて米・中の経済摩擦、英国のEU離脱問題などの対外的な課題が重なって大きな閉そく感が漂う年だった。 しかしながら元気な中堅・中小企業はネガティブな要因をものともせず独自の経営手法で活路を開いている。 原点回帰で、顧客第一…

「超サポ愉快カンパニー」としてワクワクするビジネスサイクルを回す―アシスト

ITと建設機械、グリーンエネルギーの3本柱で地球環境問題解決に貢献する―Abalance

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年4月号
[特集]
日本の「食」最前線

  • ・総論 日本の「食」から世界の「食」へ 成長産業となった農水・食品産業
  • ・「食」の輸出1兆円を支えるジェトロの役割
  • ・全国で進むブランド化「食」から始まる地方創生
  • ・上海で見た日本の「食」の未来
  • ・海外進出した外食チェーン「成功」と「失敗」の分かれ目
  • ・日本人が知らない中国の「日本食ブーム」の真実
  • ・消費税引き上げで始まる「外食VS中食」最終戦争

[Special Interview]

 星野晃司(小田急電鉄社長)

 「未来を見据えた挑戦で日本一暮らしやすい沿線をつくる」

[NEWS REPORT]

◆中国リスクが顕在化 電機業界に再び漂い始めた暗雲

◆持続可能な水産業へ 魚はいつまで食べられるのか

◆CES 2019現地レポート 家電からテクノロジーへの主役交代が鮮明に

◆相次ぐトラブルで業績悪化 SUBARUの見えない明日

[総力特集]

 2019年注目企業30

ページ上部へ戻る