政治・経済

 ガスの全面自由化をめぐるガス業界と経済産業省の対立が深まっている。東京ガス、大阪ガス、東邦ガスの大手3社からガス導管部門を切り離そうとする経産省に対し、3社側が猛反発。場外論戦もヒートアップしている。

電気がやるからガスも?大義なき自由化論議

 事の発端は電力システム改革だった。電力は2016年の完全自由化に続き、18年から20年の間に発送電分離を行う。電力会社から送配電部門を法的分離し、送配電網を中立化することで、新規参入者と既存の電力会社の競争条件を公平にするのが狙いだ。この後を追って始まったのがガスシステム改革である。

 同じエネルギー業界で規制業種同士。地域独占が認められ、今や諸悪の根源とされる総括原価方式を採用しているのも同じだ。電力で地域独占も総括原価も廃止するなら、ガスも同様にすべしとの理論で、昨年秋にガス改革の議論が始まった。今も学識者からは「何のためにガスを自由化するのか。電気もやるからガスもやるでは大義がない」という声が漏れる。

 それでもガス業界は「もう世の中の流れだから仕方がない」と諦めムード。そもそも自由化される家庭用の需要は頭打ち。既に自由化されている工場や業務施設など大口の需要を獲得しない限り、成長は難しい。地方は空洞化などで、その大口需要ですら縮小傾向。「地方の都市ガスの多くは『完全自由化されても、どうせ新規参入者なんていない』と思っている」(ある経営コンサルティング会社)と打ち明けるように危機感に乏しい。

 さらに、既に自由化されている石油業界がガス自由化を声高に主張。工場を中心にガス業界にどんどん顧客を奪われており、その恨みを晴らそうというわけだ。電力業界も「電力自由化でガス会社が参入してくるのに、われわれがガス市場に入れないのは不公平だ」と、ガス改革を後押ししている。

 こうしたこともあり、今年春頃には「ガスの完全自由化も電力と同時スタートになるのではないか」と囁かれていた。ところが、季節が夏へ移り行くと同時に雲行きが怪しくなる。まず、LNG(液化天然ガス)受入基地の開放問題で業界と経産省のさや当てが始まる。経産省は主にガス・電力業界が持つLNGタンクなどの設備を新規参入者など第三者がもっと自由に利用できるよう、開放を義務付けようとした。ガス業界は「基地は今でも十分開放されている。相対交渉によっていつでも応じるが、これまで(第三者から)使いたいという要請は一度もない」と強く反発している。

 また、保安のあり方をめぐっても一悶着あった。ガス業界は、危険物であるガスの保安責任を、自由化後は新規事業者を含む小売り事業者が担うべきだと主張。「もし新規事業者がわれわれに保安を頼みにきたら、それは請け負ってあげてもよい」という立場を取った。これに対し、「ガス業界は保安を盾に新規事業者の参入を阻害している」との批判を恐れる経産省は、引き続きガス会社に担わせようとした。

 この対決はガス改革の議論とは別に、保安を専門に取り扱う審議会にも飛び火。保安をガス業界に担わせることありきで議論を前に進めようとする経産省に対し、ガス業界が「事実誤認に基づく取りまとめ案を出している」と反発。議論の中で、思わず「自由化で保安意識の低い事業者が入ってしまう可能性がある」と口を滑らせた役人に、消費者団体などから「自由化が本当に必要なのか」といった、ちゃぶ台返しの発言まで飛び出すドタバタぶりだった。

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