政治・経済

 国土交通省は、両親や祖父母から資金をもらって住宅を買うなどした場合に掛かる贈与税について、非課税となる措置を3年間延長するとともに、非課税枠を現行の最大1千万円から最大3千万円まで引き上げることを求めている。現行の措置が今年末に期限切れとなるためだ。住宅市場では4月の消費税率8%への引き上げに伴う駆け込み需要の反動減が長引いているが、住宅を初めて買う若い世代の負担を軽くし、市場活性化につなげる狙いがある。

 年末に向け、政府・与党の調整で詳細を決める。焦点となる具体的な非課税枠について、国交省は複数のパターンを想定しているが、省エネ性や耐震性が高い住宅と、それ以外の一般住宅の両方で、これまでと同じく非課税枠が段階的に縮小する〝階段方式〟が有力のようだ。

 「アベノミクス」効果で景気回復が続く中でも、住宅を初めて買う30歳代の平均年収や平均貯蓄は伸びに勢いを欠いている。一方、不動産市場の活況に地価上昇や人手不足、資材価格高騰などが重なり、住宅価格はマンションを中心に上昇傾向にある。このため、若い世代が住宅を買う環境は依然として厳しいというのが国交省の認識だ。

 国交省は贈与税の非課税措置の延長・拡充により、高齢世代が持つ金融資産が若い世代に移転すれば、住宅購入が促され、回復がもたつく住宅市場の刺激につながると期待。実際、60歳以上の高齢者世帯の約4分の1は3千万円以上、約3分の1は2500万円以上の貯蓄残高を持つとの調査もある。

 「消費税率10%」を見据えた布石という意味合いもある。予定通り来年10月に税率が10%に引き上げられた場合、住宅着工に反動減が生じる恐れは大きい。民間機関の着工予測では、2015年度は13年度に比べて13%落ち込むとの見方もある。住宅投資は内需の柱の一角をなすだけに、贈与税の非課税措置の延長・拡充は「経済対策としての側面も強い」(国交省幹部)というわけだ。

 贈与税の非課税措置は09年に始まり、10年と12年に延長された。住宅業界は延長・拡充への動きを歓迎するが、「期限付きでなく、仕組みとしてできる限り続けていってもらいたい」(大手住宅メーカー役員)と永続化を求める声もある。

 また、財務省には制度の大幅拡充には慎重な意見もあるようで、今後のせめぎ合いと着地の行方に注目が集まっている。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る