政治・経済

 2009年の民主党による政権交代直前に結党したみんなの党。2大看板のひとり、江田憲司氏が党を去り、続いて渡辺喜美氏が失脚した後、党代表に就任した浅尾慶一郎氏。渦中の浅尾氏に徳川宗家19代の政治評論家、德川家広氏が鋭くせまる。

 分裂騒ぎが続く中、それでもメッセージ性の明確さと議員たちの若さから、依然として野党の注目株であり続ける「みんなの党」。その代表に今年4月に就任したばかりの浅尾慶一郎氏は、東大法学部を卒業後、日本興業銀行から政界入りという経歴からも想像がつくように、政界有数の政策通だ。アベノミクスの失速が見えてきた現在、日本経済の再浮上への道について、率直に聞いてみた。

 

 浅尾慶一郎みんなの党代表が考える地方経済活性化の方法とは

 

浅尾慶一郎

浅尾慶一郎(あさお・けいいちろう)
1964年生まれ。東京都出身。東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。米スタンフォード大学経営大学院卒業(興銀より留学、MBAを取得)。新進党を経て、民主党公認で98年参議院初当選。その後2009年みんなの党結党に参加。同年衆議院に鞍替え当選し、党政調会長、選対委員長、幹事長を経て14年みんなの党代表に就任。衆議院2期(参議院2期)。

德川 今年の第2四半期のGDPの落ち込みは、第1四半期の消費増税前の駆け込み消費による増分を打ち消して余りあるマイナス7・1%という、惨憺たる結果となりました。そして第3四半期、つまり7〜9月の景気も、回復の兆しを見せません。

浅尾 アベノミクスは金融緩和、財政出動そして成長戦略から成る「三本の矢」による経済復調を目指した戦略です。ところが実態的に言うと、金融緩和しか機能していません。

 財政出動に関しては、われわれは減税中心でやるべきだと言っておりますが、安倍政権は公共事業でやっています。ところが去年の補正予算と今年の通常予算で22兆円積み上がっている公共事業の実際の支出は、今年の6月までで1兆5246億円しか出ておらず、6・9%しかお金が回っていないという計算です。

 正確に言うと公共事業の契約率は39・8%で、前年同期よりは上がっていますが、支出済みの割合は相当に少ない。今から来年のために積み上げても、実態的に効いてくることはなかなかないと思います。金融緩和の結果、中小も含めてゼネコンの金回りがよくなっているので、前受金として公共事業を受託したものを受け取らなくなっている。前受金で受け取ると、東日本保証協会や西日本保証協会にお金を払わなくてはならなくなるからです。

 われわれは金融緩和には賛成です。今起きていることは、金融緩和で円の供給が増えると基本的には円安になり、ドルで表示される日本企業の株価が下がります。世界のファンドマネジャーが、例えば総資産のうちの1割を日本株に割り振るとしましょう。その場合、ドル建ての日本株の値段が下がると、日本株の割り振り分が小さくなるわけですから、当初の1割に戻すために、ファンドマネジャーは買い増しをします。つまり円安になると株価が上がるというサイクルに入っています。

 これ自体は悪いことではありませんが、株価が上がって資産効果が出るとしても、それは東京圏中心になります。一方、消費税増税は当然のことながら全国民に対して消費支出の3%分効いてきます。ところが、それに合わせて給料が3%上がったわけではありません。加えて、ガソリン価格が円安などの理由で上がっています。車が主たる交通手段である地方部は、消費税増税に加えてガソリン価格高ということで、より消費の落ち込みが激しくなってくるでしょう。

 加えて、生産活動のほうは、製造業の大手は海外で作って海外で売るというビジネスモデルになっています。そうした企業の利益は、円安になると、その分大きく出ます。大手がその調子だから、円安になっても日本全体としての輸出は増えにくくなっています。

 実際、国内での生産は消費税増税後もそれほど伸びていません。それでも株価が落ちないのは、株式を上場している会社のある部分は、海外製造・海外売り上げで利益が出るところが多いからです。

 結論を言いますと、株価と国内の実体経済は必ずしもリンクしていないし、特に地方に行けば行くほどリンクしなくなるというのが率直な感想です。

徳川家広

徳川家広・政治経済評論家

德川 政府は現在「次は地方」と言い出しているんですが、浅尾さんは地方経済の活性化は、どう進めるべきだと考えますか。

浅尾 地方に力を入れる時に公共事業を積み増しても、先ほど申し上げたようにお金が実際に回るには、相当に時間がかかります。だから、公共事業による地方経済振興ではなく、中小企業も含めた地方のサービス業の統合に力を入れていくべきであろうと。

 日本の経済のうちの7、8割は多分ローカル経済圏なので、ここの寡占化を進めていくということが結果として生産性を上げていくことになるわけです。寡占化を進めて企業の統廃合を進めれば、職場がなくなると思われるかもしれませんが、人手不足の現段階においては、統廃合は効率の良い企業が生き残る結果をもたらします。統廃合によって間接部門の効率性を高めていくことができるので、地方でそこそこお金が回るような仕組みを作るためには、第3次産業中心の統廃合が必要だというのが私の考えです。

德川 第3次産業と一口に言っても、極めて広いですが、具体的には。

浅尾 雇用吸収力が高いのは、医療・介護。それから交通インフラとか、そういうところでしょうね。もちろん、小売りもあります。でも、特に今後は医療分野です。病院は法人格が医療法人であるなど、統合がなかなか難しいところがありますから、これを少しやりやすくしていく必要性もあると思います。

 

分裂後の「みんなの党」のポジションとは

 

アベノミクスは結局、金融緩和しか効いていない。

アベノミクスは結局、金融緩和しか効いていない。

德川 分裂後の「みんなの党」のポジションは、政策で見て野党的ですか、与党的ですか。

浅尾 政党というものは、政策実現のために有志が集まって作るものです。だから多数を持っていない段階で政策を実現するとしたら、多数を持っているところに、われわれの政策を投げ掛けていかなければならない。

 私が代表となってから、安倍総理にも菅官房長官にも甘利経済財政担当大臣にも提案をしてまいりました。直近では、日本郵政が来年度の上場を予定しております。12兆円ある資本のうち、郵貯銀行の資本が11兆円ですから、大部分を占めています。日本郵政あるいは郵貯の来年度の利益目標は年間で2200億円ですが、ほとんど郵貯銀行でしか出ません。メガバンクのPER(株価収益率)が10くらいでしょうから、日本郵政の12兆円の資本で利益が2200億円しかないのでは、実質的には郵貯銀行そのものの日本郵政の株式をこのまま上場しても、時価総額が2兆2千億円くらいしかつかないと思われます。つまり資本12兆円でそのまま上場すると、過剰資本の会社となるので、少なくとも4兆円くらいは上場前に減資をして、特別配当として国庫に納付をさせ、東日本大震災の復興資金に充てようと提案しています。

 そういう提案を呑んでくれればそれでいいし、呑まなければ「何で呑まないんだ」と追及していくということなんです。何でも反対という野党ではなくて、提案をする野党という路線でやっていきたいと思います。

德川 1993年以後、小さい政党の党首が総理になったり、政権のキーポジションに来るということが度々起きています。何かの具合で自民党が割れて連立を組むことになったら、どのポストを要求しますか。

浅尾 (笑)。みんなの党が比較的に強いのが経済財政政策なので、経済財政政策のポストか、われわれが国民に期待されているのは行革ということなので、行革を担当するポストか。それとも、全部を仕切る財務のポストではないかと思います。

德川 行革ですが、具体的には、どこが問題でしょうか。

浅尾 責任と給与が連動していないということが、公務員制度の中の一番の問題だと思います。事務次官まで上り詰めた人と平で退職した人の退職時の給与・年収は、2倍も違わないのではないか。それほど責任がないポジションでも、定期昇給がずっと続くのが公務員の制度です。

 その背景には性善説というものがあります。「みんな一生懸命やっているから差をつける必要性はないということなんだ」という理屈です。その結果、霞が関では働いていない人がもらい過ぎて、公務員全体の給与が高くなっている。そこを変えることが大事だろうと考えています。

もし自民と連立を組むなら行革か財務のポストを取ります。

もし自民と連立を組むなら行革か財務のポストを取ります。

德川 公務員はインセンティブの構造が違って、頑張って生産性が上がるものではなく、すねて手を抜いたときのダメージがものすごく大きいものです。穏便にすませたいから定期昇給になっていくのでは。

浅尾 国はともかく、地方の場合は問題だと思います。多くの県庁の職員は、その県内の民間企業との比較でも、収入が一番良いわけです。そうなると、一番良い人材を県もしくは市が採っていってしまう。それで果たして、その地域全体にとって一番効率の良い人材の配置かと言えば、必ずしもそうじゃない。

 自治体には基準財政需要というものをベースに地方交付税が国から支給されますが、基準財政需要というのは、例えばある市で職員が何人必要だということを決めた上で、その職員1人当たりの単価は基本的に国家公務員と連動するということで算出されます。その結果、例えば県庁の職員は、その県の民間企業の平均支給月額の倍くらいもらうことになる。

 県民がそれでぜひやってくれということならば、文句を言う筋合いではありません。ですが、国と連結している地方公共団体が、国からその分のお金が来るからといって一番良い人材を自動的に採っていくということは、地域の発展のためにも必ずしも良くないと私は思います。

 

浅尾慶一郎が今の日本に一番大事だと考えるのは何か

 

浅尾慶一郎

德川 もし総理大臣になったら、何を真っ先にしますか。別の言い方をしますと、浅尾さんは今の日本で何がいちばん必要だと考えておいでですか。

浅尾 今の日本が一番必要とするのは夢、希望というものを実現していく意志だと思います。だから、もし私が総理大臣になったら、日本版のアポロ計画をやろうと思う。1961年に、まだ地球の周回軌道を衛星が回ることができない時に、時のケネディ大統領は10年以内に人を月に送るという、大きな夢のある目標を掲げて、現実に69年に、その時ケネディ大統領は既に暗殺されていましたが、宇宙飛行士が月面を歩いています。

 そうは言っても、本家のアポロ計画と同じことをやっても仕方がない。人を月に送るのに、アメリカは今のお金に換算して10年で約10兆円という規模の投資をしています。今の日本でそれくらいのお金をかけてやる、『新・アポロ計画』は何かというと、植物が行っている光合成を人工的に10年以内にできるようにすることが考えられます。これはエネルギー革命であり、環境問題の大転換にもなります。

 実は日本には、光合成研究の足場みたいなところがいくつかできています。例えばパナソニックの研究所では、太陽光だけを使って二酸化炭素と水からギ酸を作るところまで行っています。植物が光合成をするとブドウ糖ができますが、これは炭素が6個結合したものです。それに対してギ酸はHCOOH、つまり炭素(C)が1個しかない比較的に単純な化合物です。少なくとも二酸化炭素の固定化率でいうと、植物よりも高度なものに成功しています。

 10年以内にブドウ糖までは行かないにしても、ギ酸と同じ炭素1個のメタノールまでは行けるかもしれません。これはアルコールですから、燃料にしたり発電したりできますし、炭素2個のエタノールまでできると、もっと効率が良くなります。これが実現すると、エネルギー革命になります。

 太陽光発電の蓄電池にはレアアースが使われていますが、植物が行っている光合成は、そこら中にある二酸化炭素と水を使うだけです。だから、これができれば、日本が産油国になるような大転換ですから、本当に国民に夢を与えられるのではないかと思います。

 

周辺国との協調で中国とのバランスを取る

 

徳川家広・政治経済評論家

徳川家広・政治経済評論家

德川 なるほど。では10年のスパンではなく、いきなり明日「君、総理大臣を頼むよ」と言われたらどうしますか。

浅尾 短期のところで言えば、それは国ですから現実に動いている外交、安全保障の話もあるでしょうし、経済財政の話もあるでしょう。外交安全保障ということで言えば、わが国の場合は、ヨーロッパのどこかの国が周辺国との間に築いているような関係を、周辺国と持つことができません。そのような認識のもとで、周辺国との関係、さらにその外側にある国との外交関係を再構築するということが必要だと思います。

德川 周辺国のお話、もう少し具体的にお願いします。

浅尾 もちろん、中国や韓国との関係のことです。まず中国ですが、日中関係は、例えばドイツとフランスの関係とは違います。ヨーロッパを全部足しても人口は3億数千万人です。中国は単体で13億人いて、しかも言語は1つしかない建て前になっています。一方、ヨーロッパの3億数千万人は、さまざまな言語を話している。大陸のヨーロッパの人口が3倍、あるいは4倍になって、単一の言語を話すようになったら、日本人が見る中国というのがどういうものかということが、イギリス人にも分かるようになると思います。

 中国は、歴史的には匈奴やモンゴルなど、内陸部から攻めて来る騎馬民族から受ける脅威が主でした。ところが、今日の彼らにとって、いちばん豊かな部分がどこかというと沿岸部です。そのいちばん豊かなところがどこから脅威を受けるかというと、彼らにとっては海の向こうからというわけで、中国は第一列島線、第二列島線というものを設定して、海洋に進出してきている。でも国際法的には航行の自由というものがあって、日本もアメリカもこれには非常な関心を持っています。ですから国際的な慣習ということについては中国にもよく理解をしてもらう必要性があると思います。

 韓国については、歴史的に中国、あるいは満洲から侵略される。それから中国文化に飲み込まれる、あるいは属国にされるということがあり、さらに過去2回くらい日本からも侵略されています。そうした彼らのメンタリティーからすると、日本に脅威を感じている可能性はあるということだろうと思います。歴史の事実については、双方の歴史家に任せるべきだと思います。その上で未来志向の関係を築いていくことが必要です。

 では、日韓がそういう未来志向の関係を築くのに何が必要か。中国の人口が13億人ということを言いましたが、幸いなことに、ASEANの人口を全部足すと5億人になり、日韓を加える形で1つの経済圏を作ると人口が7億人で、しかもGDPでは中国よりもはるかに大きくなります。そういうところも含めた対外的な環境を充実していくことで、近隣諸国との関係もよくなるだろうと。

 

スタンフォードで背中を押され政治家になった浅尾慶一郎

 

対談の様子德川 政治家としての姿勢についてお聞きします。東大から興銀に入られて、政治家を志した理由は。

浅尾 もともと政治には関心を持っていましたが、まず、シリコンバレーの真ん中にあるスタンフォード大学のビジネススクールに留学しました。ここはいろいろな企業を興す起業家が多いところです。そこで同級生たちと話をしていて、「会社をつくるのも面白いけれど、国が変えられたらもっと面白いだろう」と言ったら、「それならやってみればいいじゃないか」と彼らが気軽に言うわけです。さらに「やって駄目でも仕事はあるだろう」ということを言っていまして。

 そうは言っても大変だったんですが、日本に帰って来たら新進党が候補者を公募するというので、その試験を受けたところ、当時は会社を辞めて政治家になる人はいなかったので「君、ぜひやってくれ」と言われました。そう言われて逆にちょっと悩んだんですが、最後はやってダメでも仕事があるだろうと思って、興銀を辞めました。

德川 スタンフォードで敷居が下がった感じですね。その後は新進党から民主党に合流して、その民主党を割って出ました。民主党を離れたのは、なぜでしょう。

浅尾 私は民主党の参議院議員だったんですが、もともと地元からも衆議院のほうに変わってくれという声もあって、民主党から2人当選させられたら衆議院に変わるという話になりました。ですが、民主党が勝ち過ぎて過半数を取ったものですから、「1議席でも大事だ」と考える小沢さんが、鞍替えを許してくれません。ところが地元の人たちと既にそういう話をしていたので、「政治家というのは物を作っているわけではないから、せめて一度自分で言ったことは守っていかなければならない」と考えて、民主党を辞めてみんなの党の結党に参画したということです。別の言い方をすると、たまには卓袱台返しをしないと(笑)。

対談を終えて德川 渡辺喜美さんとは前から親しかったのですか。

浅尾 もちろん知ってはいましたが、そんなに行き来はありませんでした。明るくて決断力のある方でしたね。江田さんとも、あまり行き来はありませんでした。でも、党を作るに当たって、それなりに話をしたので、特に不安はありませんでした。

德川 「みんなの党」という党名は、私は軽過ぎて好きではないんですね。もう少し何とかならなかったのでしょうか。

浅尾 ひらがなの政党というのが、当時は日本になかった。韓国には「ウリ」があって、これは「わが党」です。ウリ党があるなら、みんなの党でもいいかな、という話ですね。ちなみにウリ党は政権を取っています。

德川 韓国からインスパイアされた初めての政党ですね。

浅尾 いえ。みんなの党そのものは、サザンオールスターズの「みんなのうた」からインスパイアされました(笑)。「みんなのうた」っていうのがあるねということで、みんなの党になって、そこで隣りの国を見たらウリ党があった。そういう話です。

德川 なるほど。湘南経由でソウル、という感じでしょうか(笑)。そうしてできたみんなの党は、割れて、江田さんが出て行ってしまいました。

浅尾 まあ、それは単なる党の中の権力闘争という話でしょう。

(文=德川家広 写真=安岡 嘉)

 

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