政治・経済

日銀に新人として入行した黒田総裁

 今年は4月1日が月曜日であることが素晴らしい、というベテランビジネスマンが多い。新入社員にとって、これほどメリハリの効いたスタートはないという。週末で学生から社会人へ気持ちも身体も切り替えるのだという。なるほど。

 私も、社会人になるのが楽しみであり、怖くもあった。

 大蔵省に入ったのだが、勉強は楽しかったし、好きだったから、どんな困難でも大丈夫である自信はあった。しかし社会で働くこと自体が怖かった。

 だからこそ、期待もあった。大蔵省に関しては、平均月間残業時間が200時間、しかし残業代は10時間しかつかないなど、とんでもない職場と聞いていて、覚悟はできていたから、入ってから肉体的には辛かったが、精神的には上司たちが刺激的で楽しかった。

 今の大学生のことは、少しは想像できるが、日本銀行に入行した新人、黒田東彦総裁については、どんな気持ちなのだろうか。

従順な部下は黒田総裁にとってやりづらい?

 新卒の新入社員は楽だ。一番下っ端だからだ。何も分からない。当然だ。しかし、新人でトップに入るのはどんな気持ちだろうか。そして、部下たちは自分が公然と批判することによって、トップで入ることが決まったことを知っている。

 しかし、部下たちはエリートだから、トップの言うことは何でもよく聞く。これは精神的には苦しいのではないか。むしろ、部下が反抗的であったほうがくみしやすい。

 素直で従順で、経験豊富な部下の上に素人のトップが立つのは厳しい。彼は、アジア開発銀行の経験があるが、あそこは、多国籍組織であり、もともとバラバラだから、かえってやりやすい。日銀のおとなしい従順なインテリの部下はしんどいのではないか。

 さらにしんどいのは、勝手に期待を膨らませている金融市場の投資家たちである。しかも、彼らは誤解して、黒田氏を自分たちの仲間、株価を上げ、市場を乱高下の渦に巻き込んで収益機会を増やしてくれる頼りになる助っ人だと思っている。俺は、お前らとは目的が違うんだ、手段が今はたまたま一緒なだけなんだ、と叫びたくなる日が来るのが怖くはないのだろうか。

 黒田氏は、日銀の優秀な職員たちと付き合い、市場の荒くれ者たちと付き合い、さらに、4月2日の衆議院予算委員会を見る限り、自分を日銀に押し込んで喜んでいる政治家たちとも、考えが全く異なる。彼らは金融市場を全く誤解していることを目の当たりにさせられた時、いかなる孤独感を覚えたのだろうか。

 黒田氏の道は孤独で険しい。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和銀行の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
この夏飲みたい日本の酒

  • ・総論 量から質へ“こだわり”が求められる時代へ
  • ・埼玉・秩父から世界一へ イチローズモルトの奇跡
  • ・家庭でも酒場でもレモンサワーが飲まれる理由
  • ・幕末からよみがえった都心の酒蔵 東京港酒造
  • ・本間哲朗(アプライアンス社社長)
  • ・伊豆で愉しむ野趣なワインと夏の富士
  • ・トップが薦めるこの夏のビール

[Special Interview]

 宮内義彦(オリックス シニア・チェアマン)

 「トップの器以上に会社は大きくならない」

[NEWS REPORT]

◆ヨーロッパに続け! 動き始めた日本の再エネ事業

◆東芝のPC事業を買収し8年ぶりに参入するシャープの勝算

◆日産―ルノー経営統合問題に苦慮するカルロス・ゴーン

◆大阪がエンタメで仕掛けるインバウンドと夜の経済

働きがいのある会社を総力取材

 人材育成企業20

 企業の成長戦略をクローズアップ

ページ上部へ戻る