マネジメント

 前回は、福地氏がアサヒビール社長時代に決断した発泡酒市場への参入、NHK会長時代に行った大相撲の生中継中止のエピソードなどから、迷った時は経営理念に基づいて判断を下すことの重要性を説いてもらった。続く後編では、アサヒビールで行った大規模なガバナンス改革、会社の歴史上初めての赤字決算といった経験を通じて、同氏が大事にしてきた考え方を語ってもらうとともに、若手経営者にエールを送ってもらった。

40人の取締役を10人に減らす

福地茂雄

福地茂雄(ふくち・しげお)
1934年生まれ。福岡県出身。長崎大学卒業後、57年朝日麦酒(現アサヒビール)入社。主に営業畑を歩んだ後、88年取締役、96年副社長を経て、99年社長就任。会長職を務めた後、2006年に相談役として経営の第一線から退くも、08年に第19代NHK会長として再び経営の最前線に身を投じる。東京芸術劇場館長や新国立劇場理事長も務めるなど、文化活動にも積極的に取り組んだ。

 「時を告げるより時計を作れ」という言葉があります。カリスマ経営者は自ら時を告げる役割を担いますが、時計を作っておけば、カリスマがいなくなっても時を告げ続けてくれるのです。会社にとっては、ガバナンスをしっかりさせることが時計を作ることに当たります。

 私がアサヒビールのガバナンス改革に取り組んだ時、世間では執行役員制度を導入する企業が増えつつありました。当時、アサヒビールには40人の取締役がいましたが、取締役会で十分な議論ができず、単なる報告会のような状況でした。

 そこで、実際に機能する取締役会にするために、瀬戸雄三会長(当時)と相談しながらガバナンスの改革を行っていきました。そこで出てきたのが、「機動性」「戦略性」「透明性」という3つのコンセプトです。

 まず機動性については、グループ全体が大きくなって議論が尽くせなくなった弊害をなくすために、執行役員制度を導入するとともに、40人の取締役を10人に減らしました。取締役から執行役員になっても報酬や待遇は変わりませんが、初めての試みだったため、役員の家族の方々は心配されたかもしれません。

 しかし、結果的には執行役員制度を導入したことによって意思決定がグンと早くなりました。さらに、それぞれの業務に関しては執行役員が議論し、各グループへの資源配分などについては取締役会が決めるという役割分担をしたことで、戦略性も高まりました。

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