政治・経済

 1925年に舟橋商会として創業したシヤチハタ。使うたびにインキを継ぎ足さなくても使える「万年スタンプ台」は画期的商品だった。その後、65年にはスタンプ台のいらないスタンプ「Xスタンパー」を発売し大ヒット、超ロングセラーとなった。

シヤチハタのイメージは国内ではスタンプメーカー、海外では筆記具メーカー

-- 海外へも積極的に展開しているようですね。

舟橋 売上比率でいうと、75%が国内、残り25%が海外です。また売上構成比を製品別でみると50%がスタンプ関係で、これはほとんどが国内です。当社は日本ではスタンプメーカーというイメージですが、海外に行くと実は筆記具メーカーのイメージになっています。スタンプ台のいらないスタンプ「Xスタンパー」のほかに、「アートライン」というマーカーやサインペンなどを約90カ国に輸出しています。

舟橋正剛

舟橋正剛(ふなはし・まさよし)
1965年生まれ。92年米リンチバーグ大学経営大学院修士課程修了。93年電通入社。97年シヤチハタ工業(現シヤチハタ入社)。99年取締役。その後、常務、副社長を経て2006年から現職。

-- 海外では日本のような、はんこのニーズは低いのでは。

舟橋 それぞれの国にはんこ事情というものがあって、それに応じてスタンパー事業を展開しています。住所印または「RECEIVED」などのスタンプは各国で高い需要がありますし、サインをスキャニングしてスタンプにする需要もあります。

 当社の海外展開は、68年に米ロサンゼルスに製造拠点となる現地法人を設立したのが始まりです。これを皮切りにマレーシア、インド、中国に現地法人を設立。日本では完全にスタンプメーカーですが、世界的には筆記具メーカーとして知られており、マーカーについてはマレーシア、豪州、ベルギーなどではトップブランドになっています。

-- スタンプ関連商品は、国内では成熟化しているのでは。

舟橋 大きく伸びるものではありませんが、実はかなり商品のリニューアルは繰り返しているのです。インクも染料系から顔料系に切り替わっていますし、ボディも黒一色からカラフルなものも増やし、サイズのバリエーションも豊富です。人気のキャラクターシリーズもありますし、最近では携帯電話などにストラップとして付けられるものなど、市場動向を見ながら商品開発は積極的に行っています。

 メーンのお客さまは、金融機関をはじめとする企業向けです。発売当初から、企業向けのプロ仕様だったので、それが一巡して徐々に家庭に普及していきました。つまりそもそもはBtoBの商品だったのです。

シヤチハタは創業90周年を控えて「あるべき会社の姿」を示します

-- 最近はBtoCにも力を入れている印象があります。

舟橋 実はリーマンショック以降の傾向なのですが、オフィスユースでは、会社がまとめて買うのではなく、個人が買うという傾向があるのです。使用する人が自分で買うので、カラーバリエーションや着せかえパーツのような工夫をしています。

 オフィスで使う場合、最も求められるものは機能性です。しかし、個人が選ぶ場合は見た目の楽しさなど、機能に加えて個性的なものも必要になってきます。また、家庭での利用も事情が違います。家庭では子どもが楽しんで使えるもの、親が子どもに買い与えたくなるようなものが選ばれます。ほかにはシルバー層に向けたもの、介護や看護の現場で使いやすいものなど、利用者のニーズに合わせた商品開発が重要になってきます。

「Xスタンパー」など

圧倒的なシェアを誇る「Xスタンパー」などの製品群

-- はんこという主力商品だけにこだわらないということでしょうか。

舟橋 もともと海外では筆記具メーカーとして認識されています。確かに長年培ってきたはんこですが、次の「これがあったら便利だね」というような商品を、ジャンルを問わず開発していきます。「Xスタンパー」も、「シヤチハタネーム」も、そういった考えで生まれたものです。

 また当社には、製品作りにおいて、素材作りから自分たちで開発する文化があります。例えばスタンプの印面で使うゴムも、いろいろな薬剤や塩を練り込んでインクがうまく流れるものを開発しました。インクにしても独自開発です。製造現場の技術力は高いので、その強みをさらに生かしたいと思います。

-- ペーパーレス化で、はんこの需要も減るのでは。

舟橋 ペーパーレス化は進むかもしれませんが、例えば会社の中で誰がいつ何を認証したのかということになってくると、究極的にはアナログでないとできません。いまだに多くの企業ではんこが使われているのはそういった事情があるのです。だからといって安心しているわけではなく、パソコン上で書類決裁ができる電子印鑑システムもあります。他のソフトを組み合わせてネットワーク上で文書の閲覧、共有化も可能になります。

-- 今後の展望をお聞かせください。

舟橋 来年90周年を迎えますが、100周年、さらに次の100年に向けて、当社がどういう企業であるべきかを常に社員全員で考えています。数値目標はありますが、大事なのは会社のあるべき姿だと思っています。

(文=本誌編集委員・清水克久 写真=佐藤元樹)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年3月号
[特集]
環境が経済を動かす

  • ・総論 災い転じて福となせるか 持続可能な社会の成長戦略
  • ・越智 仁(三菱ケミカルホールディングス社長)
  • ・100年後を考える 世界最大級の年金基金「GPIF」
  • ・金融業界はこう動く
  • ・脱炭素化の遅れがはらむ「座礁資産」の危険性
  • ・脱炭素化で移行する「地域循環共生圏」とはどういう社会なのか!?

[Special Interview]

 中田誠司(大和証券グループ本社社長)

 「SDGsを経営戦略の根幹に据えることで企業は成長する」

[NEWS REPORT]

◆稲盛哲学を学ぶ盛和塾解散を塾生たちはどう聞いたか

◆米中経済戦争の象徴となった「ファーウェイ」強さの秘密

◆EV時代にあえてガソリンエンジンにこだわるマツダのプライドと勝算

◆それは自由か幸福か——「信用スコア」で個人の信用が数値化された世界

[特集2]関西 飛躍への序章

 大阪万博開催で始まる関西経済の成長路線

ページ上部へ戻る