政治・経済

世界経済の流れが新興国から日米両国に戻ってきている

 2008~09年のリーマンショックで世界経済は同時不況に陥ったが、10年からは回復局面に入り同年の世界経済の成長率は5・1%、先進国地域の成長率も3・0%まで上昇した。しかし、11年に入るとギリシャ危機がヨーロッパ全体に波及し、成長率は再び下降局面に入っていく。同年の世界経済の成長率は3・8%、先進国地域のそれは1・6%。ちなみに日本経済は大震災・津波に見舞われ、11年は0・8%のマイナス成長になっている。

 12年に入るとそれまで好調だった新興国市場にも成長鈍化の波が及び、中国は前年の9・3%から7・8%へ、インドも前年の7・7%から4・0%まで成長率が落ち込んでいる。ヨーロッパ経済の危機も拡大し、12年のユーロ圏17カ国の成長率は0・6%と前年から2・0%も下がってしまった。中でも南ヨーロッパ諸国の状況は厳しく、イタリアはマイナス2・4%、スペインはマイナス1・4%まで下がってしまったのである。

 こうした中で順調に成長率を回復したのが米国と日本。12年、米国は2・2%、日本は2・0%の成長率を達成している。世界経済の流れがいわゆるBRICs諸国から米国や日本に戻ってきている気配なのだ。中国やインドだけではなくブラジルやロシアも減速しており、ブラジルは11年の2・7%から0・9%へ、ロシアも前年の4・3%から3・4%まで落ちてきている。

構造問題を抱えるユーロ圏と成長鈍化の新興国

 問題は13年もこの傾向が続いていく状況になっていることだ。IMFの13年4月の予測によれば、世界経済全体の成長率は3・3%と12年の3・2%とほぼ同レベル。ユーロ地域はマイナス0・3%と相変わらずマイナス成長が続くとの予測だ。

 実はユーロ圏は深刻な構造問題を抱えてしまっている。ユーロ圏の統合はほぼ半分程度、金融と為替の面では完成したが、財政の統合はできておらず、この状況はしばらく続くと思われる。この中途半端な統合状態はドイツには有利だが、南ヨーロッパ諸国には極めて不利である。ドイツはドイツマルクだと為替が大幅に切り上がるところをユーロだと切り上がらず、強い競争力を十分に享受できる。

 逆に、南ヨーロッパ諸国は為替の切り下げができず、切り下げによって競争力を強化することができない。この状況ではユーロ圏の格差は今まで以上に拡大し、南ヨーロッパの危機は当面押さえ込めても、構造的要因は残ってしまい、いつまた、再発するか分からないということになってしまう。

 ということで南ヨーロッパ諸国の停滞は続き、IMFも2013年はイタリアはマイナス1・5%、スペインはマイナス1・6%とマイナス成長が続くと予測している。新興市場国の回復も思わしいものではなく、中国が12年の7・8%から8・0%、インドが4・0%から13年には5・7%に回復すると予測されているが、11年までの高成長に比べるとかなり低いレベルにとどまっている。

 12年に順調に回復した日本と米国は13年も好調に推移し続けると予測されている。IMFの予測では、13年の米国と日本の成長率はそれぞれ1・9%、1・6%と前年の高成長をそこそこ維持するとされている。しかも、第1四半期から第2四半期の実績は両国とも極めて好調で、米国の経済成長率は3%を超える可能性が高まってきたし、日本も2%を上回る成長を達成する気配だ。

 資金も新興国市場から流出し、米国などへ流入している。ドルは好調な米国経済を反映して強含み、円ドル相場も4年半ぶりに1㌦=100円前後までの円安になってきている。確かに米国経済と日本経済は好調だが、ユーロ圏が構造的問題を抱えマイナス成長を続け、新興国の成長率が大きく下がっていく中で、両国がこのままそこそこ高い成長率を維持できるのかどうかは、かなり不透明だと言わざるを得ない。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る