
教室で新技術の実証実験イチゴを無農薬で栽培
学校の統廃合で使われなくなった廃校舎に企業が進出し、農業関連施設に転用する動きが出てきた。新潟県では教室を植物工場に改造し、夏季イチゴを栽培する珍しい実証実験が、茨城県では野菜の苗を量産する育苗事業が繰り広げられている。このところ増える一方の廃校舎をどう活用するか、各地でさまざまなアイデアが生まれているが、農業施設への転換は廃校利用の幅を広げる新たな試みである。
新潟県北部、人口3万人強の胎内市で2013年3月、黒川地区の3小学校が統廃合された。これに伴い廃校した鼓岡小学校に新規進出し、植物工場をつくったのがいちごカンパニー(小野貴史社長、資本金1千万円)だ。

雪国の廃校舎でイチゴ栽培に取り組む、いちごカンパニーの松田さん
同社は地場建設業の小野組(胎内市)と農業者が13年5月に共同出資して新設した農業ベンチャーで、天候や環境に作用されずに野菜を栽培する新技術、新システムを開発するのが事業目的だ。同社がまず着目したのが、需要がありながら国産が少ない夏季イチゴ。これを無農薬で効率良く栽培できる新技術の開発に挑戦することにした。
3千万円を投じてさっそく旧教室を改造、LED(発光ダイオード)と電算機管理による閉鎖型の植物工場をつくった。工場が完成した同年10月、新潟県ブランドのイチゴ「越後姫」の苗を搬入し、温度や湿度、光量、CO2などをどのように電算管理すれば効率良く栽培できるか、実証実験を積み重ねている。
工場内を拝見すると、50平方メートルの床に5列の栽培棚が並び、各列とも4段の栽培ベッドが設えてあった。天井と棚に取り付けたLEDから最適な光が供給できるように工夫を凝らし、合計1250株の越後姫が立派に結実している。ミツバチも飛び交い、通常のイチゴハウスのような栽培環境が保たれていた。
これまでの実験で得たイチゴの最高糖度は17度。松田祐樹副社長は「20度まで糖度を高めて市販し、消費者の反応を見たい。少なくとも周年栽培の技術はめどがついた」と話し、今後は栽培技術の改良と量産化施設の開発に研究の重点を移す構えだ。
栽培技術の改良はうどんこ病などを発生させずに無農薬で栽培できる方法に的を絞る。量産化施設では小規模な所から大規模な工場まで対応できる栽培ユニットの開発が重要になる。実現すれば、栽培ユニットの外販も可能になる。
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